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機械仕掛けの歌姫

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機械仕掛けの歌姫

リアクション

 ブルックス・アマング(ぶるっくす・あまんぐ)は楽士隊を囲もうとする歩兵の敵を、周りと連携しながら潰していた。

「ファイアーストーム!」

 ブルックスが唱え終わるのと同時に、炎の嵐が敵を包む。
 そして、炎に焼かれ敵の足が止まっている間に追撃の魔法を唱え始めた。

(……私はリュー兄やシーナや他の歌い手さん達のような歌に力を持った人じゃないから、頑張って戦う)

「サンダーブラスト!」

 ブルックスが叫ぶとそれに呼応するかのように、空から数多の雷が降り注ぐ。
 いかづちの嵐を直撃した敵はその場で痙攣し、倒れこんだ。
 ブルックスはそれを確認するやいな、休む間もなく魔法を唱え始めた。

(その姿をフランさんに見てもらいたいな)

 小柄な身体で敵に劣ることなく、魔法を駆使して必死に戦うブルックスの姿を見て。
 密かながら指揮をするフランも、実は力を貰っていたのだった。

 ――――――――――

 叶 白竜(よう・ぱいろん)は息を潜め、スコープ越しに戦場を見つめていた。
 白竜が探すのは遊撃隊のリーダー格である大介。それは、真っ先に大介を押さえておきたいからだった。
 そして、しばらく探していたところ、遮蔽物からはみ出た焦げ茶の頭を発見した。

「……頭部はダメだな。腕を狙うぞ」

 白竜は口の中でそう呟くと、狙いを大介のスナイパーライフルを持つ手に移動する。
 そして、タイミングを計り、引き金を引き絞った。
 遮蔽物から少しはみ出た大介の腕に、それは一直線の軌道を描き飛来。
 大介の腕が撃ちぬかれ、血が吹き出た。

「……ッ!?」

 不意に、大介と目が合った。
 肉眼では捉えられないほど離れているはず。なのに、大介は迷いなく狙撃銃を白竜に向ける。
 そして、スコープを全く見ずに、片手でろくに構えも取らずに、大介は引き金を引いた。

 大介の腕が反動で勢い良く跳ねる。

 普通なら当たるはずの無茶苦茶な狙撃。しかし、白竜が感じたのは身に降りかかろうとしている危険だった。
 銃弾が白竜の額に飛来する。
 白竜は無理やり首を横に振り、その銃弾を避けた。

「……大丈夫か? 叶」

 その様子を見て心配そうに声をかけたのはパートナーの世 羅儀(せい・らぎ)だ。
 白竜はついさっきまで命の危険と直面していたというのに、その冷静沈着な様子の顔を崩さなかった。

「ああ、少しひやっとしたがな。それよりも、煤原大介は?」
「……いないみたいだね。ここにいたら僕達も狙われる。場所を変えよう」

 羅儀の提案に、白竜は小さく頷く。
 それを見た羅儀は念動球を空中で操作し、ダミーとして活用。
 その間に、向こうにこちらの動きを悟られないよう、慎重に遮蔽物に沿って移動を始めた。