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【S@MP】シャンバラ復興チャリティー音楽祭

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【S@MP】シャンバラ復興チャリティー音楽祭

リアクション





4



「偵察した結果、ゴーストイコンはこっちに集まる人の気配を察知してか、御神楽音楽堂に向かいつつある。そこで、こっちとしては最大戦速で進軍しつつ……双方の速度を計算した結果、この谷で会戦することになる」
 佐野 和輝(さの・かずき)が先行し可変戦闘機S-01【グレイゴースト】で偵察した結果をモニタ上に地図で示した。
「イーグリットとワイバーン、イーグリット・アサルト、それから異界から漂着したS−01、ペガサス、アルマイン・マギウスが先行、その他の機体が第二陣、コームラント、キラーラビット、センチネルが第三陣として戦場に到着することになる。戦力の逐次投入の愚を犯すことになるのは承知のうえだが、敵の進軍を止めることを最優先に考えるとそれがベターな選択だ」
 それを引き継いで聡が言う。
「そうね。どう思うダリル?」
「賛成だな。たしかに戦力の逐次投入は危険だが、ゴーストイコン相手ならどうということはあるまい。それよりも敵がこの御神楽音楽堂に近づくことを阻止するのが最優先だ」
 ルカルカがダリルに尋ねると、ダリルは聡に賛同した。
「それから、生身で参戦する連中は第一陣のイコンに同乗することになる。戦場についたらコクピットから降りてくれ」
『了解』
 生身で参戦するメンバーが一様に声を上げる。
 幸い、麓の村からは離れている。地上の被害は気にする必要なく戦える。
「部隊分けは、行わない。今回は鷹村 真一郎(たかむら・しんいちろう)さんに指揮を一任することになる。シャンバラ教導団のメンツは近くにいるメンバーをまとめてくれ。異論があるものは?」
 聡がメンバーを見渡す。
「俺はドラムだけやりたいんだが……」
「よし、ないな。じゃあ、全員出撃してくれ。第一優先は音楽堂に敵を近づけないこと。第二優先が被害を出さないこと。第三優先が敵の殲滅だ」
 しかし聡はそれをあえて無視すると
「出撃!」
 と叫ぶ。
 そして、契約者たちは出撃した。



 会戦ポイントの谷――


「よし、なんとか間に合ったな」
 聡がそう言うと真っ赤に塗装されたイーグリットに乗った姫宮 和希(ひめみや・かずき)がギターを掻き鳴らす。
「よっしゃ、行くぜ、歓喜の歌、ロックアレンジ!」
 フレイが普段とは全く違うバリトンボイスで独唱を始める。

An die Freude

O Freunde, nicht diese Tone!
Sondern labt uns angenehmere
anstimmen und freudenvollere.

「全軍、突撃! 凸陣形!! まずは中央突破背面展開!」
『了解』
 真一郎の指示に従って全機が一点に集中して進む。

Freude, schoner Gotterfunken,
Tochter aus Elysium
Wir betreten feuertrunken.
Himmlische, dein Heiligtum!

「いくよ、ブーストチャージ!」
 リネン・エルフト(りねん・えるふと)がハイランダーズ・ブーツで宙に浮かび、アクセルブレスの30倍加速で先陣を切る。
 大太刀状の光条兵器、魔剣ユーベルキャリバーを水平に構えて突撃。ゴーストイコンの腹部に突き刺す。
 そしてそれを抜くとゴーストイコンの機体を駆け上がって肩の上に乗る。
 横薙ぎの一撃で首を払うと、跳躍して上昇。重力の加速とアクセルブレスの30倍加速を使用して威力をつけ、太刀を大上段から振るいゴーストイコンを真っ二つにする。
「私の剣に断てぬ悪はないのよ……なんてね」
 と、そこにゴーストイコンが3機、リネンに集中攻撃を仕掛ける。
「危ない!」
 ヘイリー・ウェイク(へいりー・うぇいく)がそれを見て叫びを上げる。リネンは回避体勢に入るとヘイリーとグレネードでリネンをフォローする。
 それと同時に美羽がミサイルポッドをフルオープン。
 ルカルカのS-01が20ミリレーザーバルカンを発射する。
 その攻撃はそれぞれ命中。一撃では倒せないがリネンが逃げる隙は作れた。

Deine Zauber binden wieder,
Was die Mode streng geteilt;
Alle Menschen werden Bruder,

