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正体不明の魔術師との対決準備?

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正体不明の魔術師との対決準備?

リアクション

 遺跡内部、入り口付近。

「双子ちゃん、いつも通りの姿に戻ってお仕事が進んでいないみたいだからお手伝いに行くのだ!」
 天禰 薫(あまね・かおる)は双子のお手伝いを提案。依頼を聞いて来るなり双子逃亡の知らせが入ったのだ。
「しかし、あれだけの事があっても復活したら通常運転か。今回は容赦はいらないようだな」
 熊楠 孝高(くまぐす・よしたか)はいつも通りの双子に呆れ、脅して仕事に引きずり回す事を考えていた。
「って、孝高、いくら本調子を取り戻した双子ちゃんだからってくまさんで強制労働は二人が怯えるのだ」
 と優しい薫。
「装置の手伝いか、よし、あの子らに手を貸してあげよう」
 と熊楠 孝明(くまぐす・よしあき)
「キュピキュピ(わたぼもお手伝いするよ)」
 とわたげうさぎロボット わたぼちゃん(わたげうさぎろぼっと・わたぼちゃん)
 四人は今までの経験から双子が湧いてきそうな場所を細かく見て歩き回った。
 その結果、とうとう双子に辿り着いた。

 司達、吹雪達と別れた後。
「キスミ、ここまで来れば大丈夫だな」
「あぁ、あいつらに捕まったら絶対にヤバイ」
 双子は吹雪の警告により大慌てで薫達から逃げていた。
 しかし、上手くいったのはここまで。
「見つけたのだ!」
「大人しく仕事をしろ。この間のような目にはもう遭いたくないだろ?」
 勢いよく一番に現れたのは薫と孝高。
「げっ!」
 出会いたくない人物に遭遇し、顔色を変える双子。
「キュピッキュピ!(お手伝いしに来たよ!)」
 背後には孝明の肩に乗ったわたぼちゃん。
「双子、はしゃぐのもいいけど、程々にした方がいいかもしれないよ? この人のようになりたくないなら……ね? それともなりたいとか……そんな訳ないよね」
 孝明は側に転がる頭が紛失した白骨死体を示しながらさり気なく釘を刺して大人しくさせようと試みる。

「!!」
 孝明の冗談には思えない冗談に危機感を感じる双子。
 しかし、
「……少しぐらいいいだろう。今すぐ来るって訳じゃねぇんだし」
「そうだぞ。こんなにあるお宝を見逃したら他の人に取られる」
 悪態をつくのは忘れない。
「キュッピッキュピ♪(ヒスミお兄ちゃん元気になってよかった♪)」
 わたぼちゃんは双子のいつも通りの姿に喜ぶ。双子には何を言っているのか分からないが悪い事を言われてはいない事だけは理解出来ていた。
「二人が揃ってる方がいい感じだけど。お仕事はちゃんとしないといけないのだ。ほら、我達もお手伝いするから一緒にがんばろう?」
 薫も双子の姿に微笑ましく思うも締める所は締める。
「……」
 双子はすぐには返答しない。心の隅で何とかしてここから逃げたいと思っているからだ。
 そんな時、
「おい、キスミ。このレシピ面白そうだぞ!」
 ヒスミが足元に転がるレシピを発見し、思わずキスミに報告しだしたのだ。
「マジか」
 調子に乗ってレシピを見始めるキスミ。
 空気を読まない双子。今の状況をさらに悪化させるのだった。
「……お前ら遊ぶのはそこまでにしろ。巨熊に叱られたくないならな」
 全く責任感が見られない双子に孝高は脅しをかける。
「たまたま目について拾っただけだろ」
「ちょっと確認しただけだし」
 孝高に獣化して貰いたくない双子は必死に止めようと訴える。
「……確かこの遺跡には凶暴化した獣がいるという話だけど、空腹で人を食べる獣がいるかもしれないね」
 孝明がとどめとばかりにさらりと怖い冗談を口走る。
「ちょ、それって俺達を見捨てるって事かよ!?」
「冗談だろ!?」
 双子は嫌な予感に大慌て。冗談ではあるが、これ以上何かしたら本当に見捨てられると感じたらしい。
「キュピ。キュッキュピ、ピキュウ!(大丈夫。怖いのが来たら、わたぼと孝明さんが守るよ!」
 わたぼちゃんは小さな子供だが双子を守ろうとお姉さん気取り。
「わたぼちゃん、二人を守るから大丈夫だと言ってるのだ。我たちもいるから何も心配無いのだ。ほら、行くのだ」
 薫がキュピ語の分からない双子のためにわたぼちゃんの言葉を訳して伝えた。
「……はぁ」
「つまんねぇ」
 双子はとりあえず今は逃亡を諦め、仕事に戻る事にした。

