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 少しの休憩を挟んだ後、ラズィーヤの面談が再開される。
「よろしくお願いします」
 次に、彼女の前に現れたのは、白百合団員の桜月 舞香(さくらづき・まいか)だった。
 舞香は椅子に腰かけると、目の前で資料に目を通しているラズィーヤを真剣な表情で見つめる。
「何かおっしゃりたいことがあるようですわね。どうぞ」
 こくりと頷いて舞香は口を開く。
「初めに、誤解のないように申し上げておきますけれど……。あたしはこの百合園のことは好きですし、校長先生のこともとても優しくて、素晴らしい先生だと思っています」
 そう前置きをした後、舞香はゆっくりと語っていく。
「百合園で気になることといえば……。この由緒正しき女子高たる百合園女学園に、女装すれば男子でも入学できるとか根も葉もない噂が流れていることでしょうか? もちろんあたしはそんな話信じていませんけど」
 舞香の言葉に、ラズィーヤはただ笑みを浮かべているだけだった。
「更衣室もトイレも女子用一つしかない女子高にそ知らぬ顔して男子が混じっててアレもコレもみんな見られてるなんて、考えただけでもぞっとしますよね。そういえば校長先生にも色々なお噂があるみたいですけれど……パートナーとして、学校の責任者のお一人として、どうお考えです?」
 じっとラズィーヤを見つめて、舞香は問いかける。
「どうしてそんな噂が流れたのでしょうね? 女装すれば誰でも入学できるなんて、そんなことはありませんのに。素質がありませんと」
 くすりと、ラズィーヤは笑みを浮かべる。
 舞香は軽く息をついた後で、話を続けていく。
「内心でみんなを騙しながら、上っ面の外見だけ華やかに取り繕って何食わぬ顔で振舞う……大和撫子の心を学ぶ我が校にあってはならないことですよね」
「完璧にふるまわねばなりませんわね」
「……」
 ばれないように、完璧に振る舞えればいい。
 そう言う意味だろうか。
「ラズィーヤさんはヴァイシャリー家の方として、シャンバラ復興の為に大変ご尽力されていると承知しています。その為に、この百合園の運営にも携わっておられると……それを承知で、敢えて聞きます」
 舞香ははっきりとした口調で。真剣な目で、ラズィーヤに尋ねる。
「百合園の実質的なトップとして、それでも。
 百合園より、校長先生より、シャンバラの国が大事だと、お考えですか?」
「シャンバラの復興の為に、この百合園女学院はあるのですから――そして、静香さんの存在も。だから、どれが大事などはございませんわ」
「シャンバラの復興の為……」
「他の学校より、百合園女学院はシャンバラ寄りですから、皆様が疑問に思うようなこともあるのかもしれません」
「そう、ですか。では……ラズィーヤさんからみて、今の百合園はどのように映っておられますか?」
「わたくしの仲間であり、可愛い妹達が通っている学校ですわ」
 その答えに、舞香はこくりと頷いた後、立ち上がってお辞儀をした。
「お伺いしたかったことは、それだけです……」
 面談を終えると、舞香は気持ちを切り替えて、パーティへと戻っていく。
 パーティでは鈴子の傍に座るつもりだった。
「その前に、調理室に行かないと。そろそろ焼きあがるはずだから!」
 舞香が用意したのは、焼きたてホカホカのパン…だ。
 ティーパーティの必需品だから。きっと鈴子も喜んでくれるだろう。