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イケメン☆サマーパーティ

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イケメン☆サマーパーティ

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お菓子に集う人々

 楽しんでいる会場の熱気をさらに熱くする放送が、清泉 北都(いずみ・ほくと)によりメイン広場に響き渡る。
「お祭りに参加しているイケメンのみんな! 待ちに待ったコンテストのお知らせだよぉ〜」
 自信のある者、それを見るのを楽しみにしていた者がそれぞれに歓声を上げて詳細の報告を待つ。
 どうやら写真による人気投票に勝ち残った者だけがモデルのようにウォーキングパフォーマンスをして自己PRが出来るという流れらしい。
 実行委員長の麻野 樹(まの・いつき)は、少しでも参加者を獲得して祭を盛り上げようと、地道に勧誘を行っていた。
「ねぇ、君ぃ。イケメンコンテストに参加しない? 優勝したら、ルドルフ様他のイエニチェリの方々とお近づきになれるよ♪」
 微笑みを浮かべながら勧誘をすれば、きっと権力に興味のある人たちは参加してくれるはず! そう思ったのに、実際はなかなか難しい。
「ゆっくり好みの男の子を見て眼福しようと思ってたけど……無理かぁ」
 どちらかと言えば、参加するより見る側でいたい人が多いらしく、良い席でイケメンを見ようとステージ前に人が殺到してきてしまった。
 あまりの人数に動揺しながらも、日奈森 優菜(ひなもり・ゆうな)は勇気を振り絞って人員整理を名乗り出る。
「兄さんも今頃頑張ってるし……みなさん、押さないでください! 写真投票の間、ステージはライブパフォーマンスがあります。入れ替えを行いますから、まずはライブを楽しみたい方から順にどうぞ。コンテスト観覧の方はこちら側に4列でお願いします」
 優菜の迅速な対応により、ステージ前は混乱を回避することが出来た。そして、その長蛇の列を見て、近隣の食べ物屋は待ち時間にと自慢の品々を販売にやってくる。
「美味しいたい焼きだよ〜 味はカスタード、餡子、チョコレートの三種類!たい焼きと相性抜群のお茶もあるよ〜」
 遠くから聞こえるサトゥルヌス・ルーンティア(さとぅぬるす・るーんてぃあ)の声に白河 童子(しらかわ・どうじ)が振り返る。聞き慣れない言葉と甘い香りに興味を持ってキョロキョロしていると、高谷 智矢(こうたに・ともや)が優しく微笑んだ。
「鯛というお魚の形をしたお菓子ですよ。食べてみますか?」
「たいやき……甘いの?」
「えぇ、帰ったらしっかりと歯磨きをしなければなりませんよ」
 そのやりとりを聞いていたかのように、出張販売に来たアルカナ・ディアディール(あるかな・でぃあでぃーる)は、屈んで童子に試食用のたい焼きを渡す。
「おら少年、食ってみな。旨かったらいっぱい買ってもらえ」
「ん……むぐむぐ…………おいしいっ! ともやさん、これ、もっとほしい!」
 懐かしい笑顔に胸を痛めながらも、頭を一撫でして1つずつ買ってやることにした。
 そうして、仲良く分け合って食べているとき、良く知っている風森 巽(かぜもり・たつみ)の声が聞こえてくる。
「先生! こんな所でお会いするとは……」
「風森、さん? あなたは一体なんという格好をしているのですか」
 確かに男性だと記憶していた彼は、売り子のためか大正時代を彷彿とさせる女学生の出で立ちで、この男子校でのイベントには些か不釣り合いだと思わせた。いや、決して似合っていないわけではない。だからこそ問題な気もしなくはないのだが……。
「やはり、男子校ですからね。我が少々服装を変えるだけで売り上げが伸びるならこの程度!」
「……おいしそうな匂いがするね」
 たい焼きを食べ終わってから、ひょっこりと智矢の影から顔を出した少年に驚いた巽に、思い出したように童子を紹介する。
