リアクション
* * * 榊 朝斗(さかき・あさと)はじっ、と降下してくる黒い装甲服を見つめていた。 一ヶ月間、彼は考えた。 そして悩んだ。 ベトナムから帰還したホワイトスノー博士なら、もしかしたらこの敵のことを知っているのではないか? そして彼らがただ、戦うための道具として生み出されたことを知った。 「彼らは自分の意思を、心を持たない。ゆえに生への執着もなければ、死への恐れもない」 そういう存在だ、と聞かされる。 自爆するのも、ただそういう風にプログラムされているから。機密保持と、敵へのダメージを与えるための手段であると。 それを知ってもなお、朝斗の迷いは消えなかった。 そんな彼に、ルシェン・グライシス(るしぇん・ぐらいしす)は自らの想いを告げた。 「必ずしも全てを救えるとは限らない。何かを犠牲にしなければ、護れるものも救うことも出来ないのだから。 それでも自分の信じたモノを裏切らないで欲しい。たとえ道を間違おうとしても、私はそれを止めてあげる」 そして続ける。 「私は自分の痛みに苦しんでいた。自分の弱さを拒んでいた。それから救ってくれたのは朝斗の優しさ。忌み嫌われて封印された私をあの小さな優しさで闇から出してくれた。どんなときも独りじゃないことを教えてくれたのは貴方なのだから」 そんな彼女からの言葉を受け、彼は答えを出した。 自分は契約者となって、普通の人とは異なる力を手に入れた。それに対して、どこかで甘えていたのかもしれない。 その力で、生命を奪う罪に怯えていたのかもしれない。だから救いたいと願ってきた。 ――敵が攻撃してきたら排除する。甘さは捨てなければいけない。 一度戦場に立ったならば、それがきっと正しいことなのだろう。 だけど、それでも自分の信じたものは最後まで信じ続けたい。 「アイビス、お願いがあるんだ。彼らを、一発で撃ち抜いてあげてくれ」 アイビス・エメラルド(あいびす・えめらるど)に静かに言い放つ。 赦して欲しいとは言わない、けれど決して忘れない。 弱さを棄てない、痛みから逃げない。 全てを背負ってゆこう。 両の手に刃を、時には銃を持つ者の覚悟、決意だ。 「あなたが出した答えは決して正しいモノとは言い切れません……それでも、その道を歩む覚悟はあるのですか?」 アイビスの問いに、朝斗はただ頷いた。彼女に視線を送ることなく。 それが彼の強い意志を物語っている。 「さあ、行こう」 両手に無光剣を構え、降下してくるクローン強化人間へと向かって駆け出す。 ルシェンが彼にパワーブレスを施した。 着地する前に放電実験を繰り出し、迷彩の無効化を図る。 そして、敵の首めがけて刃を振るう。一発で仕留めるために。 また、敵は空を走るようにして地上へと向かってきている。アイビスはフライトユニットで空中へ上がり、射撃を行う。 スナイプで朝斗に言われた通り、ヘルメットの眉間に当たる部分を撃ち抜く。 空からの援護受け、朝斗は敵へ向けて跳躍した。 「これが僕の――答えだ!」 |
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