リアクション
卍卍卍 【西軍】 「現示くん、ごめんね。ボクが軽い気持ちでここへ連れてきたばっかりに……」 「てめー、さっきから謝ってばっかじゃねーか。いいから、俺は好きでここにいるんだからよ」 合戦が始まってから、小二時間が経過した。 西軍は奮戦し、敵を撃退してゆく。 西軍の侍大将を務める日数谷 現示(ひかずや・げんじ)は、桐生 円(きりゅう・まどか)に向かって言った。 「たとえ、てめえに連れてこられなくても、いてもたってもいられなくなって、自分から来ただろうよ。いっぱしの瑞穂藩士が、瑞穂国の祖瑞穂 魁正(みずほ・かいせい)様にも、天下人日輪 秀古(ひのわ・ひでこ)太閤殿下にもお仕えしたんだぜ。こんな名誉なことがあるかよ」 西軍は現在、有利にある。 しかし、オリヴィア・レベンクロン(おりう゛ぃあ・れべんくろん)が、冷静に状況を分析している。 「あの東軍のイコンはやっかいですわね。もしものときは、わたくしたちが殿を務めますわあ」 「もしも、なんてねえ。絶対に勝つ。それ以上言うと、ここで裸にひんむくぞ」 「まあ……下品ですわね。でも、それだけの元気があるのでしたら、心配いらないかもねえ」 「瑞穂の数千年の未来がかかってんだ。死んでも退けるか」 東軍の鬼城 貞康(きじょう・さだやす)のもとには、未来人……すなわち現示と同じ時代の人間が、イコンを持ち込んでいることは知っていた。 ゆえに、西軍もイコンを欲してた。 「よーし、西軍に加勢してやるぜ。この俺がなあ!」 柊 恭也(ひいらぎ・きょうや)はイコン屠龍で参戦していた。 イコンは通常二人乗りで設計されているため、パイロット一人では真価を発揮することはできない。 また、稼働時間も限られている。 彼の目的は、生体兵器に近いといわれる鬼鎧のデータを取ることにあった。 「さあて、鬼鎧のオリジナルがどんなものか。試させてもらうか。鬼鎧はどこだあ?」 合戦が始まって小二時間は経過しただろうのに、この時代のものと思われる鬼鎧はまだ姿を現さない。 魁正もじりじりとした様子で、葦原の鬼鎧が投入されるのを待っているだろう。 「朱鷺が行きましょう」 東 朱鷺(あずま・とき)が進み出る。 「初めて出会った頃は只の陰陽師でしたが、今は八卦術師です。八卦術師の強さをこの時代に刻んで差し上げましょう」 「あれは……陰陽術? いや、八卦か。やっかいだな」 レギオン・ヴァルザード(れぎおん・う゛ぁるざーど)は西軍に偽装し、紛れて活動していた。 彼は西軍を内部からかく乱するために密かに動いていた。 「八卦の恐ろしさから、逃れることができますか?」 朱鷺の八卦術が敵味方もろとも容赦なく襲いかかる。 レギオンは舌打ちした。 「どんな名誉も報酬も、生きて帰ってこれてこそ……下手な名誉に走るよりは、適当な手柄を立てて死なないように暴れるだけだ……あれは味方……東軍か?」 レギオンは、西軍の中でも奇妙な動きをする一団に気付いた。 如月 正悟(きさらぎ・しょうご)の送り込んだ遊撃隊である。 「……頃合いか。合流させてもらう!」 「そうはさせないよー! ねえねえ、もっとミネルバちゃんと遊んでよー!」 ミネルバ・ヴァーリイ(みねるば・う゛ぁーりい)が先に回り込んでいた。 使い慣れた大剣を構え、盾のようにして突撃してくる。 「水平に件を振り回すと楽しーよ。超楽しい!!」 ミネルバの笑い声がこだまする。 前線は一進一退のこう着状態に陥っていた。 |
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