First Previous |
4 |
5 |
6 |
7 |
8 |
9 |
10 |
11 |
12 |
13 |
14 |
Next Last
リアクション
第8章 狙い定めて
「あ、ミルフィ見て見て、素敵なワンピースです♪」
「まあ、素敵なワンピース、お嬢様にお似合いですわ♪」
神楽坂 有栖(かぐらざか・ありす)と、ミルフィ・ガレット(みるふぃ・がれっと)も空京のホワイトデー大感謝祭が行われている街に訪れていた。
目的はショッピング。
洋服やアクセサリー、小物などを見て回っている。
今日はレストランの予約はしてなくて。
食事は若者達に人気のピザとパスタのお店でとった。
それからまた街に出て、こうして春物の可愛らしい服を選んでいた。
「コレもお嬢様にお似合いだと思いますわ♪」
言って、ミルフィが広げたのは……下着だった。
可愛らしい縞々のショーツだ。
瞬間、有栖の顔が真っ赤に染まる。
「も〜、やめてください〜っ」
有栖はぽかぽかとミルフィを小突いた。
「似合うと思いますのに〜」
ミルフィは笑いながらちょっと残念そうに、ショーツを棚へと戻す。
ワンピースを1着ずつ購入して、その店を出ると、もう外は真っ暗だった。
楽しい時間は、本当にあっという間に過ぎてしまう。
最後に抽選をしようと、有栖が抽選会場へ歩き始めたその時。
「お渡ししたいものがありますわ」
ミルフィが鞄の中からラッピングされた紙の袋を取り出した。
「お嬢様、受け取って下さいませ♪」
「有難う、ミルフィ」
有栖は喜んで、ミルフィから袋――バレンタインデーのお返しを受け取った。
結ばれていたリボンを解いて中を確認すると。
中には、とてもやわらかいお菓子、マシュマロが入っていた。
白に水色に、ピンク色のマシュマロは見ているだけでも心が和むほどに、可愛らしい。
「これ……ミルフィが作ってくれたの……?」
「はい、手作りですわ」
更に、有栖は袋の中にメッセージカードも同封されていることに気付く。
指でそっとカードを開いてみる。
カードには、ミルフィの字でこう書かれていた。
『わたくしの大切な有栖お嬢様へ 手作りの愛を込めてお贈り致しますわ ミルフィ』
感動で有栖の目が熱くなっていく。
「有難う、とっても嬉しいっ……!」
次の瞬間に、有栖はミルフィに抱きついていた。
「喜んでいただけて、良かったですわ。わたくしもとても嬉しいですわ」
ミルフィもぎゅっと、有栖を抱きしめて。
互いに幸せそうな笑みを浮かべる。
体を起こした後。
歩道で抱き合ってしまったことに、ほんの少しだけ赤くなって、微笑み合った。
ミルフィは料理の腕が壊滅的なので……見かけは可愛くて美味しそうなこのマシュマロも、食べたら大変なことになるの、かもしれない。
でもそれでもいいかなと、有栖は思う。
せっかくミルフィが心を込めて作ってくれたものだし……。
倒れてしまって、ミルフィに介抱してもらうものいいかも、と。
家に帰ったら、必ず自分の口に入れようと、有栖は思うのだった。
「狙うは勿論特等ですわ……!」
抽選会場に到着したミルフィは腕まくりをして気合を入れる。
「ミルフィ頑張って!」
有栖は自分の分の抽選券もミルフィに渡して、任せることにした。
「では参りますわ、ぬおりゃああああ!!」
掛け声をあげて、ミルフィはハンドルを回す。
白、白、白……。
白ばかり続いていたけれど。
コロン。
ひとつだけ、色のついた玉が落ちてきた。
「えっと、金色……金色って……!?」
「やりましたわ、特等ですわ!」
「おめでとうございます! 高級リゾートホテルの宿泊券当選となります!!」
係の男性の言葉に歓声をあげて、ミルフィと有栖は大喜び。
「場所、選べるんですね。どこに行きましょう……っ!」
「普段いかない場所がいいですわね。ああ、楽しみですわ、お嬢様」
すっごく嬉しそうに喜ぶミルフィに、有栖もまたとてもうれしそうな笑みを向けて。
彼女が受け取った宿泊券ごと、ミルフィの手を包み込んで握りしめた。
時間をつくって、必ず一緒に行きましょうと約束をして。
ぎゅっと手を繋いだまま、歩き出す。
今日よりもっと楽しい時間を、夢みながら。
First Previous |
4 |
5 |
6 |
7 |
8 |
9 |
10 |
11 |
12 |
13 |
14 |
Next Last