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砂上楼閣 第二部 【後編】

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砂上楼閣 第二部 【後編】

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「狼さんが、アーダルヴェルトさんの匂い、みつけたって!」
ビーストマスターのファル・サラーム(ふぁる・さらーむ)は、
狼を使役してアーダルヴェルトの居場所を探っていたが、痕跡を発見して報告する。
隠し通路を通り抜けた一行は、ジャルディニエとアーダルヴェルトのいる部屋に到着した。
大きなホールのような場所、
ジャルディニエが真ん中に立ち、隅にアーダルヴェルトがうずくまっている。

ヴィナ・アーダベルト(びな・あーだべると)は、壁を背に、
他の者達がジャルディニエを引きつけているうちに、
アーダルヴェルトに近づこうとする。
「ははははは!
 まったく、私の庭に自分から入り込んでくる愚か者ばかりとみえる!
 さあ、紅い薔薇を咲かせるがいい!」
ジャルディニエは、一行の前に人形と幽鬼を進ませる。
(やはりアーダルヴェルト卿は怪我をされているか……。
 他に倒れてる人もいる!?
 どういうことだろう)
ヴィナは、雷霆 リナリエッタ(らいてい・りなりえった)桜田門 凱(さくらだもん・がい)達を発見する。

「テメェだけは……倒しても『悪い』と思わないだろうぜ。
 何故なら、俺にとってテメェは悪そのものだからだ!」
五条 武(ごじょう・たける)は、ジャルディニエの前に進み出る。
「テメェの実験で、
 俺は異形の身体を持つことになっちまった。
 『改造人間パラミアント』として、身体が変質してしまったんだ!」
「何を言っている。
 私は貴様には神子の血族の血を輸血しただけだと言っただろう。
 そんなおかしなことはしていない」
「黙れ! じゃあ、他に何が原因だっていうんだ!」
武は、ジャルディニエの言葉は聞かない。
「望んだワケじゃねぇが……この力、振るわせてもらうぜ。 変身!」
蟻の改造人間「パラミアント」が姿を現す。
改造人間としての力は、武にとって、劣等感であり、仲間や自身の夢のために振るう能力でもあった。
「わかったぞ、貴様はその後、別の鏖殺寺院メンバーの実験体として……!」
ジャルディニエは、パラミアントへの変身を見て驚く。
「なんだと!?
 じゃあ、他にも俺の身体をいじくった奴がいるっていうのか!?」
「神子の血族の血でそのような昆虫のような姿になるはずがないだろう」
武は、ジャルディニエを倒すことで、気持ちの整理をつけたいと考えていたが、
パラミアントへの改造手術を行った者は別に存在するというのである。

