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第49章 社会勉強?

「つかささん……………………」
「シズル様も一緒にどうです? 楽しいですよ? それとももっと激しい事がお好みですか?」
 秋葉 つかさ(あきば・つかさ)は、加能 シズル(かのう・しずる)と共に、カラオケボックスにいた。
 室内は薄暗く、モニターに映っているのは官能的な映像。
 室内には、つかさとシズルだけではなく、ガラの悪い少年たちの姿もある。
 つかさと一緒に踊ったり、半裸でエッチな歌を歌ったり、スキンシップを楽しんだり……やりたい放題だった。
「そ、そうじゃなくてね。いくらなんでも、やり過ぎだわっ」
「……そうですね。もう必要ありませんしね。では、今日はお開きにしましょう。……後程、私が3人分楽しませて差し上げますから」
 つかさは少年達にそう小声で言って、先に帰らせる。
 先ほどまで、部屋にはミルミ・ルリマーレンという女の子も一緒だった。
 だけれど、つかさと少年たちの過激になっていく絡みを見て、ミルミは怖くなって逃げ出してしまった。
 でもそれは、つかさの思惑通りだった。
 世の中は怖いものだと、誤認させること。
 今までが、どんなに良い立場にいたのか。どれだけ守られてきたのか。まだ大切な人に変わりがないことも。
 ミルミに理解させることが、目的だったから。
「シズル様、驚かせてしまい申し訳ありません。冗談でした、シズル様達にはさすがにまだ早いですから。……それに、大切な方の為に、残しておくべきですから」
「早いって……つかささんの方が、見かけは若いけど、それなりの年齢なのかしら? どちらにしろ、場数は踏んでるみたいね」
 シズルは大きく息をついた。
 彼女も、この部屋の異様な雰囲気に少なからず恐怖を感じていたようだ。
 とはいえ、彼女も契約者。
 いざとい時には、数人の不良から逃れるくらい訳がない。
「覗きとか……もともと変わった人だと思っていたけれど、なんていうのかな……ありきたりな言葉だと、自分を大切にした方がいいわ、ってところかしら」
「大切にする必要なんて、ないのです」
「うーん」
 つかさの返答に、シズルは眉を寄せて考える。
 だけれど、適切な言葉が思い浮かばない。
「とにかく帰りましょう。こいうこと、あなたにもやってほしくないんだけどな……。なんだか、楽しそうには見えないし」
「…………」
 つかさの心は、沈んでいた。
 普段通りの生活を送っていても、心の中は普段通りに戻りはしなかった。
「他の店で夕飯食べていく? 女同士2人きりで、普通の会話をして過ごすのも、楽しいものよ?」
 シズルは、様子のおかしなつかさを、励まそうとしているようだった。
「ええ……。シズル様と過ごす夜、楽しませていただきます」
 つかさは微笑みを浮かべて、一緒に夜の街へと出ていく。
 街にはまだ、若者達が溢れている。
 皆、元気そうで、楽しそうに見えるけど……それぞれ、悩みを持っているはずだ。
 だけれど、恋人や親しい友達と過ごす今だけは、光り輝くネオンに騙されて、共に輝いていたいと、この夜を楽しみたいと、願っている。
「美味しい和食が食べられるレストランがいいわ」
「でしたら、あちらにお勧めの店があります。少し遠いですけれど一緒に歩きませんか」
「ええ」
 シズルとつかさもそんな街の中を歩いて、輝きを分けてもらうのだった。