校長室
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第4章 百合園に集まりて 個別面談が進められる中、パーティ会場にも一通り百合園の参加者と招待客が揃い、会場には笑みが溢れていた。 「えへへ、今日は頑張ってチーズケーキを焼いてみましたー」 「おおーっ! すごいすごい〜♪」 稲場 繭(いなば・まゆ)がテーブルの上に出したチーズケーキを見て、アユナ・リルミナルは目を輝かせた。 「アユナはフルーツゼリー作って来たよ」 アユナはクーラーボックスの中から、ゼリーを取り出すと、同じテーブルについている人達に、配っていく。 「繭ちゃんは何がいい? オレンジとグレープとグレープフルーツがあるよ!」 「それじゃ、私はオレンジを戴きます」 「はいどーぞっ。エミリアちゃんは何にする?」 繭の隣に座っている繭のパートナーのエミリア・レンコート(えみりあ・れんこーと)にも、アユナは尋ねる。 「それじゃ、グレープフルーツを貰うわ」 「グレープフルーツね、了解っ! それじゃ、アユナはグレープにしよっと。えへへっ」 アユナはグレープフルーツゼリーをエミリアの前に、自分の前にはグレープゼリーを置いて、笑みを浮かべた。 「私からは食べ物じゃないけど」 エミリアが持ってきたのは、ティーカップ。 その中に、給仕の生徒に紅茶を注いでもらう。 「ありがとー。ケーキと一緒だから、砂糖なしでいいかなっ」 エミリアが持ってきてくれたカップに入った紅茶を一口飲んでから、アユナはさっそく繭が作ってきてくれた、チーズケーキにフォークを伸ばす。 「うーんっ美味しい! 口の中でとろける〜。繭ちゃん、ケーキ屋さんになれるよ! お店開いたら、沢山買いにいくからね!」 「ケーキ屋さんですか……。お金を戴けるようなものはまだまだ作れませんけれど」 「ほかに何か夢があったりする? 今日面談した人は、将来の夢とか聞かれたみたいだけど」 「うーん」 繭は少し考えたけれど、首を左右に振る。 「あまり実感がわかないですねぇ」 「私の場合そういうのとは無縁だけど、自分がやりたいことがはっきりしてれば自ずと見えてくるんじゃないかな?」 エミリアは紅茶を飲みながら、そう答える。 「アユナさんは何かあります?」 繭が問いかけると、アユナは強く頷いた。 「アユナは……有名になって、アイドルにアタックできるようになりたいっ」 「どう有名になるんです?」 「それはわかんなーい。やりたいことを仕事にできればいいんだけどね! アイドルの追っかけの仕事とかないしね〜」 そう言って、アユナは笑い、繭もくすくす笑みを浮かべる。 「繭も何かやりたいこと見つけないと……そうだ、怪盗として世界を飛び回ってみる?」 エミリアがちょっと悪戯気に聞いた。 「やりたいこと……かぁ」 繭は思いを巡らせてみる。 事件の時にした格好のこととか……思い出して、ちょっと赤くなったりして。 「あの恰好を続けるのは絶対に嫌ですけれど、でも世界を見に行くのは悪くないかもしれない」 ここ、パラミタに来て、たくさんの人と出会った。 たくさんの友達ができた。 顔を上げれば、アユナの笑顔があって、同じテーブルには百合園の学友達の姿がある。 「こうして親友と語り合うことは、以前では考えられませんでした……」 だから、いろんな所へ行ってみればもっといろんな人と出会えるのかもしれない。 そうやって、自分の世界を広げていきたい。 そんな風に、思い始める。 「世界を回りたい……。将来の夢とは違うかもしれませんけど、それが…やりたいこと、かな?」 繭の答えにエミリアはにやりと笑みを浮かべる。 「私としてはかわいい女の子をたっくさんげっちゅしたいわね」 「それも出会いたいってことだよね。2人で旅するのかな? いいなーいいなー。ずっと一緒は無理だけれど、たまにはアユナも2人に会いに行くんだからっ」 「はい、その時は喜んで。アユナさんに見知らぬ土地を案内してあげられたら素敵ですね」 「うん! ホームシックにかからないように、地球やヴァイシャリーやタシガンのお土産、沢山もっていくからね」 「それは楽しみ。可愛い女の子のお土産も頼めるかしら?」 「もー、エミリアちゃんてば〜。繭ちゃんはちょー可愛いし、アユナももっと可愛くなるから2人だけで許してっ♪」 「ま、その時だけは許してあげるわ」 3人は顔を合わせて笑いあって。 美味しいケーキとゼリーを、紅茶と共に楽しんでいく。