空京大学へ

天御柱学院

校長室

蒼空学園へ

聖戦のオラトリオ ~覚醒~(第3回/全3回)

リアクション公開中!

聖戦のオラトリオ ~覚醒~(第3回/全3回)
聖戦のオラトリオ ~覚醒~(第3回/全3回) 聖戦のオラトリオ ~覚醒~(第3回/全3回)

リアクション


(・カミロ・ベックマン)


 ――歌が聞こえる。

「こいつも綾と同じ俺の『相棒』だ。そして俺が俺であるための『翼』だと。イメージしろ、俺達三人が戦っているところを」
 【ホワイトライトニング】の中で、ウォーレン・クルセイドは想像する。
 今光に包まれた、この「身体」で戦っている姿を。

「私は目標を、自らの存在意義を見つけるために学院に来ました。だから見つけるためならどんな汚名や罵声を受けても構わない。
 けど……今の私の出発点の海京に土足で足を踏み入れることは決して――許しません!」
 開放された出力を全快にして、【アーラ】は大型ビームキャノンを放った。
 そして、それは敵の一般機を貫き、指揮官機へと突き抜けていく。

 天空寺 鬼羅は笑っていた。
「あーっはっはっは! 動く……動くぞ! 自分の体を動かすがごとく!」
 機晶の輝きに包まれた直後、鬼羅はその感覚を得た。
「じ、自分も感じる! この子も頑張ってくれてるで!! 鬼羅ちゃんは戦闘に集中して。あとのことは自分がやるから!」
 カミロの機体への距離を詰めていく。
「てめぇは俺の師でありライバル!! 正義も悪も! 敵も味方も関係ねぇ! 信念同士のぶつかり合だ! 力比べといこうじゃねぇか!!」
 

* * *


 それが起こる少し前。
「さあ、これを耐えられますか?」
 牛皮消 アルコリアは神速でカミロのシュバルツ・フリーゲへと接近していった。
 同様に、シーマ・スプレイグも神速、さらに加速ブースターで共に行く。
 アルコリア、そしてナコト・オールドワンが攻撃態勢に入ると、転軽杖を回し二人の魔力を強化する。
 相手は敵のトップ。そのくらいしなければならない相手だろう。
 アルコリアは二挺の魔道銃に弾丸を込めた。
 大魔弾コキュートス。
 銃口をシュバルツ・フリーゲに向け、
『開け冥界の門。来たれ嘆きの川……コキュートス!」
 同時に引鉄を引く。
『我ら禁じられた言葉により冥界の門を開くもの……滅びに呑み込まれるがいいですわ!!』
 同じく、ナコトも両の掌に納められた魔道銃から己の魔力を放つ。
 大気が震えた。
 彼女達の全力は、それほどまでに強力だった。
「……ふぅん」
 シュバルツ・フリーゲがシールドを展開。そこにぶつかった衝撃で風が巻き起こるも、相手は無傷だ。
「そうですか。いえ、そうですよね。『この程度』で倒せるほど甘くはない。少々私らしくありませんでした」
 それでこそ、敵足りうる存在だ。
 あの『灰色』のように。
「機晶石よ……力を放て!」
 シーマによるSPリチャージで、精神力を回復する。
 シールドに向かって飛び込んでいく。
 遠くから壊せないのなら、ゼロ距離でぶち破ればいい。
 高速飛行を維持したまま、機関銃の銃弾をかわしつつシールドに肉薄する。だが、それでも「人の身」である彼女はそれに阻まれる。
「きゃははは、それでいい! もっともっと愉しませなさいよ!!」
 展開されたシールドに、直接魔道銃を突きつける。
「ついでだ、こいつも取っておけっ!」
 今度はシーマもロケットパンチを繰り出し、支援する。
 二度目の全力が放たれた。
 魔力による光が爆風となって当たりへ飛散していく。

* * *


「カミロ様、もうすぐシールドの耐久限界に達します」
「心配はいらない、ルイーゼ。ただの人間の身で、我がシュバルツ・フリーゲを倒せる道理など――ないッ!!」
 他の量産型――『偽者』と一緒にされては困る。
 このシュバルツ・フリーゲこそ今の自分達のイコンの原型(オリジナル)。ただ一つの存在。
 そして唯一自分達が駆ることを許されている。その自負がある限り、決して負けることはな出来ない。
(ジェイダス! 私は――ッ!!!)
 
* * *


 シュバルツ・フリーゲは健在だった。
 すぐに機関銃とランスを構え、覚醒したイコンを迎え撃とうとする。
『それがお前達の「真の力」というやつか。来い。どれほどのものか、確かめてやろう!』
 ここからは本気だ。
「辻永さん、これならきっと……行きましょう」
 魔弾ではない、シフ・リンクスクロウの駆る【コキュートス】がカミロ機に肉薄する。
 サーベルを抜き、斬る瞬間だけビームを顕現させる。
『甘い!』
 ランスでそれを払う。
 その直後、敵のシールドにビームライフルを突きつける。射線の先にあるのは頭部だ。
「今度は、貫きます」
 引鉄を引く。
『無駄だ!』
 ビームライフルの出力程度は破れない。はずだった。
『何ッ!』
 シールドが効力を失う。耐久限界に達したのだ。
 所詮人の攻撃だとどこかで慢心していたが故に、ダメージの本当の深さに気付いていなかったのだ。
『翔、行くぜ! タイミングを合わせろ!』
『ダリンちゃんもいくでぇ! みんなで力を合わせるんやぁ!!』
 二機のイーグリットが、シュバルツ・フリーゲを挟み込む。
 敵の機関銃が火を噴いた。
『どうしたどうした!? 当たんねぇぞ、そんなもの!!』
 軌道が読める。
 それでも避けきれないものは、サーベルで斬ってしまえばいい。あるいは、身体をひねらせて弾き、ダメージを軽減する。
「……ち、痛ぇ。でも、これでこそオレの体よ!」
 本当にイコンと一つになったような感覚で、カミロ機の目と鼻の先にまで辿り着く。
「翔、合わせるぞ」
「ああ、この一撃に――賭ける!」
 翔のイーグリットも、その姿に急接近する。
『カミロ。お前は言ったな。イコンは新しい力、強大な兵器だと』
『それがどうした?』
 翔が確信した。
『お前がそう思ってるのなら、今の俺達には勝てない。イコンはただの兵器なんかじゃない』
 ビームサーベルを振りかざす。

『俺の、俺達の――「絆」だ!!』

 翔、そして鬼羅が同時にサーベルを振り下ろした。
 その二本の光をシュバルツ・フリーゲがランスで受ける。
「ぉぉぉぉぉぉぉぉおおお!!!!!」
 ランスが折れ、そのまま二本の光の刃は、カミロの機体を斬り裂いた。