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リアクション
王宮からの運搬用トラックでまとめて運ばれた者達の中に、ルファン・グルーガ(るふぁん・ぐるーが)達は含まれていた。
「奴か!」
やや遅れて到着した、ドラゴニュートのギャドル・アベロン(ぎゃどる・あべろん)は、ゴーストイコンを率いているのがクトニアと知って、浮き立った。
前回襲撃して来た時は、中途半端に終わってしまった、とすっきりしない気持ちがあったのだ。
「今度こそ、ケリつけてやるぜ」
「気持ちばっかり空回りしてるとケガするんだからね、ギャザオー」
魔道書のイリア・ヘラー(いりあ・へらー)が忠告する。
「てめえに言われるまでもねえ!
別に奴を倒すのは、俺じゃなくても構わねぇんだ、誰かが、此処で倒せればな!」
「喧嘩しとる場合か。それじゃ、行こうかの」
パートナー達の口喧嘩を軽く諌めて、ルファンが目標を定める。
ギャドルの希望通り、頭であるクトニアを狙えれば、最も効率的だろう。
これらのイコンは恐らく、アンデッド達と同様、クトニアに操られている。
「ゴーストイコンをこれだけの数、とはのう」
ギャドルの周囲が業火に包まれている。
「……全開で暴れておるようじゃの」
ルファンは苦笑する。
「んもー! 手当たり次第暴れてもだめでしょー!
こないだの奴やっつけるんでしょ!? もっと効率的に動かないとだめだよ!」
随行兵達を薙ぎ払って行くギャドルに、イリアが叫ぶ。
「奴は何処だっ!!」
「後ろの方だよ!」
「ルファン!」
吼えるギャドルに苦笑して頷いた。
クトニアの姿を見付けて、ギャドルが真っ先に動いた。
拳に纏わせた炎を迸らせながら、果敢に攻めこむ。
気付いたクトニアが、周囲へ視線を走らせた。
「行け、ミソパエス」
ギャドルの前に、倍近い巨体の怪物が立ち塞がる。
避けた怪物の拳が、地にめり込んだ。
「退けぇ!」
炎をまとった派手な一撃に紛れて、死角から、ルファンが遠当てでクトニアを狙う。
だがそれも、現れた別の怪物が受け止め、更に立て続けでギャドルがドラゴンアーツで仕掛けた。
正面からまともに食らった怪物が、倒れる。
巨体だが、見掛けより更に重量があるのだろう。
ズシン、と重く地響いた。
対処を任せたクトニアは、涼しい顔をして、既に先に進んでいる。
「何よこいつら、トロール!?」
イリアが顔をしかめた。
「まあそんなところか。ザナドゥの、最も深き場所を蠢く者共、さ。
怪力と頑丈なことくらいしか取り柄はないが」
答えるでもなく、クトニアは呟く。
光を嫌い、頭の中には憎しみの感情しかない、醜悪な怪物。
クトニアは自らの盾に、彼等を周囲に置いて護らせている。
ゴーストイコンがマシンガンを撃ってきて、ギャドル達はすかさず距離を置いて身構えた。
ルファンが遠当てを撃って牽制する。
「てめえ、コソコソ引きこもってねぇで、出てきやがれ!」
ギャドルが吼えた。
「馬鹿言うな。指揮官てのは、後ろで隠れているものだろ」
挑発に乗らず、クトニアは肩を竦める。
「あいにく、こっちはそれどころじゃない」
ゴーストイコン達は、迎撃部隊に対峙する者以外は、周囲の戦闘を無視して空京を目指す。
目の前に敵が現れない限りは、戦闘よりも王宮へ行くことを優先しているのだ。
全てのイコンと怪物を倒すまでに、その一部が空京に辿り着くだろうと予測できるくらいまでは、接近されていた。
「くらえぇ!」
エヴァの、戦闘用イコプラと可変バイクの弾幕援護を受けながら、煉は機晶剣ヴァナルガントを振り払った。
真っ二つになったザナドゥの怪物が、地響きを上げて地に沈む。
「まだか、リーダーは!」
狙いは、勿論クトニアだ。
まっすぐクトニアに突進する煉だが、壁が厚い。
クトニアを取り巻く怪物に紛れ、隠形で潜んでいた刹那が、リターニングダガーを投げ放ち、援護の攻撃を仕掛けた。
煉がそれを躱した後ろから、エヴァが
「その辺にいるのかっ!?」
と弾幕を浴びせる。
「さぁ、壊れちまいな!」
予測で撃ち込んだパイルバンカーは、さすがに当たらかったが、エヴァは更に真空波を放って畳み掛けた。
「やったか?」
仕留めたならば、隠形が解けて姿が現れるはずだが、それが無いということは、逃がしたか。
エヴァはくそっ、と毒づく。
地面に落ちていた、小さな血痕は見逃した。
戦闘区域から離れ、物陰で隠形を解いた刹那は、怪我の具合を確かめる。
命に別状は無いが、軽傷でもない。
「やられたのう。これ以上は無理か……」
そしてついに、煉は壁を突破した。
全ての怪物を振り切り、クトニアに攻め込む。
「ちっ……」
クトニアは、一時、支配を一体のゴーストイコンに絞った。
背後から、ゴーストイコンが剣を振り下ろすが、煉はゴッドスピードでそれを振り切る。
「覚悟しやがれっ!」
それを迎え、ふっ、とクトニアは苦笑した。
「……ウーリア様、申し訳ない」
ウーリア達の状況を確認する術はないが、せめて向こうの作戦が、成功しているといいのだが――。
この一撃を躱す策はない。クトニアは観念した。
ゴーストイコン達の陣形が崩れる。
「やったか!?」
ギャドルは目を凝らした。
「まだじゃよ。支配が切れたとはいえ、イコン達が消滅するわけではないからの」
ルファンが言う。
確かに、イコンも、怪物達も、クトニアの支配を失ったとはいえ、存在自体がなくなったわけではない。
「全く、面倒なものを連れて来たものじゃ。
本能的に空京に向かう者もおるじゃろう。だが全てではあるまい。
空京に向かわず流離う者は放っておけ。
生者に引き寄せられ、空京に向かう者のみを、とりあえず相手取る」
「掃討戦てやつね、ダーリン!」
イリアが答えた。
全力での戦闘を終え、肩で息をしている煉にエヴァが歩み寄る。
「お疲れ。まだ後片付けが残ってるってさ」
「ああ……」
煉は剣を握りなおす。足元を見下ろした。
倒れるクトニアを見やり、踵を返して、掃討戦に向かう。
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