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第51章 増やした方が多分得

「実は大切な話があるんです」
「ヒャッハァー! 何でも言ってみろ〜。大感謝祭だからな!」
 花音・アームルート(かのん・あーむるーと)から話があると呼び出された南 鮪(みなみ・まぐろ)は、彼女を空京のホワイトデー大感謝祭へと連れてきていた。
「子供、出来たみたいなんです」
「ヒャッハァ〜出来た? なんだそりゃ新手のフラワシかァ〜?」
 花音は首を横に振る。
「あたし、鮪さんの子供を身ごもったみたいです」
「ヒャッハァ〜身ごもったァ?」
「はい。でも、鮪さんに責任取ってくれなんていいません。あなたは愛と自由に生きる人なんですから。それに、涼司さんの口座から養育費ぐらい出せます」
「何でもいいぜ、もっと増やしたほうが多分得だぜ」
 鮪の返答に、花音は目を見開いた。
「さすが、鮪さんです。予想をはるかに超える返答です」
「ヒャッハー、まずはあの店からはいるぜェ〜。ガキの分までブライドオブシリーズを手に入れるためになァ!」
 鮪は花音の腕を引くと、近くのランジェリーショップに入っていく。
 目的は断じて下着ではない。
 ブライドオブ尻ー頭。じゃない、これはタダの変換ミス。
 ブライドオブシリーズだ。
「大丈夫だぜ、パソコンで時間かけて調べてた古い資料で確認してトコトン攻略ったからなァ〜」
 貴重な伝説のアイテムは大抵遺跡や洞窟に隠されているが、ひとつくらいは何故か店に並んでいるという資料を見たことがあった。
 店といえば、尻と頭に被るものが売っているここが、一番怪しい。
「ヒャッハァ〜、もしやこれが噂に聞くブライドオブパンツ」
 最初に目をつけたのは、花柄のショーツ。
「やだ、鮪さんったら……。あたしは、こっちの方が……」
 花音はちょっと赤くなりながら、好みのショーツを選んでいく。
「Tバックやタンガっていうのも怪しいぜェ。こっちのイチゴのも確保だ!」
 鮪はバーゲンに訪れたエメネアのごとく、籠にショーツを入れていく。
「ヒャッハー、よぉし、次は武具だ。ビキニアーマーっていうのが、怪しいぜ」
「そうですね、あたしの為にこんなに沢山買ってくれるなんて……」
 花音は山積みのパンツに感動しながら、鮪の腕に抱きついた。

 購入したものは、鮪の家と涼司の部屋に送り付けた。段ボール何箱分も。
 それから2人は沢山の抽選券を持って、抽選会場へと向かった。
「ヒャッハァ〜! 勿論狙うなら特賞だぜ。多分あれが噂のブライドオブ裏鼠雨斗穂照流ペア宿泊券に違いないぜ」
 景品を指差して鮪が言う。
「はい。絶対に当てましょうね。増やすために」
「ヒャッハー、行くぜ!」
 まず、鮪が5回。
 続いて、花音が5回、ハンドルを回した。
 出てきた玉の色は……なんと全て、白だった。
「当たり結構入っているのですけれど。おかしいですね……」
 係員も驚くほどの外れっぷりだった。
「幸運は全て、ここにありますから」
 花音は自分の腹に手を当てて、微笑み、沢山のハンドタオルとティッシュを受け取る。
「仕方ねえなァ〜。これは俺からのプレゼントだ」
 鮪は、波羅蜜多実業空京大分校卑通勝法――受験生向けの参考書を花音に手渡す。
「ヒャッハァ〜お前と元眼鏡も空京大分校に来いよ、多分色々問題が解決するぜ!」
「またプレゼントですか……いつもいつもありがとうございます。帰ったら、涼司さんに相談してみます」
「よし、裏鼠雨斗穂照流の代わりにそこらの穂照流へ連れてってやるぜ」
 鮪は花音の腕を引くと、バイクの背に乗せる。
「はい、連れて行ってください……っ」
 花音はぎゅっと鮪の背に抱きつく。

 こうして、花音の中の命は鮪の愛のパワーで、追加され。
 結局リゾートホテルにも涼司のツケで行き、更に追加となり。
 後に、花音はプレゼント3人分の女の子を宿ったと鮪に報告をする。

 その娘たちは、今年の大河……ではなく、鮪のパートナーからの勧めもあって。
 茶々、初、江と名付けられることになった。
 乱世のパラミタを生きる三姉妹に待ち受ける運命とは!?