リアクション
* * * 「お姉ちゃん、見つけました」 マキナ イドメネオ(まきな・いどめねお)の駆る小型飛空挺アルバトロス上から、夕条 アイオン(せきじょう・あいおん)がローゼンクロイツと思しき姿を発見した。 「あいつが、影の元凶。殺す」 夕条 媛花(せきじょう・ひめか)が飛空挺から飛び降り、そのままローゼンクロイツ目掛けて加速する。 神速に、サイコキネシスの力を付加、それにより敵のクローン強化人間の加速法を超えた速度を生み出す。 ローゼンクロイツはこちらを向こうとしない。 その理由はすぐに分かった。 キン、と狂血の黒影爪が刃とぶつかる音がした。目の前には剣と銃を携えた仮面の男がいる。 (仲間がいたか) まずはこの人物が優先すべき「殲滅対象」だ。 「現実に耐え切れず心を棄て、ただ力のみに従い、戦うことを選びましたか」 ローゼンクロイツの呟きが聞こえてきた。 そこには、どこか失望のような色が浮かんでいた。 「……黙れ」 先の先から距離を詰めようとする。 「お前の相手は俺だ」 仮面の男が阻む。正体は分からないが、この人物もかなりの実力者だろう。血と鉄の構えを崩さず、防御を中心に立ち回っている。 「場所を変えよう」 そこから、前に詰めてくる。 円盤上になっている天沼矛の屋根から、一段下の展望デッキの上へと落としてこようとする。 「さて、これならばどうでしょうか」 直後、ローゼンクロイツがカードをばら撒き、それが「影の人」となる。空中に飛び出したその姿には、翼が生えている。 「影に用はない」 媛花は宙を駆ける。影は無視し、軽身功とサイコキネシスと神速によって、落下しながらではあるが、自由に動き回る。 敵の魔銃カルネイジが火を噴くも、それをかわす。 「そんなもの、当たらない」 加速し、敵に爪を突き立てる。 が、敵は身をそらしてそれを避ける。そのため、爪は地面にぶつかり、展望デッキの屋根をえぐった。 「……なんつー威力だ」 ぼそりと仮面の男が声を漏らす。 記憶消去と感情操作を受けた彼女にあるのは、敵を殲滅することだけだ。そこには躊躇いというものは存在しない。 背後から、マキナがアルバトロス上から機晶キャノン、六連ミサイルポッドでの援護を行う。 そして空中の影に対しては、アイオンがサンダーブラストを放つ。 それでも核に当たらなければ再生する。そのため、サンダーブラストで影が乱れたのを見計らい、アシッドミストで核であるカードを侵食する。 「ち、埒が明かねえ」 仮面の男がバーストダッシュで飛び込んできた。 こちらも神速であったが、その分身が軽くなっており、押し返される。さらに敵は自分腕を肘を使って押さえ込み、爪を自由に動かせなくしてきた。 「まずは、あっちだ」 辛うじて照準が合わせられるだろう、片手の魔銃で飛空挺を狙う。 だが、それは本命ではない。 「く……!」 仮面の男ともに、空中に投げ出される。そして敵は自分をそのまま叩き落そうとしてきた。 パラミタとの接合部ではないとはいえ、高度3000メートルから落ちたらひとたまりもない。それは相手も同じだろう。 仮面の男が媛花を離した直後、剣を投げ捨てる。 投擲はサイコキネシスでそらしたが、直後敵は空いた手にダークネスウィップを取り、屋根の外縁にある出っ張りに引っ掛けた。 そして、 「そのまま落ちな」 漆黒の魔弾を装填し、彼女に向けて放った。 「――――!」 剣に向かってサイコキネシスを行使した直後であり、すぐに反応出来なかった。 せめて致命傷だけでも避けるため、なんとかサイコキネシスをぶつけるも、威力を削ぎきれず、彼女の身体は撃ち抜かれた。 * * * 「お姉ちゃん!」 飛空挺も無事ではない。飛行を続けることが出来なくなり、そのまま滑空して不時着しようとする。 その過程で、落ちてくる媛花を受け止めた。 あとは、地上にぶつかる衝撃をいかに緩和するかだ。 媛花の傷は決して浅くはない。 「……死にたく……ない」 うつろ目な彼女から、呻くような声が漏れた。 |
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