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第53章 決意

 それから、フリューネ・ロスヴァイセ(ふりゅーね・ろすう゛ぁいせ)は、朝野 未沙(あさの・みさ)に呼ばれて、街を見下ろせる丘に向かった。
 辺りはもう暗くなっていて、月の淡い光だけが厳かに降り注いでいる。
「フリューネさん」
 待っていた未沙はいつになく、真剣だった。
「一カ月考えて、出した答え……。聞いてくれますか?」
「え……うん……」
 未沙があまりにも真剣だったので、フリューネは茶化すことはせずに、静かに彼女の傍に近づいて彼女の言葉を待った。
「初めは憧れだった」
 フリューネは、酒場で空賊に絡まれていた未沙を助けてくれた。
 すごく格好良くて、憧れて。
 追いかけて、色々とやっているうちに、傍に居たいと思うようになった。
 その頃は未だ、メイドとして仕えたいのか、一人の女として傍に居たいのか判断が付かなかった。
「でも、気が付いた、あたしは、フリューネさんに一人の女の子として恋してて、一人のメイドとしてお仕えしたいんだって」
 月明かりの中、未沙はまっすぐに、フリューネを見詰める。
「前にも言ったけど、改めて言うね、メイドとしてのあたしと、一人の女の子としてのあたし、両方とも貰ってくれますか?」
「真剣だってこと、良く解ったわ。……私の答えは、バレンタインの時と一緒よ」
 優しい響きの言葉だった。
 未沙はこくりと首を縦に振る。
「心を決めました。今、恋をしている相手は、フリューネさんだけ。あたし、フリューネさんと結ばれたい」
「……」
 未沙は一歩、フリューネに近づいた。
「貰ってくれるなら、証として、フリューネさん、あたしにキスしてくれますか?」
 未沙は強い想いを、瞳に籠めてフリューネに投げかける。
 フリューネは……。
 足を後ろに引いて、ふわりと浮かび上がった。
 未沙の両方の肩に、両手を乗せて。
 空から、彼女の額にキスをした。
「……今はメイドとしての未沙をもらうことにするわ。私も未沙に応えてあげたいけど、今はまだカナンのことで頭がいっぱいだから」
「フリューネさん……」
「未沙にもまだ、すべきことがあると思うから。お互い、そういう関係になると動きにくくなることもあるでしょ。カナンの事が落ち着いて、未沙の決意が変わってなかったら……。その時は、ちゃんと答えを出すわ」
 フリューネは未沙の頭にそっと触れた後、更に上空へと飛んでいく。
「またね!」
 輝きと、軽快な声を降らせながら。
 未沙は、眩しそうに眺めていた。
 空と、月と、愛する人を。

担当マスターより

▼担当マスター

川岸満里亜

▼マスターコメント

沢山の素敵な物語を、ありがとうございました。
皆様の幸せを願っております。

ペア景品を入手された方には称号を発行しております。ご確認くださいませ。

尚、今回のリアクションの公式NPCの特別な反応や進展につきましては、運営側から戴いた助言やご指示の下、描かせていただきました。
また、このシナリオに限りませんが、自分以外の各マスターの固有の設定(NPC、舞台、展開)につきましては、私のシナリオで勝手に描いてしまったり、お話を進めることは出来ないため、アクションを戴きましてもご期待にお応えすることは難しいです。

貴重なアクション欄を割いての私信等、ありがとうございます。
余力がなく、あまりお返事がかけず申し訳ありません。

それでまた、別のお話でも皆様にお会いできますように……。