リアクション
●そして……
カヤノとレライア、そして『アイシクルリング』を巡る冒険は、ここに幕を下ろした。
イナテミスの住民に謝罪したカヤノとレライアを、住民たちは概ね受け入れた。
魔物に襲われ、氷漬けにされたことは住民の心に今も残っていたものの、一人の犠牲者も出なかったことが――それはもちろん、『アインスト』の功績でもあったのだが――情状酌量の余地として認められた結果であった。
「ごめんなさいっ! カヤノちゃんとレライアちゃんは、リンネちゃんが面倒見ますから!」
「なっ!? あ、あんたに面倒見てもらわなくたって――」
「カヤノ! ……皆さん、今回の件は本当に申し訳ございませんでした」
「……まあ、ええじゃろ。姿を消していた者たちも無事に戻ってきた。おたくのとこの校長には、便宜も図ってもらった。ワシらはこれ以上追求せんよ。……次にこのようなことがあれば、わかっておろうな?」
町長の言葉を、リンネ、そしてカヤノとレライアは重く受け止める。
「? あなたは何を言っているのですかぁ? 私は何もしてませぇん」
イルミンスールに戻ったリンネは、エリザベートにイナテミスでの出来事を話し、手を貸してくれたことに感謝する。それをエリザベートはとぼけるように答えて、リンネに言い放つ。
「あなたがあの二人の面倒を見るといったのですからぁ、ちゃんとやってくださいねぇ。……ちび、後は任せるですぅ」
「はい、お母さん♪ ……えっとですね、リンネさんの近くにできた氷の森は、そのまま残しておきました。カヤノさんとレライアさんはそこに住んでくださいね。何かご希望があれば、出来る限りお受けします」
「……それは、いいんだけど。どうして、あんたもそんなにあたいたちに優しいの? あんたは全然関係ないんじゃないの?」
カヤノの問いに、ミーミルは笑顔を浮かべて答える。
「カヤノさんとレライアさんは、もうイルミンスールの一員ですから。イルミンスールを守護する者として、当然のことですよ。……私個人としては、お二人とお友達になれたら、嬉しいです♪」
ミーミルがかしこまって、三対の羽根を羽ばたかせて飛び去っていくのを、カヤノが呆れた表情で見遣る。
「……ホント、バカばっかりね。……ま、あたいもそうなんだけど、ね」
「もう、カヤノったら」
カヤノとレライアが微笑み合う。
今ここに、イルミンスールに新たな仲間が加わった瞬間であった。
カイン・ハルティスが創設した調査隊『アインスト』は、カイン自身がそのリーダー権をリンネに譲ると言い出した。
「リンネちゃんでいいんですか?」
「ああ、現場に立って直接指導するには、君のような人材の方が適任だ。私は後方から君たちの活動を支援させてもらうよ」
アインストのリーダーであるカインが決めたことに、異論を唱えるものはなかった。
「じゃあ、リーダー、やっちゃいます! あ、先生、この『アインスト』ってどういう意味なんですか? 『アイン』って『1』って意味ですよね? リンネちゃん、『2』と『3』は知ってるんですよ! 何かカッコいいから!」
「はは……だから『ツヴァイ』に『ドライ』なんだね。……ああ、最初は『みんなが一番』という意味で『アレ エーアスト』とつけたんだけど、どう縮めても読み辛くてね。勝手ながら変えてしまったんだ。……君はこの調査隊の新リーダーだ、改名することもできるけど――」
「いいえ、これでいいです! みんなが一番、アインスト! みんな一緒に、魔法学校を盛り上げていこうよっ!」
リンネが人差し指を突き出して、高らかに宣言する。
リンネを筆頭にして、『みんなが一番を目指す調査隊』『アインスト』が活動を始めるのであった。
「はぁ、今日も疲れたよ〜。モップス、今日のご飯は何かな〜?」
家に着いたリンネが扉を開ければ。
「リンネ、お帰り〜! モップスの作るご飯、美味しいね〜! あたい、毎日でも来ちゃおうかな!」
「か、カヤノ、いくらなんでもリンネさんに失礼だわ」
リビングには既にカヤノとレライアが先客として、モップスの作ったご飯に手をつけていた。
「も〜、モップスのご飯が美味しいのは分かるけど、せめてリンネちゃんが帰ってくるまで待っててよ〜」
「ごめんなんだな。リンネの分は残してあるから、今温めるんだな」
モップスが、すっかり様になったエプロン姿で、食事の準備を再開する。
「うふふ、いつも賑やかですね、ここは」
「あ、セリシアちゃんにサティナちゃん。来てたんですね」
背後から、家事を手伝っていたセリシアがやって来る。
『お主にちゃん付けされるのも、まあ、不思議な気分だが、意外と悪くないの。……おお、そうだ。我とセリシアもお主の家の近くに居を構えたでの。同じ精霊同士、仲良くするのもよきことかなと思うての』
サティナの声が響き、テーブルに載せられた食事を頬張りながら、リンネが頷く。
「そうなの? うーん、リンネちゃんは別に構わないけど」
「あたいも全然! あ、でも、レラを困らせたらダメだからね!」
「大丈夫よ、カヤノ。セリシアさん、サティナさん、これからよろしくお願いしますね」
「はい、こちらこそ、よろしくお願いします」
セリシアとレライアが手を取り合う、その手にはそれぞれ『シルフィーリング』と『アイシクルリング』が嵌められていた。
様々な出来事があった。苦難もあった。
でも、今はこうして笑い合えている。
この先々、きっとたくさんの苦難が待ち構えているかもしれない。
それでも、ここにいる人たちが、そして志を同じくする魔法学校の生徒たちがいる。
そんな彼らのために。
今よりもうちょっとだけ、頑張れたらいいよね?
「よーし! 明日も張り切っていこー!」
「「「「おーーー!!」」」」
――『氷雪を融かす人の焔』 完――
『こおりの なかにいる』
……自戒をこめて氷の中からお届けします、【まるきゅーを継ぐ者】猫宮・烈です。
いやはや、自分でもバカなリアクションだと思います。
レライアを封印するか、一緒にいさせるか悩んで、取ったのがこの案です。
非常に微妙な気がします。
やっぱり『リアクション』じゃない気がします。
もうちょっと落ち着いて書かないといけないです。
ノリはいいかもしれませんが、それだけじゃ飽きられちゃいます。
……まあまあ、せっかくの最終回なのにこの調子ではアレなので(氷の中から飛び出す
今回で、リンネは調査隊『アインスト』の現場リーダーに昇格しました。
これから彼女には、イルミンスールに起こる様々な事件を調査してもらうことになるでしょう。
そして、イルミンスールに集まった精霊たち。そして、その手に輝くリング。
女王の遺産と疑われしこれらは、何故今になって現れたのか? それを手にした者たちの運命は?
その謎は、『イルミンスールの冒険Part2〜精霊編〜』で明かされる……のか?
最後に、ただ一言。
……精進します!!
それでは、次の機会にまた、よろしくお願いいたします。
……一文字二文字変えるだけで、印象は随分と変わるものですね?