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リアクション
倉庫の裏口に待機する突入班。
そのうちの一人であるローザマリア・クライツァール(ろーざまりあ・くらいつぁーる)に、菊の紙ドラゴンが届いた。
ローザマリアはそれを掴み、紙ドラゴンに直接書かれた文字を読む。
『陽動は成功致しました。今であれば、倉庫の中央にてオークを指揮するスティルの警備も手薄となっている筈です』
それを読み終えたローザマリアは突入班の面々に顔だけ振り向け、少しだけ首を縦に振った。
その意思を読み取った突入班の面々は各々の武器を構え、裏口の影に隠れる。
ローザマリアは裏口の影から少しだけ顔を出し、内部の状況を観察。裏口から入った先にいるオークは二体。それを確認してから、片手をふりかざし突入のサインを出す。
「……突入! 行くわよ――Move! Go! Go! Go! Go!」
仲間内だけ聞こえるよう調整した掛け声同時に、ローザマリアは射撃を開始した。
最も付近のオークを射殺。そして、すかさず追加射撃でもう一方のオークも撃ちぬき、付近のオークを全滅。
ローザマリアは素早く銃を扱えるようにしておき連射体勢を取った上で、光学迷彩とブラックコートで姿や気配を完全に消し去った。
「先頭を代わろう、ローザ。わらわのほうが突然の事態に対応しやすいであろう?」
「ええ、頼むわよ。フォローは任せて」
グロリアーナは先を行くローザマリアと入れ替わり、殺気看破を使用して慎重を期す。
また、並行して中の様子を伺いつつ倉庫壁面に機晶爆弾を設置していく。それは、作戦が上手く遂行出来なかったときのための保険だ。
そして、通路の突き当たりに差し掛かったとき。
「……ふむ、陽動班の連中は上手くやっているようじゃな。
あまり敵がおらんのう。これだと、排除したほうがよさそうじゃ」
グロリアーナは立ち止まり、両手に持つブリタニアとタイタニアに禍々しいオーラを纏わせた。
その二対の陽と陰の剣は、突き当たりを曲がろうとして現れた、二体のオークを破滅の刃で突き刺し絶命させる。
「ほんと、いつ見ても惚れ惚れするような手際ね」
ローザマリアはグロリアーナにそう賛辞を贈りつつ、事前の偵察情報を元に倉庫壁面の数箇所に機晶爆弾を設置。
進んできた道を完全に制圧しながら進んでいく。
「……なんなんだ、彼女ら。特殊部隊かなんかかよ」
思わず感嘆の息を洩らすのは、二人の後をついていくテノーリオ・メイベア(てのーりお・めいべあ)だ。
テノーリオも超感覚を駆使してスティルの位置を正確に感知。出来るだけオークの少ないルートを探し出す。
それと同時に、テノーリオのすぐ後ろを歩く機工士の魯粛 子敬(ろしゅく・しけい)の護衛も兼ねていた。
その子敬はやけに真面目な顔でぽつりと呟いた。
「機晶姫は……食べられませんね」
「……いきなり何わけの分からんことを言い出すんだ、魯先生」
「失敬。では守るべき対象として考えましょう。これは機工士の腕の見せ所にもなるやもしれません」
子敬はテノーリオにやはり真面目な面持ちで謝る。
と、ほぼ同時に前を行く二人が立ち止まり、テノーリオも固唾を飲んだ。
「ん? どうしたのですか、テノーリオ」
子敬は不思議に思い、テノーリオに問いかけた。
テノーリオは表情を引き締めて、答えた。
「……どうやら着いたみたいだ。敵さんの大将のとこに」
テノーリオのその呟きと共に、ローザマリアは対戦車ライフル型光条兵器を手元に召喚。
巨大なその図体を持ったその銃を構え、素早く身を翻してスティルに向けて背後から狙撃した。
背後から鳴った音に驚き、スティルが振り返る。
ローザマリアのシャープシューターを使用した射撃技術に裏打ちされた気絶射撃。
それは、一発でスティルを気絶させる筈だったが、風の鎧に阻まれ無理やり軌道を変化させられた。
「痛ッ! くそっ、もうこんなところまで来たのかい!」
が、完全に逸らしきることは出来ず銃弾はスティルの腹部を貫通。おびただしい量の血がにじむ。
「もう終わりよ。投降しなさい。そうすれば、命だけは保障するわ」
ローザマリアは厳しげな声色で言い放ち、光条兵器の狙いをスティルから外さない。
そして、目だけで周りのオークに牽制する。
動くな、動けばこいつの命は保障しない、といった風に。
「……そうはいくかい。こんなところで捕まるわけにはいかないんだよ、あたしは」
スティルは片手に声帯を持ち、それを盾にするかのようにローザマリアに突き出した。
そして、ローザマリアがほんの僅か怯んだと同時に。
「崩壊する空ッ!」
スティルが思い切り叫んだ。
ローザマリアとスティルの間の空間にヒビが入り、視認出来ない何かが現れた。
「危ない、みんな下がれ!」
テノーリオがローザマリアを引っ張るようにして、無理やり後方に移動させた。
視認出来ない何かは倉庫を壊し、崩し、スティルとの間に壁を作る。
そして、スティルは腹部を抑えて痛そうに顔をゆがめながら、そこから退却するのだった。
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