校長室
そして、蒼空のフロンティアへ
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★ ★ ★ 「まったく、つきあってなどいられないのだよ」 ドンパチの続く市街を、何ごともないようにバイクでトコトコと進みながら、ザッカリー・テイラー(ざっかりー・ていらー)がつぶやきました。 突然エビ漁に行くと言いだしたガルム・コンスタブルに誘われたのですが、とてもつきあっちゃいられません。その後、ガルム・コンスタブルたちが何かしでかしたようですが、自分は無関係です。 酒でも飲まなきゃやってられないと思ったのですが、肝心の酒とつまみがありません。仕方なく、空京のコンビニまで買い出しに来たわけなのですが、バーボンとウイスキーはあったのですが、つまみにほしかったビーフジャーキーがありません。いえ、あるにはあるのですが……。 「これはなんだ、ゴムの塊か!?」 もう、見ただけで質の悪さが分かります。ああ、地球産のビーフじゃキーが恋しい。 仕方なく、あり合わせのビーフジャーキーを買ったものの、なんとも不満です。 トコトコとバイクで進んでいくと、いきなり道を聞かれました。 「酒の肴を探しているのだが、この近くにコンビニとかないかな?」 買い出しに出た近藤 勇(こんどう・いさみ)が、ザッカリー・テイラーに訊ねました。 「肴か、それならビーフジャーキーが最高だ。だが、ここには……。よし、最高のビーフジャーキーが売っている店を教えてやろう」 そう言うと、ザッカリー・テイラーが、近藤勇に地図を書いて渡しました。ええと、どう見ても、天沼矛を下った先の海京にある輸入食料品店です……。 「これは、かたじけない」 そう礼を言うと、近藤勇は地図に書いてある店へとむかいました。 そんな近藤勇がマイト・レストレイドに発見されたのは、数日後のことでした。どこでかは、聞かないでください。ちなみに、空京でも海京でもありませんでした。 ★ ★ ★ 「ドクターハデス! あなたたちの悪事は、このアルテミス、いえ、正義の騎士セレーネが阻止してみせます!」 一方、ドクター・ハデスたちの前には、仮面をつけたアルテミス・カリスト(あるてみす・かりすと)が立ち塞がっていました。キロス・コンモドゥス(きろす・こんもどぅす)と婚約してオリュンポスを脱退し、今では正義の騎士として活動しています。ある意味、オリュンポスの天敵でした。 「あー、アルテミスお姉ちゃんだ」 ペルセポネ・エレウシスが叫びます。バレバレです。 『ほう、アルテミスか。かつての同胞とはいえ、我らの世界征服の野望を邪魔するなら、容赦はせぬぞ! ゆけ、改造人間、ペルセポネよ、高天原咲耶よ!』 空京近空に移動したオリュンポスパレスの上に立体映像を投影しながら、ドクター・ハデスが言いました。 「アルテミスちゃんに恨みはないですが、私と兄さんの愛を邪魔するなら、排除しますっ! 変身!」 携帯電話を高々と掲げた高天原咲耶の姿が、デジタルノイズのようなもので歪みました。二つの画像が重なるようにして明滅し、高天原咲耶が魔法少女の姿に変身します。 「ハデス先生、変身願います」 ペルセポネ専用変身ブレスレットを掲げて、ペルセポネ・エレウシスも言いました。 『よろしい、許可する』 ドクター・ハデスが、変身を指示します。 「行きます、機晶変身」 ペルセポネ・エレウシスがペルセポネ専用パワードスーツを装着しました。 「アルテミスお姉ちゃん、ごめんなさいっ!」 ペルセポネ・エレウシスが、ペルセポネ専用ビームブレードでアルテミス・カリストに斬りかかりました。 「アルテミスブレード!」 アルテミス・カリストがそれを弾き返すと、入れ替わるようにして高天原咲耶が、雷光を纏わせたユーノーの杖で叩いてきました。本気です。 「くっ」 さすがに、アルテミス・カリストが少し後退します。 ペルセポネ専用高機動ユニットと合体したペルセポネ・エレウシスが、生体内蔵型機晶リアクターを開放しました。 「機晶リアクター制限解除。必殺フルパワーで行きます」 「しまった……」 隙を突かれたアルテミス・カリストの対応が遅れます。ペルセポネ・エレウシスのフルバーストの攻撃が全弾命中して、激しい爆炎が起こりました。 「ふふふふふ、ははははは……」 勝ち誇ったドクター・ハデスが高笑いをあげます。 「変身が解け……いやああん!」 エネルギーを使い果たしたペルセポネ・エレウシスの変身が解けます。