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目からビーム出そうぜ! ビームだよビーム!

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目からビーム出そうぜ! ビームだよビーム!
目からビーム出そうぜ! ビームだよビーム! 目からビーム出そうぜ! ビームだよビーム!

リアクション

                              ☆


 フィーア・四条(ふぃーあ・しじょう)は、押し寄せるクラゲの大群に、左手にセットした『ザ・最古の銃』を乱射した。
「ふ、あんなにのろいクラゲの大群、当たらないわけがない!!」
 魔鎧であるシュバルツ・ランプンマンテル(しゅばるつ・らんぷんまんてる)を黒いマントとして従え、確実にザ・最古の銃の銃弾をヒットさせていく。
 だが、いかに精神力を銃弾として発射する最古の銃といえど、パラミタ電気クラゲの防御力の前には大したダメージを与えられない。
「ち、いくら当てても無意味なのか……!?」
 そして、そこに駆けつける戸次 道雪(べつき・どうせつ)立花 眞千代(たちばな・まちよ)
 道雪はフィーアの背後に接近していた電気クラゲを龍骨の剣で押し戻し、ガードする。
「お、サンキュー! ベッキー師匠!!」
「じゃから、その呼び方はよせと言うておるじゃろがっ!!」
 ガードを道雪に任せ、眞千代がフィーアの脇を固めた。
「おうフィーア、コレ使えよ」
 と、眞千代が差し出したのは『情熱クリスタル』ここにくる途中でおおまかな 事情を人づてに聞き、フィーアの分をもぎ取ってきたのだ。
「何……これ?」
 フィーアは目を丸くするが、眞千代は構わず説明を続ける。
「ああ、なんかコレを使えばあのクラゲに良く効くビームが出せるんだとよ!」
 だが、その説明に対して、フィーアは軽いため息をついた。
「ハァ? 何言ってんの? ビームなんか出るわけないじゃんか、もし出せるんなら眞千代が出してみなよ。ヤンキーなんだから目からビームくらい出せるでしょ?」

 なんとも無茶な話の振り方だが、ヤンキー風の外見とは裏腹に純情で礼節を重んじる眞千代は、まず自分が手本を見せなければフィーアも納得するまいと思ったのか、自分のクリスタルを取り出して、夜空に叫んだ。


「よし、見てろ!! 超眼力ビィィィムッッッ!!!」


 ヤンキー独特の眼力から発せられる強力なガンつけビームが発射され、至近距離まで迫っていたクラゲを一匹睨み殺した。
「え、本当に出るのか!?」
 あくまで半信半疑だったフィーアは驚く。

 その驚きをよそに、フィーアたちを取り囲むように現れた一団があった。

 まずヤジロ アイリ(やじろ・あいり)、そしてネイジャス・ジャスティー(ねいじゃす・じゃすてぃー)が現れた。

「いくぜ、眼鏡ビィィィムッ!!!」
 アイリはその眼鏡から緑色の光線を発射し、次々にフィーアたちを囲むクラゲを撃破していく。
 狙いが外れた敵にも自動で追尾するとようで、次々に追撃をかけていった。

「――こちらも負けません。眼鏡ビームっ!!!」
 ネイジャスも同様で、眼鏡からクールな青いビームを発射し、こちらも次々にクラゲを撃ち落とす。
 そのビームはまるで細い槍のように数本にばらけて、アイリのように追尾性能はないが、広範囲に広がって一気に数体のクラゲをしとめることができた。

 そしてさらに、別方向からそのクラゲ集団に攻撃を仕掛けたのが、ライカ・フィーニス(らいか・ふぃーにす)と、レイコール・グランツ(れいこーる・ぐらんつ)だ。

「えーいっ!! 目からビーム!! ……あれ? やっぱ出ないや」
 だが、ライカの気合とは裏腹に、どうしてもビームが出てこないようだ。
 それを心配したレイコールは、ライカに尋ねた。
「はて……おかしいな。それが『情熱クリスタル』に間違いないのだろう?」
 周りを見ると眞千代やアイリ、ネイジャスは撃ててるのに、とライカはしょんぼりとした。
「うーん……情熱が足りないのかなぁ……そうだ、足りないなら奮い立つような条件を自分で作ればいいんだ!!」
 ぽんと手を打ったライカは、とりあえずこの場のクラゲを掃討し終わった眞千代とアイリ、ネイジャスに話しかけた。


「ねぇねぇ、みんなで誰が一番クラゲさんをやっつけるか競争しようよ、そうすれば私もみんなも情熱が高まってやる気が出ると思うんだよね!!」


 それに一番に反応したのが眞千代だった。
「お、いいねぇ!! あたしはその勝負、受けるぜ!!」
 それにアイリとネイジャスも乗る。
「ああ、いいぜ!! つーかこっちは元から二人で競争してたところだしな、なあ!?」
 その言葉に、ネイジャスも眼鏡の位置を直しながら答えた。
「ええ……アイリにだけは負けるわけにはいきませんから。ちなみに、私は今のでクラゲを46体落としています」
 アイリはそれに対抗し、胸を張った。
「へっ!! こっちは47体だぜ!! この分なら猫耳ミニスカメイド服で一日ご奉仕するのはおまえだな!!」
 だが、あくまで冷静なネイジャスは淡々とその挑発を受け流す。
「いいえ――最後に勝つのは私です。まさかカウントを誤魔化すようなことはしていないでしょうから、皆さんのカウントも自己申告制でいいでしょう」

