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雪花滾々。

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雪花滾々。
雪花滾々。 雪花滾々。

リアクション



8


 雪がたくさん降って、積もったから。
「クーちゃん、来たよー!」
 ミーナ・リンドバーグ(みーな・りんどばーぐ)は、フランカ・マキャフリー(ふらんか・まきゃふりー)立木 胡桃(たつき・くるみ)を連れて工房にやってきた。
「わぁっ、みんなであそびにきてくれたの?」
「なの。くーちゃんと、あそぶー」
 早速手を取り合って雪遊びを始めるフランカとクロエを、ミーナは微笑ましい気持ちで見守る。
「胡桃も遊んでおいでー」
 ミーナの隣、遊びに行くべきかどうかと二人を見ていた胡桃の頭をぽふぽふ撫でて、背中を押してみたり。
「もきゅ!」
「くるみちゃんもあそぶ?」
「くるみくんっていうの? よろしくね! いっしょにあそぼ?」
「きゅっ」
 すると瞬く間に胡桃とクロエは打ち解けて、ちびっこ三人で雪をぺたぺた。
 どうやらかまくらを作り始めたようだ。
「おっきいの、つくろー?」
「うん。みんながはいれるくらいの、ね!」
『ボク、がんばる!』
 三人ともやる気満々のようだが、いかんせん身体が小さい。
 ――ここはひとつ、ミーナが手伝うしかないね!
「ねー、ミーナも一緒に作るよ!」
 元気よく言って、輪の中へ。
 雪を集めて、三人では届かない上の方にも雪を積もらせ、固めていって。
「できたー!」
「はいろー」
「うん、はいろうっ」
「もきゅー♪」
 完成したら、全員で入ってみる。
 少々狭かったが、逆にそれがいい。みんなでくっつきあっている感じが、とても。
 ふと見ると、フランカが胡桃の尻尾を抱き締めていた。
「ぎゅーってするとね、あったかいんだよ」
「そうなの?」
『ボクのしっぽでもふもふどうぞ!』
 フランカと胡桃に勧められ、クロエがそっと手を伸ばす。
「ふわぁ。あたたかいのね!」
「もきゅっ」
「くるみちゃん、うれしそう。ふらんかも、ぎゅー、するー」
 ぎゅぅっとくっつきあう、可愛らしいちびっこ三人。
 見ていて、これ以上幸せなものがあるだろうか。
 ミーナはこっそりと拳を握り、やはりこっそりと携帯のカメラ機能で写真を撮るのだった。


