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パンツ四天王は誰だ?

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パンツ四天王は誰だ?

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「うぎゃあ」
 頭のモヒカンごとパンツを剥ぎ取られてPモヒカンが悶絶しました。全てを失った頭はツルツルです。
「ふっ、むなしいわね。雑魚は狩ってもしょせんは雑魚、四天王はどこにいるの?」
 パンツの中に余分な物は不要とばかりに、リカイン・フェルマータ(りかいん・ふぇるまーた)がPモヒカンたちの被っているパンツを次々に狩っていきます。まだ、Pモヒカンたちが目立つ頭にパンツを被っているからいいようなものの、もし下にパンツを穿いていたらそれは男にとって恐ろしいことになりそうです。あっ、とりあえず、Pモヒカンたちは下は褌ですので、微妙にリカイン・フェルマータの注意を逸らすことに成功しているようです。
「ひー、怖いよー」
 響き渡る悲鳴にすっかりぶるった片野 ももか(かたの・ももか)は、物陰に隠れてPモヒカンたちをやり過ごそうとしていました。
「そのパンツ、珍しい物と見た。どりゃー、よこせー」
 不意にロイ・グラードに後ろから襲われて、片野ももかがあわてて走りだしました。
 穿いていた毛糸のパンツは、あっさりとロイ・グラードにズリ下ろされて取られてしまっています。
「だ、大丈夫だもん。私には、まだずっと穿いているこのパンツがあるんだから……」
 そう自分に言い聞かせる片野ももかですが、いったいいつから穿き続けているのでしょうか。一応綺麗にしているようですが、パンツ自体はすでに穿き古されたせいなのか所々穴が開いたぼろぼろの物です。はたして、これはセクシーと言っていい物かどうか。無意味にエロくなっています。
「これでは、まだ足りない。ごらあ、そっちもよこせー」
 もう一枚のパンツに狙いを定めたロイ・グラードが、紫と白の毛糸パンツを握りしめたまま片野ももかを追いかけていきます。
「あの狂気、狩るにふさわしいわ」
 それを見たリカイン・フェルマータも二人を追いかけていきました。
「ありゃ、なんかやばそうだな」
 適当にロイ・グラードを追いかけていた常闇の外套がちょっと焦りました。
「つかまえたぜ」
「嫌ー」
 ついに追いついたロイ・グラードが、片野ももかのパンツに手をかけます。
 びりり……。
 すでに耐久性に問題のあるパンツが破けてしまいました。
「あーん」
「ついに究極の食材ゲットだぜ」
 ぺたんこ座りをして泣く片野ももかの横で、パンツの香りを嗅ぎながらロイ・グラードが勝ち誇りました。トリュフか何かと勘違いでもしているのでしょうか。
「もらった!」
 その一瞬の隙を、リカイン・フェルマータが突きます。ロイ・グラードの股間がピンチです。
「おっと!」
 間一髪、常闇の外套が魔鎧化して、リカイン・フェルマータの攻撃を受けとめました。魔鎧とは言え、これはかなり痛そうです。けれども、このおかげでロイ・グラードは外見性別の変更願を出さないでもすんだのでした。
「何をしやがる!」
 ロイ・グラードが反撃します。待っていたとばかりに、リカイン・フェルマータがカウンターを仕掛けました……が、攻撃が素通りしてバランスを崩します。常闇の外套の力を使えるようになったロイ・グラードのミラージュでした。
 倒れ込むリカイン・フェルマータに手をのばすと、ロイ・グラードがパンツをつかみます。つんのめったリカイン・フェルマータからするりとパンツが脱げました。
「さらにゲットだぜ」
「それがどうしたっていうのよ!」
 いったんプリケツを晒しつつも素早く立ちあがったリカイン・フェルマータが、挑戦的にロイ・グラードに言いました。どうやら興奮しすぎて、自分の格好を認識もできなくなっているようですが……、なんだか、スカートの後ろがめくりあがってふさふさ縞々の尻尾が見えているような気がするのは気のせいでしょうか。
「ふははははは、そろそろ食事の時間だぜ」
 そう言うと、ロイ・グラードが口笛を吹きました。そこへ、ペットのレッサーワイバーンが舞い降りてきます。その足をつかむと、ロイ・グラードは易々とその場から逃げて行きました。
「待ちなさい!」
「あーん、私のパンツ返してくださーい」
 あわてて、リカイン・フェルマータと片野ももかがその後を追いかけます。
 公園近くでワイバーンから降りると、ロイ・グラードは周囲に落ちていたパンツもついでに拾い集めて、レジャーシートを広げました。
「うーん、すばらしい」
 戦利品のパンツを頬ですりすりしてからロイ・グラードが恍惚とした表情で言いました。
「このすばらしさをさらに堪能するには……食べるしかないだろうが!!」
 ナイフとフォークを手にすると、ロイ・グラードが戦利品のパンツをもしゃもしゃと食べ始めました。
「うむ、この味は……。やはり、パンツは腐りかけが一番か?」
 片野ももかのパンツをもぐもぐしながら、ロイ・グラードが言いました。ゴックンとそのままパンツを呑み込もうとしますが……。
「う、うがうぐっ……。げほげほげほげほ!」
 どうやら喉に詰まったようです。激しく転げ回って苦しみます。その拍子に、ごすんと公園の庭石に激しく頭をぶつけました。
「おい、ロイ、大丈夫か」
 あわてて人の姿に戻った常闇の外套が、ロイ・グラードを助け起こしました。
「ううっ、ヤミーか。俺はいったい……」
 普段の自分に戻ったらしく、言葉少なにロイ・グラードが常闇の外套に訊ねました。頭からはだらだらと血が滴り落ちています。
「げほげほ。なんでこんな物が口から……」
 パンツを吐き出しながら、ロイ・グラードが苦しそうに言いました。
「さっきまで、楽しそうにそれを食ってんだぜ」
 常闇の外套の言葉に、そんなはずはないとロイ・グラードが軽くにらみ返しました。
 そのときです。
 周囲のパンツの様子がどこか変です。勝手に動きだすと、ロイ・グラードを取り囲んでキシャーっと牙をむきました。
「そこまでだよ。おとなしく、ボクの式神に倒されてよね」
 落ちていたパンツを次々に式神としたカレン・クレスティアが、ロイ・グラードたちに言いました。
「待て、俺は関係ないぜ」
 あわてて他人のふりをする常闇の外套に、うんうんとロイ・グラードもうなずきました。はっきり言ってさっきまでの記憶がないので、どこか他人事です。
「やっと追いついた」
 そこへ、リカイン・フェルマータと片野ももかも追いついてきました。
「ああ、私のパンツが……」
 あちこち刻まれたうえにロイ・グラードの唾液でべとべとになったパンツを片野ももかが拾いあげようと手をのばしましたが、いきなりあちこちに開いた穴から一斉に牙をかみ合わせるカチカチという音が響いてきてあわてて手を引っ込めました。
「嫌ー、怖いー」
 あわてて片野ももかが逃げて行きます。
「まあ、すばらしいパンツじゃない。それなら、綺麗に噛み切れそうだわ」
 ちょっとうっとりしたように、リカイン・フェルマータが言いました。
 何をという顔で、ちょっとドン引いたカレン・クレスティアと常闇の外套が、リカイン・フェルマータの方を振り返りました。思わず、式神たちの制御が狂って、同士討ちを始めます。
「では、また」
 その一瞬の隙を突いて、ロイ・グラードが高々と手を挙げました。再び現れたレッサーワイバーンにつかまると、ロイ・グラードはそのまま逃げ去っていきました。