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リアクション
第2章
日の光が地平線から覗く前兆。灯りが地平線にかかっている。
ローザマリア・クライツァール(ろーざまりあ・くらいつぁーる)は、再び保安官事務所を訪ねていた。
「今日は受け取ってもらうわよ」
早朝から事務所に詰めている保安官に向かい合い、ローザマリアが告げる。彼女が持って来たのは、保安官補として流れ者、つまり彼女自身を雇わせるための書類だ。
「何度来ても無駄だ。オレは今の状況を変えるつもりはない」
そうして、まったく同じように、保安官が書類をダストボックスへと放り投げようとする……とき、
カッ! 稲妻のようにひらめいた剣が、ダストボックスへ突き刺さる。
「誠意を見せたらどうだ?」
グロリアーナ・ライザ・ブーリン・テューダー(ぐろりあーならいざ・ぶーりんてゅーだー)。突き出した剣を素早く収め際、ダストボックスを放り捨てる。
「ローザは暴君サンダラーに立ち向かおうとするテレメーア……畏れ知らずなのだぞ。覚悟を決めて死地へ赴く者への、最低限の敬意くらいは、見せたらどうだ」
きっとにらみつけるグロリアーナに、保安官はちっと小さく舌を鳴らす。
「だったら、突撃はひとりでやってくれ。おれが行かせたんだと思われちゃ敵わん」
「……やっぱり、そう」
小さく息を吐くローザマリア。
「わかったわ。保安官補ではなくっても、私はブラゼル・レンジャーズとして、市民の安全を守ってみせる」
そう告げて、ローザマリアはきびすを返した。グロリアーナはまだ納得していない様子だったが、その後に従う。
「……よいのか?」
「体面にこだわって、大会に参加できなかったら意味がないからね。さて……」
ローザマリアが前方を見る。
「この広場の中が、大会の開会式場でーす」
プラカードを掲げて、リアトリス・ブルーウォーター(りあとりす・ぶるーうぉーたー)が、カウガール風ながら太ももまで露出した格好で集まってくるガンマンたちに声をかけている。当のブラゼル・レンジャーズ隊員の行いに、ローザマリアはきょとんとまばたきした。
「あんた、何してるの?」
「あ、ローザ」
「隊長をつけるべきじゃないか?」
スプリングロンド・ヨシュア(すぷりんぐろんど・よしゅあ)が横からリアトリスに告げる。その姿は完全に狼のものであり、テンガロンハットと星のマークがついた首輪を付けている。
「ごきげんよう。珍しい格好をしているな」
そういうグロリアーナに、スプリングロンドはすくめる肩が無いので尻尾をたれさせた。
「客寄せのためだ」
「というと?」
ローザマリアが聞き返す。
「ブラゼル・レンジャーズの隊員を増やすためだよ」
と、この機会にやってやるとばかりにリアトリスがスプリングロンドの背を撫でながら告げる。
「絶対に契約者に肩入れしないという条件で、受付というか、呼び込みの仕事を手伝わせてもらってるんだ。そうすれば、大会の参加者も私やこの子の顔を覚えるでしょ?」
大きな狼の姿になったスプリングロンドをこっそりこの子呼ばわり。彼がじろりとにらみつけると、笑ってごまかした。
「大会が終わった後、優秀な人に声をかけてみようと思うんです。ブラゼル・レンジャーズに入らないかって」
「そのために、こうして先に姿を見せているわけだ」
「なるほど」
ローザマリアが小さく頷く。大会で一緒に戦いたかった気持ちもあるが、彼女なりに隊のことを考えてくれたのが嬉しくもある。
「それじゃあ、私も参加するから。……そっちは任せたわよ」
告げて、ローザマリアも広場へ向かう。
「頑張ってくださいね……って、応援するのもちょっとダメかな。気をつけて」
ひらひらとローザマリアが手を振って応える。
大会の始まりを告げる朝陽が、昇ろうとしていた。
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