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東西対抗『逃亡なう』

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東西対抗『逃亡なう』

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□ プロローグ □

 良く晴れ渡った、初夏のある日。青々とした葉桜の茂る桜の森公園は、大勢の人で賑わっていた。
 入り口に立った黒いTシャツ姿の青年が、「東西対抗逃亡なう 参加者のかたはこちら」と書かれた画用紙をひらひらと振っている。
 小学生くらいの子どもから若者まで、様々な年齢の参加者達が、その画用紙に導かれるように公園の中央へと集まっていく。
 桜の森公園中央エリアは、立派な桜の大木が聳え立つそう広くない広場だ。
 その大木の足元には「本部」とでかでかと書かれた看板が立ち、よく学校の運動会などで使われる白いテントが張られている。
 さらにその隣には、同じテントがもう一つ立っている。ただしこちらには、「ろうや」と禍々しい文字で書かれた看板が立っており、その看板に相応しく、鉄格子を模した飾り付けがなされている……が、予算の関係だろうか、飾り付けはペンキを塗った段ボール、それも正面一面のみだ。
 
「宝箱の設置は終わった? 追加のオニー、配置について! あっ、オニはサングラス忘れないで!」

 その中心で、入り口に立っていた青年と同じTシャツを着た、ポニーテールの少女……蒼空学園レクリエーション研究会会長、ノリコ・ラージャードが忙しそうに走り回っている。
 彼女とおそろいのTシャツを着ているレクリエーション研究会の面々もまた、最後の準備で大忙しだ。
「参加者のみなさーん、こちらで受付したら本部テントの回りに集まってー!」
 ノリコが声を張り上げると、集まってきた参加者たちはぞろぞろとその声に従って動き始める。
 ぞろぞろと集まった参加者は、その数実に65名。

「本日はお集まり頂きありがとうございますっ!」

 集まった人々を前に、何処からともなく取りだしたビールケースの上に乗ったノリコが、ぺこりと頭を下げる。
 その足元で、Tシャツ姿のスタッフがマイクアンプの調整をしている。時々、びー、とノイズが入る。
『あーあー、本日は晴天なりー』
 やっと渡されたマイクを右手にマイクテストを簡単に済ませると、ノリコは左手に持ったルールの書かれたわら半紙をひらひらと振った。
『皆さん、ルール用紙とリストバンドは受け取りましたか? リストバンドは参加者と一般のお客さんをオニが見分けるのに使うので外さないでくださいね! では、今から簡単にルールをおさらいします!
 東西対抗戦で、最後までオニから逃げ切った人数の多い方が勝ちです。が! ちょっと、あーんまりにも東西のバランスが悪いのでェ……えーっと、西側の参加者が49人に対して東が16人なんですよねー……東側の方が最後まで逃げ切った時には、一人を二人とカウントしますね! あとの誤差は東チーム、気合いでカバーしてくださいっ!』
 ぶーぶー、と東側の参加者からブーイングが起こるが、ノリコはニッコリ笑顔でスルーし、ふところからサングラスを取り出した。
『オニはこんな感じの黒いサングラスを掛けています。オニへの物理的な攻撃「は」一切禁止です。また、オニも物理的な攻撃「は」行いません! そ・れ・か・ら、告知して有るとおり、ゲーム中には皆さんに試練が降りかかります。クリアしないとオニがどーんと増えますのでお気を付けて。あと、それ以外にも時々オニが増えますので、死ぬ気で最後まで逃げてくださいね。メール受信の準備はよろしいですか? そ・れ・で・は、最後に! 安全に気をつけて、何が起こっても恨みっこ無し、楽しい一日に致しましょう!』
 ルールの説明を終えたノリコがふたたびぺこりとお辞儀をすると、ぱちぱちと拍手が上がる。

『では、五分後よりゲームを開始します。ゲーム開始は一斉メールで告知され、同時にオニが動き出しますのでご注意くださーい!』

 ノリコの声と共に、集まった参加者達は三々五々、思い思いの場所へと散っていった。




■■目次■■

  1  : プロローグ 

  2  : 第一フェーズ

 3〜4 : 試練1

 5〜6 : 第二フェーズ

 7〜8 : 試練2 

  9  : 第三フェーズ

10〜11: 試練3

 12  : 第四フェーズ

 13  : エピローグ