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リアクション
始めの戦場はみんなの食事処なり
食堂で髪をおさげにして簡単な変装をして平然と食事を取っている酒杜 陽一(さかもり・よういち)と高根沢 理子(たかねざわ・りこ)。
後ろ姿からはまるで双子が仲良く食事をしているように見えるだろう。
出入り口に背を向ける位置の席に座り、コンパクトの鏡で出入り口を常時確認し、警察の動きを注視している。
「まさかこうして堂々と食事をしている人が泥棒だとは思わないわよね。ナイスアイデアよ、陽一」
「すぐにバレたとしても、ここからならすぐに逃げられるんでね」
「ふふっじゃあ逃げる前にちゃんと腹ごしらえはしなきゃね! 腹が減っては戦はできぬっ」
談笑をしながら食事をしていると、某と海。続いて康之に香菜たちがドタバタと食堂へ入って来た。
食堂の机を使って康之は香菜の相手を、海と某で寿子と耀助の相手になるように分散させて大捕り物が始まる。
「どう見ても水と油な二人がどう戦うか見物だな」
寿子と耀助と向き合い、動きを観察して回避していく某と海。
足元を凍らかせているのを活かして、滑りながらテーブルの間を縫うように滑っていく。
一方某によって計られた二人はというと、康之は机の間を潜り抜けて逃げたり、挑発したりし、香菜はそれにイライラして直情的になってしてしまっていた。
「さぁ、ここからが本番だ!」
「ここからもなにも本番は始まっているわよ!」
真っ向から向き合って香菜の動きをよく見つつ、捕まえられる寸前まで引きつけてから避けていく康之。
「もっと相手の気を見て動くのだ!」
「分かってるわよ!」
「色即是空で心を無にするとか適当にそんな感じで!」
「適当なら色即是空とは言えないわよ!!」
後輩である香菜に指導もどきをしながら、康之は捕まりそうになってみたりしながらひょいひょい避けていく。
「やっぱり油な康之だよな。水の香菜が弾いてる」
「……あいつら」
某は女王の加護で後ろなどの死角を警戒しながらも、康之と香菜のやり取りを楽しく思っている。
海は海で食草入口で食事をしている二人組の陽一と理子が気になる。
「なにのんきに飯なんて食ってるんだよ」
陽一と理子に視線を向けていると、寿子の手が海の服に触りそうになる。
「油断大敵だよ。海ちゃん!」
「海!!」
それを某が自分の方へ引き寄せる事でフォローする。
「油断するなと言ったぞ!」
「悪い、助かった」
「惜しい。もうちょっとで捕まえられたのに」
二人は今まで避けていたが、滑りながら手元にある椅子を投げたりして妨害をし始めた。
「きゃっ」
「うぉっと!?」
妨害の椅子を避けながら某と海を捕まえようと躍起になる寿子と耀助。
追っては逃げての平行線に終止符を打ったのは某。
「先輩、逮捕だぁ!!」
耀助が某を捕まえようとした時。
「必殺、海ガード!!」
「は?」
捕まりそうになった某は、傍にいた海を耀助の前に出すようにしてその場から脱出したのだった。
「……油断するなと言ったはずだ! 康之、行くぞ!!」
「おう!」
距離を開けてた康之は、香菜へ一気に接近すると、パンッと手を叩いて猫だましをした。
それに驚いて目をつぶった香菜の隙をついて某と共に食堂を後にする。
「お、おい!?」
前に出された海を捕まえようとした耀助だが、海を捕まえる前に倒れていった。
「海くん、大丈夫ですか?」
某に置いてきぼりにされた海を救ったのは、超感覚で狼の耳を生やした杜守 柚(ともり・ゆず)と杜守 三月(ともり・みつき)だった。
「危機一髪だったね」
「柚に三月か。助かった」
三月のヒプノシスでこの場にいた寿子以外の耀助や香菜も眠りに落ちている。
「あの、せっかくですし一緒に逃げませんか?」
「三人いれば逃げ切れる確率は上がるよ」
「そうだな。某のような目にはなりたくないし」
「楽しく真剣に逃げようね」
彼のお陰で事無きを得た海は、三月たちと行動を共にすることになった。
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