すっぽんぽんになってしまいますが、まあ、いつものことです。 やがて、爆発の炎がゆっくりと消えていきました。 「やれやれ、世話の焼ける」 そこに現れたのは、聖剣勇者 カリバーンでペルセポネ・エレウシスの攻撃を防ぎきったキロス・コンモドゥスでした。 「キロスさん、来てくれたのですね!」 アルテミス・カリストが、パッと顔を輝かせました。 「こういうのはさっさと終わらせてくれ」 キロス・コンモドゥスが、聖剣勇者カリバーンを一振りして、高天原咲耶とペルセポネ・エレウシスを退かせました。 「さすがにやりますね! なら、兄さんの作ったイコンで勝負です!」 『よかろう。さあ現れよ、我がイコン、機動巨神ギガース・オリュンポスよ!』 ドクター・ハデスの言葉と共に、オリュンポス・パレスの城の部分が変形を始めました。 「ギガース・オリュンポス……。完成していたの!?」 アルテミス・カリストが絶句しました。アルテミス・カリストがまだオリュンポスにいたころは、欠陥品で変形すらできなかったはずです。 ぴー。 機動巨神ギガース・オリュンポスから謎の牽引ビームが放たれ、ハデスの発明品と合体したドクター・ハデス、高天原咲耶、怪人デスストーカーが超巨大イコンに吸い込まれていきます。 「アイトーンさん、機晶合体です」 装甲がすべて剥がれ落ちてすっぽんぽんになったペルセポネ・エレウシスが、必死に胸と股間を押さえながら叫びました。 「おう、任せとけ」 空の一点がキランと光って舞い降りてきた機晶戦闘機 アイトーンが、変形してペルセポネ・エレウシスと合体しました。不足するパーツが、オリュンポス・パレスから飛んできてくっつきます。 「機晶神ゴッドオリュンピア!」 やっとすっぽんぽんではなくなったので、安心してペルセポネ・エレウシスが名乗りをあげます。 「くっ、ハデスが巨大ロボを出してきましたね! それなら、こちらも!」 「おう」 アルテミス・カリストとキロス・コンモドゥスが目と目で決意を交わしました。 「任せておけ」 人型に戻った聖剣勇者カリバーンが、己が分身を呼びました。 大空より現れた神剣勇者エクス・カリバーンが、巨大な剣形態の神剣エクス・カリバーンに変形しました。 「いくぞ、聖剣変形!」 聖剣勇者カリバーンが、再び剣形態になりました。そのまま上昇して、巨大な神剣エクス・カリバーンの柄許に刺さって収納されました。 『神剣武装!!』 輝く大剣から、空を被う厚い雲にむかって光が放たれました。 すると、渦巻く蜘蛛を突き抜けて、巨大な人型がゆっくりと下りてきました。黄金に輝き、青いマントを翻すその巨大イコンこそ、聖剣勇者カリバーンの真の姿、剣神グレートエクスカリバーンだったのです。 『さあ、アルテミス、俺を使え!』 剣神グレートエクスカリバーンから謎の光が放たれ、アルテミス・カリストとキロス・コンモドゥスが巨大イコンに吸い込まれていきました。もともとはオリュンポスの技術なのでしょう、なんとなく機動巨神ギガース・オリュンポスと似ています。 機晶神ゴッドオリュンピアが戦線攻撃をかけますが、剣神グレートエクスカリバーンにはききません。 「凄い。ハデス先生、早くやっつけちゃってください」 機動巨神ギガース・オリュンポスの背後に避難して、ペルセポネ・エレウシスが言いました。けれども、機動巨神ギガース・オリュンポスは動きません。 「兄さん、早く攻撃を!」 高天原咲耶が急かしました。 「しまった、全員乗っちゃったから、コントロールする者がいない……」 ひきつりながら、ドクター・ハデスが言いました。量産型饕餮と同じシステムを用いているので、搭乗している三人は、出力調整ぐらいしかできません。本来のコントロールは、外にいる四人目のパイロットが行います。 「コントローラーがあれば、大丈夫でしょう?」 「忘れてきちゃった……」 「大事なリモコンでしょうがあ!」 しれっと言うドクター・ハデスに、高天原咲耶が悲痛な叫びをあげました。 「いきます。必殺、グレート・カリバーンストラッシュ!!」 剣神エクスカリバーンを高く掲げたアルテミス・カリストとキロス・コンモドゥスが、高エネルギーにつつまれた大剣を振り下ろしました。 「そんな、馬鹿な……!」 機動巨神ギガース・オリュンポスごと、機晶神ゴッドオリュンピアと機動要塞オリュンポス・パレスまでもが真っ二つにされ、ゆっくりと雲海に沈んでいきました。 さらば、秘密結社オリュンポス……。