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リアクション
サークル棟屋上から次々と火炎瓶が投てきされる。
それは地上で砕けて火の海を作り、ジュラルミンの盾を焦がす。燃料が付着し、逃げ惑う隊員に消化器が浴びせられる。
機動隊側も放水車から高圧放水を開始、容赦なく催涙ガス弾やゴム弾が窓や屋上の人影に打ち込まれ、学生をなぎ倒していく。
ジーベックとヴェーゼルは鉄球付きクレーン車を前面に押し出し、クレーンをゆっくりと動かす。クレーンの先端から伸びるワイヤーに吊された鉄球がゆっくりと後退し、振り子のように次第に加速していく。
比島 真紀(ひしま・まき)とそのパートナー、ドラゴニュートのサイモン・アームストロング(さいもん・あーむすとろんぐ)は、屋上から火炎瓶を大学警備員たちに投げつけていた。
「真紀、あれを見ろ!」
サイモンが指さした先に『破城槌』がある。
「……! クレアさん!」
真紀はすぐさま現場指揮官のクレア・シュミット(くれあ・しゅみっと)に呼びかける。
クレアは真紀を振り返ると駆け寄って転落防止フェンスから身を乗り出して眼下をながめる。
「まずいな。バリケードをやる気か?」
クレアは真紀に、
「4階本部の茜さんに伝令頼みます。正面のクレーン車にテルミットを全弾投てき、と」
「了解でありますっ」
真紀は階段を降って茜を探す。
「茜さんはいますか?」
「茜殿のは1階ですよ」
「あなたは……」
「3階指揮官の戦部だ」
「屋上のクレアさんから伝令、正門前のクレーン車にテルミット全弾で総攻撃をお願いしますっ!」
戦部は青博士に、
「あと何発残ってます?」と、尋ねる。
「あと15発といったところだが」
「半分たたき込んでください。真紀殿も頼む」
「クレアさんは全部と」
「私は半分だと言った」
「でもっ……」
「命令を繰り返させるなっ」
「……はっ!」
真紀たちは青のところにテルミットを取りに急ぐ。
青は真紀をじろりと見つめ
「深く考えるな。今は戦い、問題はあとで解決すればよいのだ」
とささやいた。真紀はこくりと頷き、両手にテルミット焼夷弾をもって窓辺に走った。
と、その時、サークル棟全体を衝撃が襲った。
サークル棟正面バリケードの至近の壁面に、鉄球が直撃したのだ。
壁には亀裂が入り、わずかな穴が開いた。
クレーン車を操作していたのはジーベックとヴェーゼルだった。
「外してしまいましたな、ジーベック殿」
「うむ。学長から校舎を壊すなと厳命されている手前、少しまずかったかな」
そういいながらジーベックはクレーンの角度を少しだけ修正する。
と、そんなときクレーン車にテルミット焼夷弾が降り注いで砕けて爆燃する。クレーン車の運転席を業火が包み、赤々と燃え上がる。
「こ、これはまずいのではっ?」
「いや、この程度なら問題は無いっ。追加装甲は伊達ではないのだよ」
クレーン車は尚も稼働をつづけ、今度は正確にバリケードの真ん中に鉄球をたたき込んだ。
効果はてきめんだった。
堅牢なバリケードは大破し、がらがらと崩れ去る。
「おおっ、バリケードに穴がっ」
「もう一発で決まりだな……んふふふふふ」
サークル棟1階正面玄関前では、レン・オズワルド(れん・おずわるど)やラルク・クローディス(らるく・くろーでぃす)、国頭 武尊(くにがみ・たける)といった面々がそれぞれの武器を手に、今にも突き崩されそうなバリケードをみつめていた。
「どうやら俺たちの出番らしいぜ。アレが崩れたら、敵さんがここに殺到する」
レンがニヤリと笑みを浮かべる。
「そうらしいな。ちょうどいい。俺は元々守るのは苦手なんでな」
ラルクが答える。
「ふっ。そいつは俺も同感だ。真っ正面からいくぞ」
「この人数で正面対決って正気かい? 旦那」
「ああ、それがガキどもに見せてやれる大人の役割なのさ」
「こまけぇことはいいんだよ。おめーら」
パラ実の国頭が割って入る。
「パラ実はオレの庭だ。パラ実空京分校もオレの庭だ。オレの庭を踏み荒らすヤツはぶっつぶす!」
「はっはっは。パラ実は単純でいいな」
「んだと?」
豪快に笑い飛ばすラルクに国頭がくってかかる。
「ほめているんだ。単純な奴が、いちばん強い」
「へっ、また理屈かよ。これだからインテリってヤツは嫌いなんだよ」
国頭は苦笑した。
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