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リアクション
遺跡内部。
「マスター、ポチ、ここはただの研究所ではない故……気をつけましょう」
フレンディス・ティラ(ふれんでぃす・てぃら)は遺跡に入るなり同伴しているベルク・ウェルナート(べるく・うぇるなーと)と忍野 ポチの助(おしの・ぽちのすけ)に注意を促した。
「あぁ、魔法中毒者だと言うからな。まぁ、研究者共の気持ちは解らなくもねぇが……」
ベルクはうなずいた。魔法中毒者のすみかだったためか異様な空気を感じる。住人は死しているはずなのに。
「もちろんなのですよ」
獣人化しビグの助の背でノートパソコン−POCHI−を弄っていた。『根回し』でエリザベートに頼んで『ユビキタス』で手記の分析具合を覗けるようにして貰ったのだ。それにより随時入ってくる結果を確認し、整理している最中だ。『コンピューター』を有するため作業はとても迅速であった。
「確かこれに似た事件が二つの年代で起きたんだよな。そして、俺達が入手した二冊の手記と同年代……旅団が魔術師と出会っている可能性もある。そして、ここの住人にも」
ベルクは旅団と魔術師の関連性を疑っていた。何か関連があるのか、無かったとしても対面した事があるのではないかと。
とりあえず、本日はフレンディスが『トレジャーセンス』で手掛かり探しと『殺気看破』での周囲の警戒を担当し、『秘宝の知識』を持つベルクはフレンディスが見つけ出した品の確認担当となり、内部を進み、様々な物で溢れる実験室に辿り着いた。
実験室。
「マスター、色んな物がありますね。この中に役立つ物があるかもしれません」
フレンディスは室内に溢れる様々な物にざっと目を向けた。
「フレイ、気を付けろよ。ここはただの魔法使いの研究所じゃねぇからな。しかし、魔法中毒者なら例の魔術師に興味を抱いてもおかしくはねぇはず。まずは魔法中毒者を知る必要があるな。おい、ワン公、この遺跡の住人で生きている奴が居るかどうかの検索を頼む」
『秘宝の知識』を有するベルクは転がる魔法薬などが普通の魔法使いが作成した物より危険だろうと考え、いつものように注意を促し、ポチの助に追加の検索を指示。
「いい加減エロ吸血鬼の好奇心の為に僕やご主人様を巻き込むのは辞めて欲しいのですけどねー、どうしてもって言うのなら仕方ありません。調べてやってもいいのですよ?」
ポチの助はデータ処理の手を止め、ベルクの言葉に良い気分になっている。どうやらベルクに頭を下げられている思い込んでいるようで。
「ポチ、お願いします」
フレンディスがベルクに続いて頼む。
「ご主人様、お任せ下さい。この超優秀なハイテク犬としての能力で必ずや役に立って見せますよ!」
ポチの助はすぐに態度を変える。フレンディスに頼まれてはやらない訳にはいかない。いや、役に立つ姿を存分に見せて褒めて貰いたい。実際はこの遺跡に溢れる謎を科学的に解明した気持ちもでいっぱいなのだが。
「頼りになります。ところで手記の分析結果の方はどうですか?」
「ご主人様、後ほど遺跡の検索結果と一緒に報告するので少々お待ち下さい」
しっかり自分を頼りにするフレンディスにポチの助は可愛くも凛々しい顔で答え、仕事に取り掛かった。
フレンディスとベルクはその間、周囲の探索をする事にした。
しばらく後。
「……これは素材の改良についての研究内容だな……品種改良でオリジナル素材を栽培していたのか」
ベルクは分厚い書物を発見し、中身を確認していた。
「マスター、魔法薬の作り方を見つけましたよ!」
フレンディスはぽやぽやと紙切れ片手にベルクの所へ。
「レシピか。見せてくれ」
気になったベルクはすぐさまレシピの内容を確認し始める。『博識』を有するためすぐにどのような薬なのか見当が付いた。
「……どうですか? 凄い薬ですか?」
「魔力を失わせる魔法薬のレシピだ」
答えを知りたがっているフレンディスにベルクは教えた。
「では、あの魔術師に有効ですね。装置だけでなくこの薬もあれば必ずや魔術師を……」
凄い発見に存分に喜ぶフレンディス。
しかし、物事はそう上手くはいかないもので。
