校長室
山中のポーカーゲーム
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■ 勢いよくドアを開け部屋に入ったトマス・ファーニナル(とます・ふぁーになる)は、まずは投降の呼びかけから入った。 「君たちはもう終わりだ! 大人しくすればよし! 命までは取らないぞ!」 「はい、坊ちゃん、呼びかけたら構えてくださいね。殺さないのは結構ですけど、こっちが殺されるのはごめんですから」 魯粛 子敬(ろしゅく・しけい)は半ばトマスを押しのけるようにして前に出た。トマスは言われるまでもなく頷いた。もはやほぼ制圧した状態ではあるが、それでもまだ無駄な抵抗を働く者もいる。最後まで油断するつもりはなかった。 しかし、 「と、いうわけで、わたし達ってばつまり、機晶姫なわけ。お兄さまを元に造られたってこと。まさか六つ子なんてありえないんだしね」 部屋に入ったトマス達の見たものは、面を回したり投げたりして遊びながら、ぺらぺら一人で喋るQの姿だった。威嚇目的でそれなりの音を立てたはずなのに、こちらに振り向きもしない。 「お、おい……?」 「あ、ごめんなさい。質問は最後にまとめて受け付けるから」 抵抗するつもりもないようだが、あまり真っ当な反応とは言い難い。はっきりいって意味が分からない。つい今しがた部屋に入ったトマス達には、片隅で動きを封じられているアリアが、外傷もなさそうなのに疲れきった顔をしているのもまた異様だった。 「とにかく、捕まえちゃえばいいんじゃねー?」 状況はよく分からないけど、と続けてテノーリオ・メイベア(てのーりお・めいべあ)が言った。 「そうね……やること自体は変わらないと思うわ」 ミカエラ・ウォーレンシュタット(みかえら・うぉーれんしゅたっと)も同意する。 トマス達のやり取りを聞いているのか聞いていないのか、Qはふうと息を吐いた。 「あなた達は、なぜこんなことをしているの?」 「なぜだって? 武器の意味を知らない者にまで武器を出回らせるわけにはいかない、僕はそんなことを決して許さない」 トマスの答えを、やっぱり聞いているのか聞いていないのか、 「人が動くにはそれなりの理由がなければならないわよね。その理由ってさ、人それぞれじゃない。つまり、それが人の個性。わたしがわたしであるためにそれをする。だからわたし達はね、それをしたのよ」 歌い上げるように、 「そっくり同じ顔をしたわたし達は、それでも違う一人だから。トランプみたいに、一人一人違っていたかったから。誰かのコピーじゃあないわ。あなた達と同じ、立ってるところが違っただけね」 それも個性、とQは嬉しそうに目を閉じた。 ドアを開ける。一番上の階、一番奥の部屋。王様の部屋だった。 「ノックもなしにとは、失礼なやつもいたもんだ」 部屋の中で一人ソファに座り込んで、天を仰ぐ男が言った。 どうという感情も浮かべずに、入ってきた男が口を開く。 「言いたいことがあるなら聞くけど」 天を仰いだまま「いや」と言いかけて、やめた。糸が切れたみたいにがくりと首を落とした。 「まぁ商売としちゃ、規模が大きくなりすぎたよな。ある程度大きくなってくると、そうそう簡単に切り上げるわけにはいかないし、上手くいってるとなれば、あんまりそういう考えにも及ばねぇし。お前から見れば、俺達は止まらない列車もいいところだったわけだ」 自嘲気味に笑って、 「止まらない列車を止めたきゃ、脱線させりゃいい。まったく、ありがたい話だ。俺だったら、そんなことはしないね」 顔を上げる。同じ顔が向き合う。 「俺達はお前と違う」 「そうだな」 片方は目を逸らし、片方はものすごく満足そうに笑った。
▼担当マスター
浦苗 棉
▼マスターコメント
どうもこんにちは。リアクションをご覧くださりありがとうございます。 今回担当させていただいた浦苗 棉です。 皆様の個性溢れるキャラクター、アクションには毎回とても楽しませてもらっています。 シナリオご参加、ありがとうございました。
▼マスター個別コメント