獅子小隊メンバーのルース・メルヴィン(るーす・めるう゛ぃん)は、
ジャルディニエが武に気を取られている隙に、
パワードレーザーを構え、狙撃しようとする。
(副官のイリーナにお願いされたら頑張るしかないでしょ。美人のお願いは断れない。
 ……って思ってたのに、
 薔薇学生は男ばっかりだし……)
ルースは、内心の怒りを力に戦闘に集中する。
ジャルディニエは、人形を盾にして、ルースの射撃を防ぐ。
「馬鹿共の愚行で我ら誇り高き獅子に一瞬でも掛けられた嫌疑の怨嗟も含め!
 戦果で高らかに事件の幕を引くわ!」
ルースの支援を受けつつ、ルカルカ・ルー(るかるか・るー)は、ジャルディニエに挑む。
「愚かな地球人め。
 貴様のパートナーの力、人工神子の器となるにふさわしいかもしれぬな」
「貴方の思想なんてどうでもいいの」
太刀を振り下ろしながら、ルカルカは言う。
「ただ、くだらない理由で奪われた「命」と、
 私の教導団員としての「誇り」や薔薇の友人との「絆」に対して、
 貴方の策謀に乗せられた事、愚鈍蒙昧な連中が付けようとした傷の代価は、安くないと知りなさい」
ダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)は、指揮を行い、
ルカルカがジャルディニエを攻撃する隙を作ろうとする。
「神話の時代から裁きは雷で行使されるのだ」
放電実験により、電撃を放ち、ダリルはルカルカを後ろから襲おうとする人形や幽鬼の動きを止める。
「魔雷の指揮者の力、見せてやろう」
放電実験を連続で放ち、ダリルは冷徹な視線でジャルディニエを見据える。
カルキノス・シュトロエンデ(かるきのす・しゅとろえんで)は、
ネクロマンサーとしての力で、ルカルカを支援したいと願う。
(人の体と龍の心を持つ娘ルカの為に。
 いつもは明るく優しいルカ。
 だが今は、逆鱗に触れられた俺達龍族のようだ。
 人でもある彼女は、その中でも炎の激しさと水の冷静さを持ち、奴一点へ技も心も絞り込めるのだろう。
 俺はルカの中に「同族」を感じた。
 だから、全力で奴を攻撃しルカを援護する。
 人族の体と龍族の魂を持つ同族――仲間――の為に。
 俺は死者は見慣れてるし、臆さねぇ。
 「光の為に在る闇」が居てもいいだろ)
ファイアストームで人形を焼きながら、カルキノスは言う。
「人間は火葬なんだってな。せめて俺が、火葬で人として逝かせてやる」
夏侯 淵(かこう・えん)は、ヒロイックアサルト「疾風」で、
ルカルカの隣で両手の武器をジャルディニエに振るい続ける。
(彼女は「白兵戦闘の達人」だと思う。
 剣の強さや危険を熟知した上で使うべき時と相手にのみ使う、良き武人だともな。
 故に力を貸す)
「不相応な野望は、灰燼と帰すのが必然だ」
夏侯淵は、ダリルがジャルディニエの利き手や頭部を狙撃し、
ルカルカがとどめをさせるよう、足止めを狙う。
エース・ラグランツ(えーす・らぐらんつ)も、戦友ルカルカを支援するため奮戦する。
ヒールやリカバリが、ルカルカ達の傷を癒す。
(タシガン領主が寺院と密約し、
 体よく利用された事を政治的見地からも公に残しては駄目だ。
 俺達がジャルディニエをひきつけている間に、
 薔薇学の皆が領主を無事に救出してくれる事を信じている。
 俺は後の憂いとなる事を完全に潰しておきたい。
 その為には、領主とジャルディニエの密約を公的記録に残さないようにするべき。
 混乱を回避する為、領主はこの件に関して沈黙するだろう。
 後は、もう片方がそれを語れないようにすれば良い)
「闇の存在は、静かに闇に還ってもらおうじゃないか」
エースは、薔薇学の教導団への不信感も、
自分が「薔薇学の代表」として教導団に協力することで、
払拭したいと考えていた。
「すべてが終わった後、「団と薔薇として握手をする」ためにもなっ」
クマラ カールッティケーヤ(くまら・かーるってぃけーや)は、
驚きの歌で、仲間のSPを回復し続ける。
「オイラの歌で、カニも元気出してよね」
友人カルキノスの事をカニと呼んではばからないクマラは、
氷術で人形の動きを止めつつ言う。
「カニじゃねえ」
「だってカニじゃん」
軽口を叩いていても、二人は集中を乱さない。
むしろ、背中をあずけられる仲間達がいることが心強い。
メシエ・ヒューヴェリアル(めしえ・ひゅーう゛ぇりある)も、驚きの歌でSPを回復し、
ジャルディニエへの熾烈な攻撃を止まさせないようにする。
(タシガンの民として、
 領主に対しジャルディニエがした事を許すわけにはいかないのでね)
「生命をもって贖ってもらおうじゃないか」
(それに、長寿種族は急激な変化を容認しづらいのだよ。
 アーダルヴェルト卿から別の者に領主が変わるなとど、
 領民にとっては大混乱必至、社会秩序の崩壊を意味する事になる。
 これは何としても阻止しなくてはね)
タシガンの吸血鬼として、メシエは思う。
エオリア・リュケイオン(えおりあ・りゅけいおん)は、
怒りの歌でさらにルカルカ達の攻撃力強化をする。
(謙信さんは領主の事が心配でしょう。
 直接救出することより、後々の憂いを断つ方が
 「社会的・政治的に領主を護る」事が出来るのではないかとエースは考えています。
 単に生命を助けるだけでは本当に救出できたとは言えない、と。
 友人の憂いを断つためにも。
 僕はそれに協力したい)
エオリアは、謙信がアーダルヴェルト卿に近づいていくのを横目に考える。
「さっさと死ねよ!!
 ジャルディニエとか言いづらいんだよ!!」
ルースは、射線に注意しつつ、
ジャルディニエの腕や脚を狙いながら叫ぶ。

ルカルカ達がジャルディニエと人形と幽鬼を一手に引き受けている隙に、
一行はアーダルヴェルトに近づいていく。