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 姫野 香苗(ひめの・かなえ)は、開口一番こう言った。
「女の子同士の付き合い方について教えてください!」
「え? ええっ? ふ、困ってることや気になってること、って僕聞いたよね……?」
 静香、自分の質問を思い返す。
 ──パラミタでの生活で困っていることや、気になっていることはある?
「香苗が百合園での生活で不満に思うのは、自分と一緒に学園生活を一緒に楽しんでくれる女の子が少ないことなんです。女子高の百合園なら香苗の希望が叶うと思って入学したのに、女の子は香苗がスキンシップで抱きついたりしただけで逃げちゃう子がほとんどなんです! どうすればみんなが香苗のことを受け入れてくれるんですか?」
「えー、えっと、女の子同士……なんだよね、あの、僕にはむずか……」
「静香校長なら、こんな相談でも真剣に考えてくれる、って思ったんですけど……」
 香苗が身を乗り出す。
 うるんだ目で見つめられて静香、たじろぐ。
「あ、うん、そうだよね。どんな相談だって大事なことだよね……」
 でも静香は男なわけで、どこから何をどう話せばいいものやら。さっきの香苗のセリフを思い出してみる。
「うーんと、スキンシップで抱きつくっていってたけど、初対面でもそうするの?」
「はい」
「遊んでくれる友達が欲しいなら、それはちょっとやりすぎかも……そういうスキンシップは、大分仲良くなってからの方がいいと思うなぁ」
 香苗が女の子が好きで、過激なスキンシップをしたがるのは静香も知っていた。彼女の恋愛対象が女の子だということも。
 確かに過激なスキンシップも珍しくない学校ではあるのだが……、はじめっからそれはちょっと引く女の子が多いだろう。
「そうですか……香苗も薄々そんな気はしてたんですよね」
「やっぱり会話からだよね。あとお茶を飲んだり……」
 静香の顔がみるみる赤くなる。
「──仲良くなったら、手をつないだり……とか」
 女の子同士が手を繋いで校内を歩いているのはよく見かける。白くて柔らかそうな手だ。仲が良い様子は見ていて微笑ましい。
 もっとも、“彼女”の手はいつも槍を握っていてマメができていたりしたけれど……、それだけ頑張っているのが伝わってきて、すごく──。
「静香校長?」
 顔を赤くする静香に首を傾げる香苗。
「そうだね、まずはそこから始めたらいいんじゃないかな。女の子同士の関係に積極的な子もいるし、そういう子なら、姫野さんとも話が合って、いい友達になれるんじゃないかな?」
「──はい! ありがとうございました! 香苗、頑張りますっ」
 とは言っても、香苗のそれがどれだけ続くのかは疑問ではあった。
 なんといっても、面談室を出てパーティ会場に戻る途中、可愛らしいお姉様を見つけてしまったのである。
 香苗が一直線に向かっていったのは言うまでもない。