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パンツ四天王は誰だ?

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パンツ四天王は誰だ?

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「ふっ、パンツ四天王などと言ってもしょせんこの程度。もうお前以外はほとんどちゅどーんされたわよ!」
 パンツ一丁で逃げ回るクド・ストレイフを追い詰めて、伏見 明子(ふしみ・めいこ)が勝ち誇りました。
「何を言う? しょせん、あんたたちもぉ、パンツ番長の予備軍なのだぁ」
「なんて言いがかりを、殺す!」
 予想外の言い訳に、伏見明子が完全にキレました。そうでなくても、以前からパンツパンツ騒ぐ奴らは多いのです。それらに、一度辛酸をなめさせられたという黒歴史が……。
「ふふっ、俺のこのすばらしい姿を見て、何も思わないのかぁい。ほらほら、俺はパンツしか穿いていないぞぉ。パンツを見ないで、俺をどうにかできるのかなぁ」
「ひ、卑怯な!」
 パンツを見たならお友達という卑猥……いえ、卑怯な論法に、伏見明子がたじろぎました。
「見た以上、見せてもらわねばぁ。隙ありぃ!」
「しまったあ……」
 クド・ストレイフとの不毛な会話に集中していたために、伏見明子は後ろから忍びよっているPモヒカンに気づいていませんでした。
 隙を突かれて、一気にパンツを引き下ろされてつんのめって倒れます。
「俺は紳士ですからぁ、見せるだけですよぉ。じゃ、またぁ」
 クド・ストレイフが悠々と逃げて行きます。
「ふっ、甘いわね。私だって学習しているのよ。一枚目のパンツはダミーよ。本命は二枚目。はーっはははは、残念だったわ……ねって……なんだかスースー……ひえっ!?」
「甘いな、俺たちだって今日一日で進歩している。パンツ二枚重ねは、他の奴らで経験済みだ。そこから編み出した技、これこそが秘技、『重ねて穿いているパンツでも二枚いっぺんに下ろしちゃえば一枚とおんなじだぜえぃ』だ」
 技名が無駄に長いです。
「おのれー!! みんなやっておしまい!!」
 プリケツをあわてて隠して立ちあがると、伏見明子がヘルハウンドたちに命令しました。
「わんわん♪」
「わんわん♪」
 ふわふわもこもこのヘルハウンドの子犬他の群れが、大挙してPモヒカンたちにじゃれかかり……いえ、襲いかかりました。甘噛みしたところに火を吐いてPモヒカンたちのパンツを灰にしていきます。
「うわあああ、俺のパンツがぁ……!!」
「様を見なさい。でも、本当の恐怖はこれからよ!」
 まだまだ甘いとばかりに、伏見明子が切り札のアナイアレーションを発動させました。なりふり構わず、容赦なく周囲のPモヒカンたちを殲滅していきます。でも、パンツ穿いてません。
 
    ★    ★    ★
 
「お買い物ー、お買い物ー」
 無限大吾と別れて空京でお買い物をしていた廿日 千結(はつか・ちゆ)ですが、どうにも街の様子が変です。みんなパンツパンツと叫んでいます。
「そこの幼女、俺のパンツを見たのだからぁ、おとなしくあんたのパンツも見せなさあい」
 突然、廿日千結の前にパンツ一丁のクド・ストレイフが立ち塞がりました。
「おやおや、846歳の魔女をつかまえて幼女などとはねぇ」
 いや、見た目はどう見ても6歳です。
「残念だねえ。あたいは穿いてないんだよー」
 ニコニコしながら、廿日千結が答えました。そんなパンツなんて物は大昔には流行っていませんでしたから、彼女としては穿いていないのが普通です。まったく、最近の流行というものはよく分かりません。
「なんだとお、穿いてないだとぉ!? あんた、人としてそれはどうなんだぁ!」
 なんだか、凄くひどいことを言われた気がします。
「いいかあぃ、パンツという物は人の命と同じくらいに大切なんだぁ。それを穿かないということは、人を捨ててるにも等しいことなんだよぉ。そうかぁ、あんたは、パンツが買えないんだねぇ。かわいそうにぃ。だったら、俺のこのパンツをあげよう。ちょっと大きいけどぉ、多分大丈夫……」
 そう言うと、クド・ストレイフが自分のパンツを脱ぎ始めました。
「そんなにパンツが好きなのかぁい。食べちゃいたいほどかあい」
 ちょっと自分の周りに冥府の障気を漂いさせながら、廿日千結が言いました。少し怖いです。
「もちろん、パンツは最高だぁ」
「じゃあ、食べられちゃってもいいよねぇ」
 そう言うと、突然クド・ストレイフが持っているパンツがガブリと彼の手に噛みつきました。
「いてててててて」
 あわててふりほどこうとしますができません。ガブリガブリと、どんどんクド・ストレイフの腕を食べていきます。
「こ、これは、噂のキラーパンツ……。うわああああ……」
 パンツに食べられていき、クド・ストレイフがのたうち回って気を失いました。
 あたりはさぞや血の海……でもなんでもありません。廿日千結のその身を蝕む妄執の見せた幻覚でした。
「ふふふふ、パンツがトラウマになるがいい」
 パンツを手に持ったまま倒れているクド・ストレイフのそばで、パンツ穿いてない廿日千結が仁王立ちになって言いました。
 
