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リアクション
それからしばらく後。
ヒスミにお仕置きをし終わったゆかり達に遭遇し、
「……あまりにも不真面目だからこの通り」
「なるほど。とりあえず俺が引き取るから二人は仕事に専念してくれ」
ゆかりから事情を聞いた後、陽一は軽く気を失っているヒスミを引き取った。
ただ、引き取るだけでなく、前回の別世界にてヒスミを追い回したパンツ一丁の妖怪こと特戦隊の一人に背負わせ、陽一は他の者にヒスミ発見の連絡を入れると共にキスミ発見の連絡を受け取った。話し合った合流地点へと迅速に移動し、待つ事にした。
合流地点。
「……ん、ここは」
気絶していたヒスミがようやく目を覚ました。
「ようやく、目を覚ましたかい」
ヒスミの目覚めに気付いた陽一はすぐに声をかけた。怒りのない優しい顔で。
「あぁ。って、何だよこれ。あの続きか!?」
顔を上げ、周囲を見回したヒスミは悲鳴じみた声を上げた。自分の周りにいるのはパンツ一丁の十五人の特戦隊。別世界で見たあの悪夢の続きとしか思えない光景。しかも自分はその一人に背負われているという嫌な予感しかしない状況。
「……現実だよ。死にかけたというのに本当に懲りないね」
陽一は平時と変わらぬ顔で優しく言葉をかけるもヒスミにとっては嫌な事が始まる前触れでしかない。
「仕事はちゃんとやってるぞ! というか降ろせよ!」
ヒスミは何とかこの場から脱出しようと必死だ。
「分かったよ。もうそろそろ……というか来たみたいだ」
陽一はヒスミに答えた後、多くの足音に気付き待ち人が来た事を確認した。
「……来たって、何が……」
陽一につられて待ち人を確認したヒスミの顔は真っ青に変わり、強ばってしまった。恐ろしき人達が現れたからだ。
それは
「ヒスミちゃん、また会ったのだ」
「あれほど言い聞かせたのに相変わらずの元気さに頭が下がる思いだよ」
薫と孝明。
「二人仲良く仕事に戻るんだな」
巨熊の孝高は俵担ぎしていたキスミを降ろす。
「ピキュウピ(わたぼも手伝うからがんばろう)」
可愛らしいお姉さん風を吹かせるわたぼちゃん。
「俺達はちょっと、仕事のついでに拾い物をしただけなのに何でこんな目に遭うんだよ」
「何か役立つかもしれねぇのに」
再会を果たした双子は減らない口で薫達に悪態をつく。
「……ついでに拾うのは悪くないのだ。でも、それが主なお仕事になってはいけないのだ。双子ちゃんのお仕事は装置の設置なのだ」
「役立つ物は他の奴らが探している。あんまり駄々をこねるようなら……」
優しく諭す薫の横でまだ巨熊のままの孝高が眼光鋭く脅しとばかりににらんでいる。
「……あぁ」
再度の逃亡は出来ないと悟った双子はうなだれるようにうなずいた。
「よしよし、良い子だ。またしでかしたらどうなるか分かっているよね?」
孝明はにこやかな顔を向けた。その奥に次逆らった際は命の保証は無いという恐ろしさをちらつかせたり。
「……」
双子は孝明の笑顔の奥を見て取り、完全に戦意を失い、自分達の周囲を見回しますますガクリとしていた。周囲は孝高と孝明の熊親子以外に陽一が連れて来た特戦隊によってがっちりと護られていた。逃亡の隙はすっかりと消えていたが、身の安全だけは確かな配置。
双子は元気の無い様子で仕事に戻った。
遺跡内部。
「それより、仕事さぼったあの二人はどこに行ったのかな」
装置設置のお手伝い中、マーガレットはふと自分達に面倒を掛けている双子の事を思い出し、呆れたように溜息を吐いた。
そのマーガレットの問いかけに答えたのは
「それは大丈夫よ。先ほどキスミと会ったんだけど、無事に保護者に引き渡したから。きっとヒスミの方も誰かが保護しているはず」
通りすがりのゆかりだった。
「そ、そうですか。きっと大丈夫ですね」
「あの二人やつれてるだろうなー」
リースとナディムはこれまでの事から双子が酷い目に遭っているのだろうと容易く想像していた。
「ところで仕事の進み具合はどう?」
マリエッタが訊ねた。
「順調よ。徘徊する怪物が邪魔だけど。そっちはどう?」
マーガレットが代表して答えた。
「こちらも順調。やっぱり、邪魔者が厄介だけど」
マリエッタが答えた。
「それなら分担しない? そっちが装置設置を担当してあたし達が装置の防衛を担当するって事で。こっちは三人いるし」
とマーガレットが名案とばかりにある提案をした。
「カーリー、どうする? 効率は良くなると思うけど」
マリエッタは隣にいるゆかりに意見を求めた。
「そうね。引き受けるわ」
ゆかりはマリエッタにうなずいた後、マーガレットの提案を受け入れた。
「よ、よろしくお願いします」
リースは少なくなった装置をゆかりに引き渡した。
「えぇ」
ゆかりはリース達の分を受け取った。
「気を付けて」
マリエッタはリース達の無事を気に掛けてからゆかりと共に装置設置に戻った。
ゆかり達を見送った後。
物陰を偵察していたぷちどらアヴァターラ・スコープがリース達の元に戻り、怪物の居場所を知らせた。
「早速だな」
描天我弓を構えるナディム。
「……か、かなりの数です。装置が壊されないようにしないと」
『殺気看破』によりいくつもの害気を感じ取ったリースはいつでも魔法を放てるように準備をする。
「もちろん!」
ラスターエスクードを構えるマーガレット。
準備が整うなり、先手必勝と怪物の懐にマーガレットが飛び込み、ナディムが描天我弓で援護し、リースの『光術』が目くらましとして活躍してあっという間に退治した。
この後もリース達三人の見事な連携により次々と怪物化した動物達は退治されていった。
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