「いや、そう簡単にはいかねぇ。必要素材が貴重な物や現在には存在していない物ばかりだ。おそらくオリジナル素材だろう。手順も面倒なものだ。興味深い物だが、作成は限りなく無理だろうな」
ベルクは詳細を述べて本当はしたくはないが、フレンディスの歓喜に水を差した。
「……少し残念です」
そう言ってシュンとしたフレンディスは『サイコメトリ』で真剣に室内の調査を始めた。
それからしばらく後。
「ご主人様、報告するのですよ!」
嬉々としたポチの助の声が上がり、フレンディスとベルクを集めた。
「あの欠けた文章は、“我々は消えてしまう”、か。百年前の紫はモギス・団長、八十年前はグルダ、旅団を率いる者で青はシュリ・語り部、自分達の旅の話を各地で行う者か。それぞれの人物について気にはなるが、今はここの事が先だな」
ベルクは旅団について少々気になるも現在いるこの遺跡が先だとひとまず後回しにする事にした。
「マスター、消えてしまうという事は……」
「そのまま読み取れば、命を失うという事だが、一人欠員が出る度にその危機にさらされるという事か。しかし、それだけとは思えねぇな。なぜ消えるのかが不明のままだ。それで研究員の人数は十人かそのうちの一人が研究所を抜け出してそいつ以外は亡くなっている事が判明しているのか。亡くなった理由は不明な者もいるが、魔法実験の失敗、病気……ほとんどがありふれたものだな」
首を傾げるフレンディスにベルクは思考した事を話した。
「ポチ、その生存者について詳しい事は分かっていますか?」
「……いろいろ検索したのですが、見つからなかったのです」
訊ねるフレンディスに少しだけ役立てなかったとシュンとしながらポチの助が答えた。
「そうですか。ポチ、ご苦労様でした」
フレンディスはポチの助を役立たずなどとは思わず、にっこりと笑顔でポチの助を労った。
「いえ、ご主人様の頼みなら何であろうと科学を操る超優秀な忍犬であるこの僕が調べてみせるのです!」
ポチの助は一気に元気回復、胸を反らすのだった。
「頼りになります。そうです、マスター先ほど室内を読み取ってみて分かった事があります。」
フレンディスはポチの助の相手をした後、読み取った内容を話し始めた。
その内容は、時間軸は、現代に近いもので学者風の男と穏やかそうな女が何やら緊張感のある様子で発見したレシピの所有権について話し合っていた。決着が付かない話し合いに区切りを付けたい男がレシピをさっさと持ち去ってしまい、女は肩を落としながら部屋を出て行ったというもの。
「俺達と同じように遺跡を調査しに来た奴か……ん?」
ベルクはフレンディスの話から男女の正体を推測する。その時、他の探索者から立て続けに連絡が入った。
忙しい報告タイム終了後。
「フレイ、取り合っていたレシピが何か分かったぞ。おそらくここの奴らが作成し所有していた特別なレシピらしい。どれぐらいの人数がそれを所有しているかは不明だが、作成者が魔法中毒者だけに凄いもんだろう。オリジナル素材もかなりの数入っていると考えて間違い無い」
ベルクは男女が取り合っていたレシピの正体を明らかにして得た情報を皆に話した。
「そうですか。それより、魔術師はこの遺跡のどこに現れて何をするんでしょうか。空間を歪めて人を迷わすと言う事はまた無差別に遺跡にいる人達を狙うという事でしょうか」
と皆を心配するフレンディス。
「その可能性は高いな。魔力だけの存在という事だが、過去の事件をプログラムみてぇに再現して最後の事件では消えてその年には出現せず、他の年代にまた出現したらしいが、それに終わりがあるのかが気になるな。あるとしたら一体どうなるのか」
とベルク。繰り返す事件に終わりが存在するのは判明したが、繰り返す行為自体に終わりがあるのかは未だ不明。
「……遺跡の問題が解決して装置を起動して魔術師を凍結した後、一体何が起きるんでしょうか。この遺跡が最後の事件の場所かどうかもまだ分かっていないそうですし」
天然なフレンディスでもさすがに魔術師凍結後に何も起きないとは思えない様子。
その時、
「……む」
ポチの助の元に連絡が入り、ポチの助は獣化し仕事を中断させ二人と共に急いで連絡をくれた者の所へ急いだ。
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