「私のパートナーの、白河童子です。風森さんにはご紹介がまだでしたね」
「はじめまして」
 ぺこりとお辞儀をされ、丁寧にお辞儀を仕返すとティア・ユースティ(てぃあ・ゆーすてぃ)の少し怒った声が聞こえてくる。
「巽ーっ、ちゃんと仕事してるの? シャンバランショーが見れなかったら、巽のせいだからね!」
「しまった、それではそろそろ戻りますね。それでは、これをお土産に」
 そう言って売り物であっただろう焼きトウキビと揚げ芋を手渡し、急いでティアの所に戻っていった。
 そして、広場で露店を広げていたものの、突如押し寄せた人波にやむなく撤去せざるをえなくなった神代 正義(かみしろ・まさよし)大神 愛(おおかみ・あい)の2人は、聞こえてきた声の元を懸命に探していた。
「シャンバラングッズをたくさん取り扱っているぜ! パラミタ刑事シャンバラン、どこで呼ばれたんだ!?」
 フィギュアになりきりセットにとたくさんのグッズを用意した正義は、なんとかして早く商品を売りたかった。早くしなければ、世界の平和を守らなければならない自分が捕まってしまうことになるからだ。
「え? シャンバランのグッズ!?」
 まるで憧れの先輩でも見付けたようなときめいた声に振り向けば、シャンバランを愛する者がいた。ティアのキラキラした表情に、持っている商品を揚げ芋を作ってる隣に並べ始める。
「今なら、劇場版パラミタ刑事シャンバラン(製作未定)のパンフレットも付きますよ!」
「ホント!? じゃあ、売り上げもそこそこあるし、これで全部買い占めちゃおっかな〜」
 とはいえ、そんなことをしては巽に怒られてしまうと、迷いに迷って厳選した商品だけを購入したティア。なんとか売り上げを確保することが出来た正義も次なるシャンバランを愛する者を探そうと祭会場をまわろうとしたのだが。
「君、出店許可証は?」
 店舗リストを持った、警護担当の生徒に捕まってしまった。
 振り切ることも出来ただろうが、他校でシャンバランが揉め事を起こせば、シャンバランを愛するファンたちを傷つけてしまう。
「神代さん、どうしたんですか? あたしは預かってないですよ?」
「当然だ、これは無許可出店だからな!」
 自信満々に言放つが、罪を認めたところで状況が良くなるわけもなく、現行犯として捕まってしまった。
「す、すみません! あたしが付いていながら本当に……神代さんもほら、謝ってください!」
「本来なら、祭の場ということで注意ですませたいのだが……こちらにも事情があってね。陽が落ちるまでに退去して頂きたい」
 違反を行った者として、この処罰は当然だろう。むしろ、考えようによっては軽いのかも知れない。
「仕方ない、さっきの売り上げで少しだけお土産を買って帰るか」
「……はぁ、ホントは一緒に屋台をゆっくりまわりたかったのにな」
 寂しそうな顔をする愛に申し訳なく思いながらも、シャンバランを待っている者が各地にいることだけでも実感することが出来た正義は、満足そうな顔で薔薇の学舎を後にするのだった。
 そんな騒ぎも気にせず、葉月 アクア(はづき・あくあ)が人混みをかき分けながらやってくる。
「まだこんな所にもお店があったのね。ショウ、食い倒れツアーのみなさんにお知らせしなくては」
 追いかけてきた少年、葉月 ショウ(はづき・しょう)は疲れながらもお店の方を見る。ここにはたい焼きに焼きトウキビを扱う2店が並んでいるようだから、食べられない量ではない。
 全制覇を仲間と誓ったので、知らせるのも構わない。しかし……
「ここはアクが出せよ。親善露店のは全部俺のおごりだったろ。もうサイフ空っぽだぜ?」
「私にそんなことを言っていいんですか? ショウさん」
 わざとらしくさん付けをしてにっこり微笑めば、たじたじになるショウ。どうやら、機嫌が悪くなるようなことをしてしまったらしく、今日は彼女に逆らえそうにない。
「わかった、わかったよ! でも今度からは1人1個じゃなくて半分ずつだからな」