「聞いておののけこの咆哮!」
 リカイン・フェルマータ(りかいん・ふぇるまーた)が全身から力を込めて「咆哮」を発する。神ですらおののくというその声はゴーストイコンの群れに大爆発を引き起こす。この一撃でゴーストイコンは大ダメージを受け、推進部などのパーツに損傷を受けた。
「リカに負けるな。いくわよ、ディジー!」
 シルフィスティ・ロスヴァイセ(しるふぃすてぃ・ろすう゛ぁいせ)はペガサスの腹をけると突撃する。
 そして魔法の投矢を放つ……が、それは轟音を発してゴーストイコンに飛んでいった。それは命中して大爆発を起こしゴーストイコンを破壊する。
 だが雷が苦手なシルフィスティはパニックを起こす。ペガサスが暴れてシルフィスティは振り落とされそうになる。
 と、そこに水無月 睡蓮(みなづき・すいれん)鉄 九頭切丸(くろがね・くずきりまる)の乗ったイーグリット【魔王尊】が颯爽と飛んできて、落馬したシルフィスティを掬い上げる。
「おい、あのイーグリットはなにもんだ?」
 だが、そのイーグリットは敵味方識別信号を発していなかったので聡が疑問の声を上げる。
 
Wem der grobe Wurf gelungen,
Eines Freundes Freund zu sein,
Wer ein holdes Weib errungen,
Mische seinen Jubel ein

「該当機体データベースにありません!」
 ガイウスが叫ぶと、聡は真一郎にどうするかと尋ねた。
「様子を見ながら対応。敵対するようなら撃墜」
 と、ドラムをたたきながら手短に答える。
 ちなみにロックアレンジの歓喜の歌はドラムが割と激しいことになっている。
 その通信を聞いていた睡蓮が、聡の通信回線に割り込む。
「こちらは敵対する気はないです。ただ、復興を謳いながら破壊活動を見世物にするのはどうかと思ったのでちょっと介入させてもらいました」
 聖戦のオラトリオ 〜転生〜にてカミロとともに行動していたため睡蓮と九頭切丸はその素性を隠している。睡蓮はこの通信にヴォイスチェンジャーを使用して喋っているくらいだ。
「おもしろうなってきたな。レイチェル、モニターでしっかりととっといてや」
「了解です」
 泰輔はコンサートと戦闘が別々になったためイコンに搭乗し、戦場カメラマンとしてコンサートで映す素材の撮影に来ていた。
 そしてカメラを担当するパートナーのレイチェル・ロートランド(れいちぇる・ろーとらんと)に指示を出す。
 レイチェルはコンソールを操作して睡蓮のイーグリットをズームするとその動向を見守った。
 第二陣が到着して攻撃が開始される。

Ja, wer auch nur eine Seele
Sein nennt auf dem Erdenrund!
Und wer’s nie gekonnt, der stehle
Weinend sich aus diesem Bund!


 ルカルカのコーラスと合成音声のコーラスによって楽曲が盛り上がる。
 和希のギターが激しく唸る。

 睡蓮は戦場のすべての機体から攻撃を受けることを前提に射軸を読みながら機体をコントロールし、射線の間に他の機体がはいるようにしながら軌道を取る。
 そして20ミリレーザーバルカンでゴーストイコンを攻撃する。その際、敵の間に他の生徒がいても気にしない。
 20ミリレーザーバルカンは夢見の機体をかすめながらゴーストイコンに命中する。
「あぶねえな、この! なにするんだ!」
 ルーク・ヤン(るーく・やん)が叫ぶ。
「これは人を傷つける危険な力です。こんなモノを見世物にするんですか?」
 睡蓮は静かに告げる。
「敵か味方かわからん上にこっちを巻き込む攻撃か……かまわねえ、落とせ!」
 聡が叫ぶ。
「いいんですか聡さん。これは撮影しているんですよ? 味方を救ってくれた機体を撃墜するんですか?」
 サクラ・アーヴィング(さくら・あーう゛ぃんぐ)が激昂している聡に冷静にそう告げると、聡は落ち着いた。
「おい、そこの! 言いたいことはわかったがその行動は危険だ。これ以上続けるようなら落とすぞ」
 と一応警告しておく。
「気をつけましょう……」
 睡蓮はそう言うとさらに20ミリレーザーバルカンを発射した。
 そのレーザーは吸い込まれるように命中し爆発。だがゴーストイコンを一撃で落とすほどではない。
 
 
Freude trinken alle Wesen
An den Brusten der Natur;
Alle Guten, alle Bosen
Folgen ihrer Rosenspur.


