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そして、蒼空のフロンティアへ

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そして、蒼空のフロンティアへ
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空京遊園地へ



「次は、あれに乗ろうよ、あれあれっ!」
「そんなに急いでは、危ないですよ」
 破顔一笑で駆け出そうとする吉木 詩歌(よしき・しいか)を、不知火 緋影(しらぬい・ひかげ)がやんわりと引き止めました。ここは、空京にある遊園地です。
「肝心のクリューネルさんや、ラクシュミさんをおいていってはダメです」
「うん、そうだよね。みんなで行こ、みんなで」
 不知火緋影にたしなめられて、吉木詩歌が彼女の腕をとりました。
 今日は、吉木詩歌と不知火緋影ペアと、セリティア クリューネル(せりてぃあ・くりゅーねる)ラクシュミ・ディーヴァペアのダブルデートなのです。ラクシュミ・ディーヴァはいつもの空京 たいむちゃん(くうきょう・たいむちゃん)の着ぐるみ姿ではなく、中の人の姿ですので、パッと見ると仲良し四姉妹という感じです。
 まあ、本当は、セリティア・クリューネルがまだ二人だけのデートは恥ずかしいと言うので、吉木詩歌と不知火緋影が当て馬的についてきてあげているだけなのですが。そのはずなのですが、別に恋人同士ではなくても、吉木詩歌と不知火緋影は仲良しです。しかも、今日はラクシュミ・ディーヴァも一緒だというので、吉木詩歌はちょっと舞いあがっていました。それだけ、楽しいのです。
「メインは、あくまでも、クリューネルさんとラクシュミさんのデートなんですからね」
「うんうん、分かってるもん」
 不知火緋影に念押しされて、吉木詩歌がうんうんとうなずきました。
「分かっていればよろしいです」
 そう言うと、不知火緋影が、吉木詩歌の手をギュッと握りしめました。本当は、不知火緋影も結構ドキドキなのです。不知火緋影にとって、吉木詩歌は、パートナー? お友達? 家族? ううん、もうちょっとだけ大切な存在のようです。
「これに乗るのか?」
 ジェットコースターを前にして、ちょっとセリティア・クリューネルがラクシュミ・ディーヴァを気にしました。こういう乗り物は、大丈夫なのでしょうか。
「面白そう。早く乗ろうよ」
 そんなセリティア・クリューネルの心配をよそに、ラクシュミ・ディーヴァはこういった乗り物は平気のようです。
「それじゃ、二人ずつね」
「うんうん」
 そう言うと、不知火緋影と吉木詩歌が気をきかせて二列目に乗りました。進められるままに、セリティア・クリューネルとラクシュミ・ディーヴァが最前列に座りました。これなら、二人以外の邪魔者は視界に入りませんし、何よりも、じっくりと二人の様子を後ろから観察することができます。
「うっきゃあー♪」
「きゃあ!」
 急勾配を下るときに、喜んでバンザイする吉木詩歌とラクシュミ・ディーヴァとは対照的に、不知火緋影はバーをしっかりと掴んで身を伏せています。セリティア・クリューネルとは言えば、庭前とラクシュミ・ディーヴァの方ばかりを見ていたようでした。
「ようし、次はお化け屋敷だよ♪」
 元気一杯の吉木詩歌が、へろへろの不知火緋影たちに言いました。
「ええっと、いこ」
 さすがに、ラクシュミ・ディーヴァがちょっとセリティア・クリューネルの腕をとってお化け屋敷にむかいます。
 ここが頼りがいのある恋人としての見せどころよと、後ろで吉木詩歌に支えられた不知火緋影がグッと拳を握りしめました。
 またまた二人ずつに計画的に分かれて、お化け屋敷の中へと入っていきます。
「うっきゃあー!」
 建物の中から、不知火緋影の悲鳴が外まで響き渡りました。
 しばらくして、御満悦の吉木詩歌とへろへろの不知火緋影が出てきます。やや遅れて、なんだかかちんこちんに緊張したセリティア・クリューネルと、しっかりとしがみついたラクシュミ・ディーヴァが出てきました。
「よし」
 吉木詩歌と不知火緋影が、握った両手の脇を締めて気合いを入れます。
「あ、ありがとな」
 セリティア・クリューネルが、そっと二人にささやきました。
「よっし、さあ、次だよ!」
 調子に乗って、吉木詩歌が叫びました。