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「選挙、楽しみですわねぇ。女同士のぶつかり合い面白そうなことになりそうですわねぇ……」
「リナさんったら……まったく、もう」
「冗談ですわぁ。ふふ」
 雷霆 リナリエッタ(らいてい・りなりえった)が面談の相手に選んだのは、白百合団の団長の桜谷 鈴子(さくらたに・すずこ)だ。
 彼女達の会話はいつものような和やかさで始まった。
 最初の質問の『将来の夢』には、リナリエッタはパラミタでの就職を考えていると答えた。
 現時点ではパラミタ永住を視野に入れていると。
「百合園女学院やヴァイシャリーは綺麗な所。大好きですわぁ。だから出来ればそこで生活したいなぁと何となく考えていますわぁ」
「そうですね。私も同じような考えを持っています」
「具体的には、卒業後、ヴァイシャリーでブティックとか貴族向けの洋服を販売する仕事をしてみたいですわぁ。百合園在学中に、ヴァイシャリー家かその縁の貴族の方とコネが欲しいわぁ。なんてねぇ」
「難しくはないと思いますわよ。コネを活かせるかどうかはわかりませんけれど」
 ふふっと鈴子は笑い、リナリエッタに合った仕事だと思うと続けた。
「で、鈴子さんはどうするんですかぁ? 鈴子さんにぃ、お見合いの話が来ているってマジですかぁ? どういう家の人ですかぁ? イケメンですかぁ〜」
「マジですか? ではなく、本当ですか? と聞いてくださいね」
 くすりと笑みを浮かべて、鈴子はリナリエッタの質問に答えていく。
「お見合いの話は、私だけではなく百合園生に沢山届いています。特に生徒会メンバーには多いですわね。私はまだ写真も身上書もほとんど拝見していません」
「でも、私には来てないのよねぇ。羨ましいわぁ、私もイケメンを早くゲットしたいわー」
「リナさんの頭の中って……」
 苦笑しながら、鈴子は書類をめくった。
 続いて、パラミタで困っていること、気になっていることについて、鈴子はリナリエッタに問う。
「鈴子さん、私、恋愛観について悩みがあるんですよぉ」
「恋愛観ですか」
 頷いて、リナリエッタは考えを語り始める。
 女の幸せは結婚。そういう考えも分かる。
 お見合い結婚も必要だし、それで幸せになる女の子もいる。
 自由奔放に振る舞ってきた自分にとてって、結婚は恋愛の延長。だから別に結婚しなくても恋愛出来ればそれでいいと考えている。
「誰かのために結婚をする、とか。逆に結婚を待つっていうの、理解できないんです」
「無理に理解しなくても、いいと思いますわ。どの考えが正しく、その考えに沿って生きなければいけないなどというこはないのですから」
「でもねぇ……」
 吐息をついて、リナリエッタは尋ねる。
「鈴子さん、ミルミちゃん達のために結婚を待ってるって本当?」
 鈴子が見合いを断っているという噂をリナリエッタも耳にしていた。
 だけれど、パートナー達をも受け入れてくれる人ならば、検討したいと思っているらしいことも。
「なんで結婚を我慢するの? ……家の事情とか?」
「我慢、といいますか……。まだお相手もいませんし、ね。ただ、私はパラミタで生きていこうと決めましたので、ここで自分の後ろ盾にもなってくれる、伴侶を見つけたいと思っていますわ」
 鈴子の答えに、リナリエッタは訝しげに首を傾げる。
「鈴子さん。本当にその人を好きになって……結婚するんですかぁ?」
 表情はいつもとさほど変わりない顔で、こう言葉を付け加える。
「人の恋愛に口を挟むなんて、失礼ですよねぇ」
 軽く笑みを見せた後、鈴子は答える。
「希望に合う方がいたとしても、好きになれない人との結婚を考えることはありませんから、結婚をする時には、好きになって結婚をしますわよ」
「ん〜、鈴子さんにとっては、恋愛と結婚は別なものなのかしらぁ?」
「そうですね。私はもうライナの母親のつもりでいます。家族の幸せが一番ですわ。……でも」
「でも?」
 リナリエッタが聞き返すと、鈴子は少し恥ずかしげな笑みを浮かべた。
「何でもありません。さて、リナさんのお話ももう少し聞かせてください。どんな『イケメン』が好みなんです?」
「それ、面談とは逸れてますわぁ。イケメンについてなら、何時間でも語れますれどぉ」
 にやにや笑みを浮かべながら、リナリエッタはイケメンについて語りだす。
 鈴子も素敵な男性に、興味がないわけではなさそうだった。