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リアクション
その決起が始まった翌日、寒極院 ハツネ(かんごくいん・はつね)率いる青少年健全育成装甲突撃軍の1個大隊、ゴーレム30機と直接支援航空隊18機からなる戦闘部隊は、イルミンスールからウァイシャリーに流れる運河を貨物船で移動していた。
その貨物船の船首デッキに、3人の黒衣の軍装の将校が立っていた。連隊総司令官のハツネと、第2大隊指揮官、ガートルード・ハーレック(がーとるーど・はーれっく)とルース・メルヴィン(るーす・めるう゛ぃん)だった。ハーレックは第一次マジケット戦争でゴーレム軍団の指揮をとった古参であり、メルヴィンは第二次マジケット戦争で装甲突撃軍に参加した一兵卒だった。
ふたりは突撃軍の再編にあたって階級を与えられ、ハーレックの襟には大隊指揮官である少佐を表す階級章が、メルヴィンの襟には小隊指揮官である少尉を表す階級章と、副官である事を示す飾緒がついていた。
「ハーレック少佐、もう少し何とかならないのか? これではいつ到着するかわからないザマス」
「なにぶんゴーレムが重すぎますので……航空隊だけでも先行させますか?」
「よい。空からちまぢまと嫌がらせをしても意味がない」
ハツネはポケットから葉巻ケースを取り出して1本くわえる。
「少尉、火はあるザマスか」
メルヴィンがオイルライターを差し出してハツネの葉巻に火をつける。
ハツネは紫煙をくゆらせ、ふっと吐き出す。
「よい香りですな。キューバですか?」
メルヴィン少尉が尋ねる。
「詳しいな。吸うか、少尉?」
「いえ、自分は」
ふん。とハツネは言い、ポケットにケースをしまう。
「なぜかな。これから戦地へ向かうというのに、不思議と高揚感がわかないザマス。それに最近は昔のことばかり思い出す」
ハツネは船の行く先をながめながら独り言のようにつぶやく。
「疲れているのか、それとも老いてしまったのか……どう思う? ハーレック」
「私にはあの最初の戦いのときから何も変わらぬハツネ様であられると思います」
ハーレックがそういうとハツネは苦笑した。
「ふっ……まあいい。私は少し休む。後は任せる」
ハツネはくるりときびすを返して戻ろうとした。その瞬間、激しい轟音と水柱と衝撃が貨物船を襲った。ハツネたちは身を崩して甲板に叩きつけられ、土砂降りの水をかぶる。
「何ザマスかっ!?」
「機雷です! 右舷に損傷、浸水中!」
慌てて駆けてきた兵士が早口で告げる。
「損害は? 持ち直せるか?」
ガートルードが尋ねる。
「致命的ではありませんので、なんとか」
「急ぎなさい」
「はっ!」
そういうと兵卒は駆け戻っていった。
「閣下、これは……」
メルヴィンがハツネに問いかける。と、ハツネは、
「ゲリラ戦か。やってくれるザマスね、南野茜。ふふふふふ……」
「閣下?」
「いい気付け薬になったザマス。ハーレック、メルヴィン、あの生意気な娘の顔をブーツで踏みにじりにいくザマスよ」
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