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リアクション
学生たちは再び籠城を再開しようと、サークル棟に走る。
だが、サークル棟は機動隊と装甲突撃軍によって制圧封鎖されてしまい、昨日サークル棟を去ったものは二度と戻ることはできなくなった。
何より、サークル棟にはバリケードがなかった。
機動隊員の盾の前で学生たちは力なくうなだれるしかなかった。
と、その時。
屋上に再び、赤旗が翻った。
その赤旗を掲げる少女、ヘルメット姿の少女は、間違いなく南野茜だった。
となりに付き従うゲルデラー博士が拡声器で叫ぶ。
「シャンバラ全土の斗う全ての労・農・学の同志の諸君! 一度は中断されたこの放送は、例えどんな試練があろうとも今日のように再開され、そして、そして、真にシャンバラが解放されるその日まで、連続的に決起していくものであります!」
大歓声が上がった。
狐につままれたような機動隊員をよそに、学生たちはこれを熱烈に歓迎した。
「殺れ」
ハツネがそう指示した瞬間、ゴーレムから機関砲弾が撃ち込まれた。
屋上部の壁面が粉々に砕け、粉塵で茜たちの姿が消える。
指揮官の命令一下、機動隊員と三道や相沢たちの鎮圧軍が1階正門から屋内へ突入する。と、吹き抜けの上層階から真紀や大岡たちが火炎瓶を振らせる。
「吹き抜けの真下を避けろっ! 盾を掲げて屋根をつくれっ」
相沢が叫ぶ。
「おぬしら、このワシに続けっ。相手は学生ではない、外部の過激派だ。容赦無用っ!」
三道が抜刀して階段を駆け上がっていく。
「順調なようザマスね。おい、そこの伝令、ゴーレムに3階から4階のフロアの壁面へ無差別に発砲させるように伝えろ」
「了解であります」
そういってにやりと、その『伝令』は笑った。学生側から依頼された『彼女』は、ずっとその瞬間を狙っていたのだ。
「何ザマスかっ、早く行くザマスっ!」
「残念だったな」
セリス・ファーランド(せりす・ふぁーらんど)は小太刀を抜くとハツネに手を伸ばす。
「何っ……!?」
セリスがハツネの腕をつかんだその瞬間、そこへハーレックの持つ曲刀が振り下ろされた。瞬差でセリスが手を引いていなかったら腕を切断されていただろう。セリスが「一瞬」を狙っていたのと同様、ハーレックもまた「一瞬」だけを警戒していたのだ。
「……閣下、お怪我は?」
「無事だ。助かった」
「ちっ、なら殺すよりないか……」
「殺される、の間違いでしょう? お嬢ちゃん」
「……!? 上かっ?」
ふとセリスが空を仰ぐと、装甲突撃軍の戦闘飛行箒に乗った魔女たちがセリスめがけまっすぐに急降下してきていた。
が、その魔女たちに側面から射撃を加えた者たちがいた。
小型飛空艇に載った間黄がすり抜け様にアサルトカービンで狙い撃ったのだ。
魔女のひとりは墜落し、他の何機かは旋回して間黄を追った。
刻を置かずしてゴーレムをファイアーストームが襲う。
「これはこれはハツネ先生ィ、遠いところまでご苦労サマだな?」
ブラックコートで気配を消したウィルネストが突然現れる。ウィルネストの連れていたレイス3匹も魔女たちと空中戦に突入する。
そしてさらに物陰からブラインドナイブズの刃が襲いかかる。寸差でハツネは身をかわし、拳銃を発砲するが、光学迷彩に身を包んだ佐野は、そのまま背後に回り込む。と、突然1機のゴーレムが爆発炎上する。一ツ橋とグロリア、それに九竜が一斉に襲いかかったのだ。
「閣下、もう1機のゴーレムと私とで時間を稼ぎます。撤退を……」
ハーレックもそう進言するしか道は残っていなかった。
その様子をテレビで見ていた日村は、慌てて生徒たちの論文データを処分しようとPC端末を操作に駆け寄った、が、キーボードが宙に浮くとぐしゃりと折られてしまった。
「何が起こったか理解できんようだな」
ブラックコートを羽織った鬼崎 朔(きざき・さく)が突然姿を現す。
驚き、おびえた日村は、ゴーレム操作用の魔法の指輪をかざすが、一向に動き出す気配がない。
「庭にある馬鹿でかい置物なら、先ほど私が首を削いでおいたが……そんなことよりどうやら取材カメラがもう来てるらしいぞ。だろ?」
と、後ろを振り向いた。
「えへへ。取材のアポ、取ってあったよね?」
そこには先日やってきたカメラ小僧、雅がちゃっかりお邪魔していた。
日村自宅からの独占スクープ放送が流されたことで、サークル棟の攻防戦も終結した。機動隊がまず引き上げ、それからサークル棟で最後まで闘っていた戦士たちが降りてきた。大歓声をもって迎えられた全学連の戦士たちの中に、なぜか茜の姿だけがなかった。
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