 その会話の中で、ライカにはどうしても聞き逃せないフレーズがあった、瞳をランランと輝かせてアイリに詰め寄る。
「ねぇ、ねぇねぇ猫耳ミニスカメイド服でご奉仕って何?」
 アイリは笑う。
「ああ、こいつと勝負してんだよ。クラゲ退治競争で負けた方が一日猫耳ミニスカメイド服でご奉仕するってな」
 その言葉に、ライカのワクワクはもう止まらない。
「何それすっごい楽しそう!! 私もやりたい!! いいかなっ!?」
「あー……いいけどよ、おまえビームでねぇんだろ? いいのかよ、勝負受けて」
 しかしもはや楽しそうな勝負のほうに頭がシフトしてしまったライカの耳にそんな忠告は届かない。

「大丈夫、何とかなるよ!! 私こう見えてもけっこう強いんだよ!? だって今まで一度も風邪引いたことないし!!」

「あー……それはなんとなく分かるな……んじゃま、最後に電力が戻ったら集合して互いの撃墜数を競うってことでいいな!!」
 眞千代の合図で、ヤジロとネイジャスは互いに牽制しながらクラゲが多そうな地域へと走り去っていく。
「よっし、ますます負けられねぇぜ!!」
「どうですかね――あなたはむしろメイド服姿でご奉仕したいお相手が最近できたのでしょう? 私がきっかけを作って差し上げますよ」
「うっせ、いねぇよそんなもん!!」
 それに続き、眞千代とフィーア、道雪たちも移動を開始した。
「こっちも行こうぜ、燃えてきたぜ!!」
 勝負好きなヤンキーの性だろうか、とたんに張り切りだした眞千代に、フィーアはやる気なく呟く。
「まぁ……せいぜい頑張ってよ。僕も適当に頑張るからさ……あ、僕は競争は不参加ね」

 後に残ったのは、大量のクラゲの残骸とライカとレイコール。
「よっし、私も燃えてきたよ!! ここはなんとしてビームを出さないとね、ビーム……ビーム……ところでこのクリスタル……」
「?」
 じっと手元のクリスタルを見つめるライカを、レイコールは眺めた。
 ライカが新しくもぎ取ったクリスタルは、どことなく黄色っぽくて、しっとりとシトリン色。完全に透明ではないそのクリスタルを見つめるライカは、ある感想をぽつりと漏らした。

「このクリスタル……おいしそう……」
 盛大に噴出しながらレイコールは手に持ったハリセンでライカに突っ込んだ。
「そ、その感想は何か間違ってないかね!? というか食べるなあああぁぁぁっ!!!
 レイコールに突っ込まれつつも、ライカはあっという間にクリスタルをぼりぼりと食べてしまった。


「う、うーまーいーぞーっ!!!」


 意外なことに情熱クリスタルはなかなかの味わいであったらしい。感動のあまり叫ぶライカの髪のアホ毛の先から、ほとばしる情熱がバナナ色のビームとして発射された!!!


「そ、それでいいのかあーーーっっっ!!?」


 幾度となくハリセンで突っ込みを入れるレイコールだが、ライカはビームが出た喜びに打ち震え、そんなことは気にもしていない。
「やったーっ!! ビーム出たよーっ!! これで勝負に参加できるよーっ!!」
 いささか無茶だったとは言え、喜ぶパートナーを見るのは悪い気分ではない。レイコールははしゃぐライカの肩にぽんと手を置き、呟いた。
「ま、まあよかったではないか。勝負に負けてしまったのなら猫耳ミニスカメイド服なのだろう?」
 その言葉に素直に頷くライカ。微笑みながらレイコールに大きなクリスタルを手渡した。
「うん、そうだね。頑張らなくっちゃ!! はい、これレイの分!!」

 それは、不思議なことに大きなハリセン型をしたクリスタルだった。
「……何だ、これは」

 呆然と呟くレイコールに、ライカは畳み掛ける。
「さっきそこで見つけたんだ!! もうレイにぴったりだなって思って!! これできっとハリセン型ビームが撃てるよ!!」
 もはや比較的常識人なレイコールは眩暈しかしない。
「いやいやいや、ハリセンというものは飛ばすものでも爆発するものでも、ましてやビームになるものでも……」
 どこから突っ込んでいいのか分からないレイコール。しかしライカは張り切って走り出してしまう。
「ほら行こうよ!! 早く行かないと競争に負けちゃうよ!! 負けたら私の代わりにレイが猫耳ミニスカメイド服なんだから頑張らないと!!」


「勝手に決めるなあああぁぁぁっ!!!」


 それはそれは見事な突っ込みハリセンビームだったという。