空京

校長室

建国の絆第2部 第1回/全4回

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建国の絆第2部 第1回/全4回
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リアクション


リコ

 作戦に先駆けてクイーン・ヴァンガードのアシュレイ・ビジョルド(あしゅれい・びじょるど)は、ヴァンガード隊を率いる北条真理香(ほうじょう・まりか)に提案した。
「真理香様、蒼空学園内に理子様を守る人間が少なすぎないでしょうか? これでは緊急事態に理子様を守ることが出来ません。
 今ここに集まった有志を軸に、理子様親衛隊を設立したいのです!
 もちろん、これは日本や日本国民を代表する方々を愛しているから行う行為です。権限や報酬など一切必要ありません。この心に燃える日本人としての誇りこそが、唯一無二の糧です」
 アシュレイの熱意溢れる様子に、真理香は満足そうだ。
「理子様親衛隊……良いアイディアですわ。それに同じ学生達が学友である理子様をお守りする絵は美しい。決めました。理子様親衛隊を発足させましょう。ヴィルヘルムには後ほど、私から説明しておきます」
 提案が認められたアシュレイは喜び、さらに進言した。
「その理子様親衛隊のリーダーなのですが、他者との交渉も必要でしょうから新日章会のメンバーに加えてもらえないでしょうか」
 真理香は「そうですわねえ」と考えこむ。
「一人、親衛隊のリーダーに推したい人がいるんです。新日章会入りを目指している前原 拓海(まえばら・たくみ)さんは、それに相応しい行動をこれまでもしてきていると思います」
 これには、そばで話を聞いていた拓海本人が驚く。
「お、俺?!」
 真理香は彼を見る。
「確かに、あなたは寝所での戦いでも頭角を現していましたわね。
 それに同じ隊員から推薦があるなど、人望がある点もリーダーとして重要な資質。
 では前原さん、あなたを新日章会のメンバーと認め、理子様親衛隊の暫定隊長として任命します。今回の働きやヴァンガード隊内の調整で、正式なリーダーとしますから、しっかりと理子様をお守りしなさい」
「はいっ、命がけで任務にあたり、理子様を守り通してみせます!」
 拓海は驚きと高揚の中、返答した。
 アシュレイが拍手で友人を祝うと、周囲のヴァンガード隊員達も祝福の拍手を送る。


 蒼空学園生とクイーン・ヴァンガードを中心とする部隊は、高根沢 理子(たかねざわ・りこ)と新日章会とともに、ジークリンデ・ウェルザング(じーくりんで・うぇるざんぐ)偽アズールが捕らわれた場所を探して、ナラカ城内をさまよっていた。
 蒼空学園生の葛葉 翔(くずのは・しょう)は、ジークリンデ救出に向かうリコの護衛を全力で行うことを宣言する。
「理子には指一本触れさせないぜ」
(環菜校長は破壊者を召還させるくらい「なら」と言った。
 つまり召還させなければ助けるのは問題ないって事だよな)
 翔は、クイーン・ヴァンガードの隊員であったが、クイーン・ヴァンガードとしてというよりも、友人として、どんなことがあろうともリコを守る決意をしていた。
翔のパートナーのアリア・フォンブラウン(ありあ・ふぉんぶらうん)は、その様子を見て言う。
「なんか、翔くん。クイーン・ヴァンガードというより理子ヴァンガードって感じだね」
「おお! 今日の俺は『理子の前衛』だぜ!」
「ワタシも、理子さんの盾になれるようがんばるよ」
アリアも小柄な身体に似合わない大きさのタワーシールドを掲げてみせる。
「えー、翔やアリアにまでそんなこと言われるの、なんだか恥かしいなあ」
リコが苦笑する。
ただでさえ、「理子様親衛隊」が結成されてしまった直後なのだ。

半開きになったリコの口に、ドーナツが押し込まれる。
「わぷっ!?」
小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)が、空京のミスドのドーナツの箱を笑顔で持っていた。
「スイーツは女の子にとって元気の源だもんね」
美羽は、自分もドーナツにかぶりついた。
リコは目を白黒させていたが、美羽の続けた言葉に表情を変える。
「後悔は後からでもできるけど、ジークリンデは今しか助けられないんだよ」
「うん。……わかってる」
美羽は、よきライバルとして、リコを奮い立たせようとしているのだった。

前原 拓海(まえばら・たくみ)は、「理子様親衛隊」の暫定隊長として宣言する。
「幕末の志士も旧日本兵も俺ぐらいの歳には命を懸けて戦った……。
なればこそ、この前原! 特攻せよと命ぜられるならば、喜んでお役に立ってみせます!」
(しまった、今の理子様には重過ぎる言葉だったろうか……。
砕音の前で理子様が冷静でおられればよいのだが)
拓海は、言ってすぐ、内心後悔していた。
パートナーのフィオナ・ストークス(ふぃおな・すとーくす)が、明るい調子で言う。
「拓海様、ますます張り切っておられますね。
足元をすくわれないようにご注意下さいませ〜☆」
その口調があまりにも場違いなほわほわしたものだったので、その場が静まり返ってしまう。
リコが吹き出して、その静寂を破った。
「あはははは、あっはっはっはっはっはっは!!」
「り、理子!?」
「理子さん!?」
「理子が壊れたー!?」
「り、理子様ー!?」
翔とアリア、美羽、拓海が、身体を折り曲げて笑い続ける理子を取り囲む。
「ひー、く、くるしー……。
あ、ごめんごめん! 心配かけちゃったよね!
あたしは大丈夫だよ! みんな、どうもありがとう!
絶対、ジークリンデを助けるんだから!」
「よし、それでこそ理子だぜ!」
いつもの元気を取り戻した様子に、翔も笑顔で答える。
「うんっ! 悩んでる暇なんてないよ、リコ。
とにかく全力でぶつかったら、きっと何とかなるって!」
美羽が、「エイエイオー」のポーズを取る。
「おお、それでこそ、わが祖国、日本が誇る理子様……いたっ!?」
「あたしはあたしなの! そーゆーのは関係ないのっ!
 ……でも、ありがとね」
拓海をぶん殴るリコであったが、感謝の言葉を伝える。
こうして、一行は、リコを勇気づけ、さらに城の奥へと進んでいくのであった。