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合コンしようよ

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合コンしようよ
合コンしようよ 合コンしようよ

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フリータイム

 
 
「それでは、いよいよ、お待ちかね、フリータイムの開始でっす!」
 メイン会場を、屋上ガーデンに直接隣接するパーティー会場に移して、シャレード・ムーンが宣言した。
 一斉に、参加者たちが思い思いの場所やテーブルやお目当ての相手の所へとむかう。
 
「よし、開始していいんだな。というわけで、ダークスカルよ、今こそ骨合体を見せるのだっ!」
「ククク、いいだろう。さあ、俺様と合体するのは……。おおうっ、あれは……。ムムッ、俺様の感性にビビッと来たぜえっ!」
 ドクター・ハデスに命令されたダーク・スカルの眼窩が、周囲を物色するようにキョロキョロとむけられた。そこに、第六式・シュネーシュツルムの姿が目に留まる。
「ドイツもコイツも凡庸ネ。オレ様の眼孔にかなうヤツは……。アイツ……、デキル!!」
 同様に合体の相手を探していた第六式・シュネーシュツルムの視線がダーク・スカルと交差した。
 互いに熱い思いが無言で飛び交う。
 ――いくか?
 ――いくしかないのか?
「骨合体!!」
 あうんの呼吸で、第六式・シュネーシュツルムとダーク・スカルが叫んだ。目映い光と共に、第六式・シュネーシュツルムの頭にダーク・スカルがかぶりつく。
『ケケケッ、機晶合体なんてもう古い。時代は骨合体だぜえっ!』
 まるで被り物のようにダーク・スカルを被った第六式・シュネーシュツルムが言った。台詞は一つだが、声は二人の物が重なっていて、微妙に聞きづらい。
 
「おおっと、早くもツーショットが成立してるよ。早い、早いねー」
 ちゃっかりと司会席に陣どってしまったティア・ユースティが、その光景を見てマイクで叫んだ。
「こ、これが合コンなんですの……」
「よく分からないけれど、なんだか凄いでございます」
 初めて見る合コンに、観客席のユーリカ・アスゲージとアルティア・シールアムが唖然とした。
「いや、あれは合コンとは違うと思うよ」
 説明する言葉に詰まりながら、非不未予異無亡病近遠が否定した。このまま勘違いされては、たまらない。
「大丈夫です。あれが観客席になだれ込んできたら、ばらばらにしてやります」
「そこまでしなくていいから……」
 ダーク・スカルと第六式・シュネーシュツルムをあからさまに敵として認識したイグナ・スプリントを、非不未予異無亡病近遠があわてて押さえる。こんな所で抜刀されたら大騒ぎだ。
「とにかく、もっとまともなカップルがでてきてくれないと……」
 パートナーたちの情操教育のためにも、そう願う非不未予異無亡病近遠であった。
 
    ★    ★    ★
 
「皆様に楽しんでいただくために、カレーを用意してありマース。どんどん運んでくだサーイ」
 用意周到にカレーを持ち込んだアーサー・レイスが、日堂真宵に言った。
「なんで、あんたの命令なんか……」
「オー、何を言っていますカー。我が輩は参加者デース。スタッフなら、ちゃんと御奉仕なサーイ」
 冗談じゃないと言い返そうとする日堂真宵に、ここぞとばかりにアーサー・レイスが言った。
「何をしているか、早く陛下に食べ物をもてい!」
 日堂真宵がぐずっているせいで、各テーブルへの配膳が遅れ、織田信長がちょっと声を荒げた。
「スタッフ、急ぎなさい」
 シャレード・ムーンが、小声でスタッフに指示を出す。
「は、はい、ただいまー。喜んでー」
 あわてて、日堂真宵がカレーやらお菓子をあわただしく運んでいった。あまりあわてたので、少し目が回る。
「あっ、まよちゃんだ。スタッフ、頑張ってるなあ。ガンバだよ、まよちゃん、グッドラック!」
 そんな日堂真宵の姿を見かけた立川るるが、サムズアップをしてエールを送った。
「な、何!? わたくしに対する挑発!? どうせ、わたくしは参加できなかったわよ!」
 ぼんやりする頭で、立川るるが立てた親指が下をむいていると勘違いした日堂真宵が、敵意を必死に押さえながら営業スマイルでカレーを運んでいった。
「カレーですよー」
 パビモンたちのテーブルに、アーサー・レイスの謎カレーを運ぶと、日堂真宵が給仕のおばさんよろしく言った。
 パビモンのくせに、生意気にも合コンに参加するとは。アーサー・レイスのカレーにあたってしまえと心の中で唱え続ける。
 だいたい、アーサー・レイスも、綺麗に玉砕してくれればすっきりするのに。
「わーい、カレーだミラ」
 パビモン・ミラボーが、喜んで謎カレーを口にする。アーサー・レイスがあたりと称して少数混ぜていた特性謎カレーである。ルーに、どんな謎物質が混ぜ込まれているかは、知らない方がその後の人生幸せという代物であった。だが、普通の人であればその場で悶絶しそうな謎カレーも、存在自体が謎生物であるパビモンたちには大した問題ではないらしく、美味しそうに食べていく。
「菓子でございます」
「うむ、大儀であった」
 マカロンを載せた皿を持った紫月 唯斗(しづき・ゆいと)が、安徳天皇のテーブルに陣どった織田信長にお菓子を差し出した。
 裏方の黒子に徹するために、忍び装束を着て音もなく現れてお菓子をサーブしていく。
「ちょっと、こっち、もうお菓子ないわよ!」
 リリ・スノーウォーカーが、紫月唯斗を呼びつけた。
「まったく、お金持ちのボンボンをたらし込めると思ったのに、案の定、貧乏くさい者しかいないのだ。こうなったら、食べるだけ食べて元をとるしかないのだよ」
 なんだかあてが外れたリリ・スノーウォーカーがやけ食いしているテーブルに、紫月唯斗が急いでお菓子を運んでいった。
これ、おいしーよー
 同じテーブルにはノーン・クリスタリアとマリエル・デカトリースもいるため、お菓子の消費が異常に早い。みんな、完全に色気よりも食い気である。
「あっ、金持ち発見なのだ」
 ノーン・クリスタリアにくっついている御神楽舞花をみて、リリ・スノーウォーカーが、瞬間目を輝かせた。とはいえ、相手も女性である。
「私自身は、それほどお金持ちというわけでは……」
 全盛期の御神楽環菜とどうしても比べてしまって、御神楽舞花がつぶやいた。その言葉に、リリ・スノーウォーカーが陰で小さく舌打ちすると、八つ当たりするように紫月唯斗の持ってきたマカロンにかぶりついた。
「そんなにお金がほしければ、競竜なんかいいかもしれないわよ」
 たまに小銭を稼ぐために通っている競竜を引き合いにだして、御神楽舞花が言った。そうはいっても、実際に儲かるかはそれこそ運と度胸と判断力だ。
「ギャンブルはねえ……」
 自信の運と照らし合わせて、リリ・スノーウォーカーが小さく溜め息をついた。
「あ、御神楽舞花さん、立川るるです。よろしくお願いします」
 御神楽舞花を見つけた立川るるが、そう言ってお手製の名刺を手渡した。
「ええっと、これは……」
「御家族の方と、鉄道会社の人事の方によろしくお伝えください。あ、採用の連絡はそこのアドレスにお願いいたします。それでは〜♪」
「は、はあ」
 完璧に会社訪問モードの立川るるが、お辞儀をしてから他のテーブルへとむかう。戸惑いつつ、それを見送る御神楽舞花であった。