 仕事再開後。
「キュピッピ、ピキュウ(わたぼ、ポムクルさんにもお手伝いしてもらおうと思うの)」
 わたぼちゃんは連れて来たポムクルさんを登場させた。
「何か可愛い人形が出て来たぞ」
「魔法道具か」
 双子はポムクルさんの動きを興味深そうに追っていた。
「ピキュピ、ピッキュ(ポムクルさん、お願い)」
 ポムクルさんはわたぼちゃんの指示通り装置を設置していく。
「……何かすげぇ鳴き声は聞こえたぞ」
「近くにいるんじゃ」
 ポムクルさんの行動を眺めていた双子は突然前方から聞こえて来た獣の声に驚いた。
「孝高、行くのだ」
「あぁ。お前らはわたぼちゃんや親父と大人しくしていろ」
 薫と孝高はすぐに皆を守るために獣の所に向かった。
「おう」
 双子は孝高の言葉に元気に返事をして見送った。薫と孝高を心配させないためだとかではなく別の考えが丸分かりの元気良さ。
「……隙を見て俺達から離れようとするなよ? 怪物化した動物よりも怖いくまさんがいるんだからね」
 双子の言葉裏を察した孝明は穏やかに言うも目の奥は穏やかではない。
「……大人しくいるって」
「食われたくないし」
 双子は孝明の言葉裏に怯えたように答えた。
「キュピキュピキュッ(怖い音が向こうから近付いて来るよ)」
 わたぼちゃんが後方から近付く獣の足音に気付き、孝明に知らせた。
「……こちらにも来たみたいだね」
 孝明はわたぼちゃんと共に獣退治へと向かった。
「ピキュピキュピキッキュ!(ここから先は通さないよ!)」
 わたぼちゃんはニルヴァーナライフルでドッカンドカンと可愛くも激しい戦いぶりを見せるのだった。
「すげぇ、戦えるのか」
「かっこいいな」
 わたぼちゃんの戦闘を初めて見た双子は面白そうに眺めていた。ただの可愛いもふもふロボットではなく戦えるもふもふロボットなんだと。
 すぐに
「……キスミ」
「だな、ヒスミ」
 双子は二人だけとなった今の状況に顔を見合わせ最初で最後のチャンスが到来したと意思疎通した後、二手に別れて逃亡を開始した。

 双子が逃亡した後、
「こっちは終わったのだ」
「双子は無事か……いないな」
 戦闘を終えた薫と孝高が戻り、双子が消えた事を知った。
「あぁ、逃げたみたいだね」
「ピキュピキュウピ(どこに行ったのかな)」
 戦闘を終えた孝明とわたぼちゃんも戻って来た。
「捜しに行くのだ」
 薫はすぐに他の人達にも連絡を入れて山狩りではなく遺跡狩りが開始された。

「ふぅ、あいつらと一緒じゃお宝探しずっと出来ないし……でも凄かったよなぁ」
 キスミは怖い人達から逃れほっと胸を撫で下ろしながら歩いていた。ついでにわたぼちゃんの戦闘を思い出して楽しそうにしていた。
 そして、お宝探しを始めた。遺跡狩りが行われている事も知らずに。

 お宝探し開始後すぐ。
「使えそうなの発見!」
 キスミはそこら辺に転がっていた鉱石素材を見つけ、屈んで拾おうとするも永遠に鉱石に手が届く事はなかった。
 なぜなら、
「……真面目に仕事に戻って貰うぞ」
 『隠形の術』で身を潜ませながら接近した巨熊化した孝高によって俵担ぎをされたからだ。
「な、何でいるんだよ。さっきまでいなかったじゃん。てか降ろせよ!!」
 担がれたキスミは声を上げ、暴れて何とか抜けだそうとするが、巨熊の孝高には何の効果も無い。当然、キスミの言葉など聞く耳など持たれるわけがない。
「ヒスミちゃんも見つかったと連絡が入ったのだ」
 ぴょこんと前方の曲がり角で待機していた薫が現れ、キスミに悲報を伝えた。
「ヒスミも捕まったのかよ」
 片割れの近況にがっくりするキスミ。もし無事なら助けてくれる可能性もあったのにそれが潰えたから。
「兄弟再会、良かったじゃないか」
「ピキュッピキュ(無事でよかった)」
 後方の曲がり角から孝明とわたぼちゃんが現れた。
「……もう逃げねぇから降ろせよ!」
 キスミは完全包囲されていた事に気付き、今は逃亡を諦めるのだった。自分が孝高から逃れたとしても曲がり角で捕縛されていたから。
「……お前の片割れに合流してからな」
 孝高はそう答えるだけで自由にはしなかった。
 薫達はそのままキスミを捕獲した者との合流地点へ急いだ。