    ★    ★    ★
 
「ここが悪の巣窟なんだね。突撃魔法少女リリカルあおいがやっつけちゃうんだよ」
 パンツアームを配り続けているドクター・ハデスのところに辿り着いた秋月 葵(あきづき・あおい)が、軽くポーズをとって言いました。
「はははははは、小娘が、何を言うのであるか。行け、パンツァーアーム軍団よ。敵を倒せば、レンタル料は二割引にしておいてやるぞ」
 絶好調のドクター・ハデスが、パンツアームを貸し出したばかりのPモヒカンたちに命令しました。
「待てよ、金取るのかよ、これ」
「聞いてねえぜ。払えるかよ」
 話が違うと、Pモヒカンたちがドクター・ハデスに詰め寄ります。
「今だわ。変身!」
 百合園女学院の制服が虹色の光に溶け、瞬間、秋月葵のすっぽんぽんのシルエットが浮かびあがります。けれども、光の速さで可愛いフリルのついたブラとショーツが秋月葵の身体をつつみました。
「おおっ!!」
 すっぽんぽんには何も反応しなかったPモヒカンたちが、ショーツを見たとたん目の色を変えて野太い歓声をあげて喜びます。
「ちょ、ちょっと、なによ、それ。嫌ー」
 急に恥ずかしくなってしゃがみ込む秋月葵の身体の上で虹色の光がふわりと広がり、魔法少女のコスチュームに替わりました。いきなりしゃがみ込んでしまったのでちょっと着崩れしています。
「あーん、もう!」
 胸元や袖の位置をなおしながら、ツインテールを結ぶリボンのよれっとしたところを引っぱって直します。
「ほら、ミニスカートだぞ。さっさと戦ってくるのだ」
 あわてて、ドクター・ハデスがPモヒカンたちをあおり立てました。
「そうだった。パンツだあ!」
 原点に立ち返ったPモヒカンたちが秋月葵にむかって迫ります。背負っているパンツアームの触手が、四方八方から迫ります。
「そうはいかないんだもん」
 危機一髪、秋月葵が空飛ぶ魔法↑↑で上へ逃げます。スカートの中が丸見えになってしまいますが、背に腹は代えられません。
「おおっ、絶景じゃ!」
 Pモヒカンたちが、一斉に上を見あげました。
「あたしのパンツを見た人は、もれなく、さーちあんどですとろいだよ!!」
 魔法少女戦闘服が光り輝きました。直前まで秋月葵がいた場所から炎が湧き起こって周囲に広がります。
「うわあああ……」
 ちゅどんちゅどーんと、次々にPモヒカンたちがパンツアームの爆発に巻き込まれていきました。
「止めだよ。魔法ステッキ、パンツお洗濯モード」
 秋月葵が魔砲ステッキを構えると、カチャカチャとステッキのパーツが変形して組み変わり、ステッキの周囲に回転する三重の魔法陣が三角柱状に浮かびあがりました。
「イレース!!」
 ステッキの先端から光線が迸ります。
「俺の発明したパンツアームが!!」
 直撃を受けたパンツアームの山が誘爆を起こして次々に吹き飛んでいきました。