First Previous |
5 |
6 |
7 |
8 |
9 |
10 |
11 |
12 |
13 |
14 |
15 |
Next Last
リアクション
轟々と炎が燃え広がっている。ダウンタウンの家が燃え上がり、景色が赤く染まる。
白波 理沙(しらなみ・りさ)は、駆け回っていた。大会の参加者でもあるが、非常事態だ。どこかで倒れた雅羅たちを探しているのだ。
「確か、使い魔のくれたメッセージではこのあたりに……雅羅!」
飛び出した先、広場に倒れた雅羅たちを発見した理沙は慌てて駆け寄った。具合悪げな雅羅と夢悠、瑠兎子を助け起こす。
「う……っ」
うなる雅羅の顔をのぞき込み、理沙が仲間を呼ぶ。
「舞、姫乃、手当を、早く!」
駆け寄ってきた早乙女 姫乃(さおとめ・ひめの)と白波 舞(しらなみ・まい)が、それぞれに治療を施そうとする。
「は、はい。今すぐ……!」
もっとも病状が深刻そうな雅羅に姫乃が手をかざし、解毒の術をかける。真っ白な頬に赤みが差し、苦しげな呼吸が落ち着きはじめた。やがて、雅羅の目がうっすらと開く。
「……これは? 誰が、こんなことを……っ」
周囲の光景に唖然とする雅羅だが、すぐに頭痛がぶり返す。
「まったく、誰の仕業やら……雅羅よ、助けに来たぞ!」
飛び出してきた変熊。前回通りなら銃を向けるところだが、その体にも細かなやけどや擦り傷がついている……いや、服を着ていれば避けられそうなものではあるが。
「君たちも、平気か!?」
「それはこっちのセリフよ。服着なさい!」
がちゃりと銃を向けながら、ヒールの準備をする舞。
「ふっ、どうやら混乱しているようだな」
「こんな状況で混乱を振りまかないでよ!」
炎の中で、理沙も思わず叫ぶ。
と、そのとき、彼らの横合いでがら、と崩れかけた建物が音を立てた。
「……!」
いくつもの銃が一斉に向けられる。崩れ掛けの建物……に繋がっていた地下道から姿を現したサルヴァトーレは手を上げた。
「……失敬、歓談の邪魔だったか?」
「あなた、ジャンゴの仲間の……!」
驚く雅羅に、サルヴァトーレは頷いた。
「正確には協力関係だ。そうそう、雅羅、君には前回、傷を癒してもらった。罠にかけるためだったが、おかげで助かったよ」
「なんて人……!」
大会の前、無法者と契約者が衝突したときのことを思い出して、雅羅がきっとサルヴァトーレをにらみつける。
「……あなたも、ケガを……治しますから、こちらへ」
姫乃ははっとして、サルヴァトーレの額に流れる傷を見た。それだけでなく、脱出の際に体のあちこちを打ったようだ。
「まだ大会は終わってない。ジャンゴ氏に協力している以上、彼の敵の助けを借りるわけにはいかない」
額の血を袖で拭い、サルヴァトーレが歩き始める。
「そんなこと、言ってる場合じゃないでしょ? ケガしてるんだから……」
「ケガをしたから、と言っている場合じゃないんだよ」
告げて、サルヴァトーレは脚を引きずりながら歩く。
「よし。じゃあ私たちも罠にかけたってことにして、無理矢理捕まえたってことにすればいいわ。いくわよ、舞、姫乃!」
切り替えの早い理沙は叫び、サルヴァトーレを追いかける。
彼女らの治療を終えた夢悠と瑠兎子が、うっすらと目を開いた。
「……うわ!? ま、町が燃えてる!」
「無法者が火をつけたの!?」
「まったく、誰の仕業やら……ところで結局、俺様が治療してもらえなかったのはなんでなんだ?」
「ぴんぴんしてるからでしょ」
驚くふたり。胸を張る変熊。雅羅がため息を吐いた。
「……この火じゃ、市民たちが危ない。でも、大会が……」
「こ、こんな状況で大会なんて言ってる場合じゃないよ。……みんなが危ないのに!」
夢悠がじっと雅羅の目を見る。
「……そうね。みんなを避難させて、この火が燃え広がらないうちに止めないと!」
First Previous |
5 |
6 |
7 |
8 |
9 |
10 |
11 |
12 |
13 |
14 |
15 |
Next Last