*...***...*


「Hallo,Long time no see」
 片手を上げて挨拶してから、ローザマリア・クライツァール(ろーざまりあ・くらいつぁーる)は気付いた。
「って、あの時は特殊メイクのフルフェイスマスクでお化けの扮装だったんだっけ」
 対して今日は、普段着にごく薄いメイク。リンスが誰だっけ、とでも言うように首を傾げているのも頷ける。
「おばけの、っていうとハロウィン?」
「そうね。あの時あなたの人形を引き取らせてもらった一人よ」
「ええと」
「最後に、動く子を引き取っていった。そう言えば思い出せるかしら」
「ああ。うん、思い出した。あれから元気?」
「元気よ」
 ほら、と外に目をやる。外では、クロエの隣で雪だるまを作るシャーロット・ジェイドリング(しゃーろっと・じぇいどりんぐ)の姿があった。
「今日はあなたにお願いがあって来たから席を外してもらったけど、今度また挨拶に来るわ」
「お願い?」
「ええ。あの子に何か衣装を作ってもらえないかしら?」
 ハロウィンの後。
 いつまでもハロウィンの時の衣装ではかわいそうだと思い、自前で一着は作ってみたものの。
「結構、作るのに時間がかかるものなのね」
 何分多忙な身であるため、二着三着と作ることは叶わなかった。
 なら、丁度良い機会だとリンスの許を訪れることにしたのだ。
「衣装製作の依頼がてら、あの人形の製作秘話みたいなのを聞きたくて」
「秘話って言われても。……特に思い当たらないな」
「何もないの?」
「ないよ。普段どおりに作った」
 すっぱりと言い切られて、肩透かしを食らったような感じになる。命が吹き込まれたままだったから、何かあるのだろうと思ったのだけれど。
「何かの縁があったのね」
「縁。そうかもね」
「そうそう。差し入れを持ってきたの。甘いものはお嫌いかしら? 作業が続くと甘いものが欲しくなるかな? って思って持ってきたのだけれど」
 テーブルの上に置くのは、道中買ってきたオレンジムースケーキ。
「クロエの分もあるから、後で分けてあげて。紅茶か何かあるかしら?」
「キッチンの棚の中に」
「淹れてくるわ。作って欲しい服はこんな感じよ。よろしくね」
 どんな服を作って欲しいのかを書いたメモをリンスに渡し、ローザマリアはキッチンに入った。棚を開け、紅茶の茶葉が入った缶から二人分の茶葉を出し、淹れる。
 戻ってきた時、リンスはメモを見ながら真っ白いノートにイメージを描いているところだった。
「どうぞ」
「どうも」
 短いやり取りの後、ローザマリアは正面の席に座った。作業の下準備をしているところを、なんとはなしに眺める。
「そういえば、あの子。猫みたいなのよね」
「猫」
「そう。付かず離れずなの。ずっと。でもそこが可愛いのよね。夜中にこっそり、私のベッドに潜り込んで来るところとか」
「うん。それは可愛い」
「それにね、とても賑やかなの。私にとって、欠かすことができない家族になったわ」
「家族になれたの。なら、あの子にとっても本望だろうね。ありがと」
「あなたがお礼を言うの」
「言うよ。親みたいなものだもの」
 それもそうねと頷いた。
「ねえ。衣装の色はどうするの?」
「生地合わせの時に一番しっくりきたのは青緑色だったわ」
「じゃあ青緑色と」
「それから、白い花をイメージして一着。あと、オレンジ色の衣装も欲しいわ」
「全部で三着?」
「多いかしら。出来る?」
「出来なくはない。けど、時間もらうよ?」
「ええ。納期に関しては言及しないわ。作ってくれる時で大丈夫だから」
「了解。気長に待ってて。出来たら電話するから」
「ありがとう」
 承諾してくれたことに対してお礼を言ってから、
「本当に、ありがとう」
 もう一度、お礼を。
 何? とリンスがローザマリアの目を見た。
「シャーロットを譲ってくれたことへのお礼」
 あの子に会えて、良かった。
 あの子もそう、思ってくれていればいいのだけれど。


 同時刻、工房前。
「協力するのは、キョウダケダカンナー! ですぅ!」
「そうなの? あしたはもう、だめなの?」
「むー。それはその時にならないとわからないですぅ。気分次第ですぅ!」
 ころり、ころりとクロエと一緒に雪玉を転がす。
「せいやー!!」
「えいっ」
 突進系の二人だから、それはもう勢いよく。
 ごろごろごろ、と転がして、できた雪玉はかなりの大きさで。
「……これ、うえにあたま、おけないわ。おおきすぎるもの」
「クロエは弱気ですぅ。こんなの、ジャンプして乗っけてきてやるですぅ!」
「あぶないとおもうわ」
「虎穴にいらずんば虎児を得ず! ですぅ!」
 適当な大きさに丸めた雪玉を持って、ジャンプ!
 が、当然重力はかかるわけで。
 手にした雪玉の重さもあるわけで。
 ぼしゅっ。
 と、音を立てて大きな雪玉の中に埋まる。
「シャーロットおねぇちゃんがゆきだるまになったわ!」
「むきー! たすけろ! ですぅ!」
「全くもう……何やってるのよ」
 呆れた声が、下の方からした。視線を下げると、ローザマリアが困った顔で笑っている。
「ローザ! たすけろなのですぅ!」
「はいはい」
 雪玉から引っこ抜かれて、一安心。
「クロエはこんなことしちゃだめですぅ。雪、あなどりがたし! ですぅ」
「しないわ」
「ならいいですぅ。
 ローザは? 話、終わったです?」
「ええ。だから、今日はもう帰るわよ」
 ローザが手を差し伸べてきたので、その手を握り。
「じゃーな! ですぅ!」
 クロエへと手を振って、帰途に着く。