 後列の弓を装備した10体のゴーストイコンが矢襖を降らせる。
 それは密集していた生徒たちのイコンに八割方命中し、ダメージを与える。
 前列のゴーストイコンは槍を持って突撃してくる。
 正面からのぶつかり合い。
 だが、真一郎はそこに勝機を発見した。
「いまだ。単縦陣。中央突破! 弧狼丸、我に続け連呼!」
「我に続け、我に続け、我に続け!」
 鷹村 弧狼丸(たかむら・ころうまる)が叫ぶ。
 真一郎のイーグリットがアサルトライフルを撃ちながら突撃すると、他の機体もその後に続く。


Kusse gab sie uns und Reben,
Einen Freund, gepruft im Tod;
Wollust ward dem Wurm gegeben,
und der Cherub steht vor Gott.


「いくよ、皆!」
「はい、カノン様」
「了解!」
「おっけーです」
 カノンと強化人間部隊、レオと夢見が敵の群れに突入する。
 まず夢見の鋼竜【ローズマリー】が新式アサルトライフルを撃ちながら突入し、レオのイーグリット【アイオリア】がマジックカノンで後方から援護する。
 そこにカノン達強化人間が3機1組で4部隊となりビームマチェットでゴーストイコンを切り刻みながら突撃する。

(恐ろしいねぇ……私たちはあんな連中を敵に回していたんだねぇ)
 アリス・テスタイン(ありす・てすたいん)がテレパシーで可憐に話しかける。
「そうね……さすがに強化人間ね」
 可憐は集団から外れて姿を隠しながら、マジックカノンで確実にゴーストイコンの急所を貫いていく。
 
 弾薬が途切れたイコンは順次未沙のトラックに移動して補給を行う。
「順番になの」
 未羅がイコンの整理をしながら未沙が補給を行う。
 三姉妹は見事な連携で補給を手早く進めていった。

Froh, wie seine Sonnen fliegen
Durch des Himmels pracht’gen Plan,
Laufet, Bruder, eure Bahn,
Freudig, wie ein Held zum Siegen


 藤林 エリス(ふじばやし・えりす)は歓喜の歌をバックに戦場を駆け抜けると、大声で口上を述べた。
「愛と正義と平等の名の下に!革命的魔法少女レッドスター☆えりりんが、人民の敵を粛清よ!」
 そして、変身! で純白の魔法少女に変身し、大きな旗のついたレッドフラッグロッドを掲げつつ、ギャザリングヘクスで魔法攻撃力をあげ、サンダーブラストで雷撃を放つ。
 アスカ・ランチェスター(あすか・らんちぇすたー)も濃紺の露出度の高いセクシーなレオタード姿で登場。氷術で攻撃する。
 二人の魔術の融合は氷雷魔術となり、魔術元素的には水と風と光の融合となった。
 その攻撃は確実にゴーストイコンにダメージを与え、レベルが低いながらも二人で協力することにより敵と渡り合っていた。
「美味しい素材が取れました。お色気サービスです」
 レイチェルがぼそっとつぶやいた。

 天城 一輝(あまぎ・いっき)はパートナーのローザ・セントレス(ろーざ・せんとれす)の運転するトラック3トン半・一杯に乗り、負傷者を回収して回る。
 そして荷台に乗ったスノー・クライム(すのー・くらいむ)が負傷者にヒールや応急手当で治療を施す。
「一輝さん、でしたっけ? 包帯をください」
「了解! しかし強化人間へのいじめが起きなくてよかった。なんかあったら蒼空学園の恥だからな」
「葛葉さんの一言が効きましたね。あれで、陰湿ないじめを起こそうと思う人はいなくなったでしょう」
「そうだな。よし、次」
「この人は傷が深いですね。ヒールで回復させます」
「了解」

Seid umschlungen, Millionen!
Diesen Kub der ganzen Welt!
Bruder, uber’m Sternenzelt
Mub ein lieber Vater wohnen.


 紫月 唯斗(しづき・ゆいと)はS-01【迅雷】でブレス・ノウを起動。敵機の行動を予測する異界の技術で命中率と回避率を上げると、ポータカラ加速装置を使って加速して突撃し、クレイモアを展開しすれ違いざまにゴーストイコンを切り刻む。
「ソニック! スライサアアアアァァァァッ!!」
 それは奇跡的な成功を起し、すれ違った2機のゴーストイコンを一撃で両断する。
「唯斗め、なんだかんだでやる気満々ではないか」
「まあな。こいつは使いやすい」
「まあ良い。わらわもこう言うのは嫌いではない」
 火器管制のエクス・シュペルティア(えくす・しゅぺるてぃあ)は唯斗が敵機の背後に回ったのを確認してミサイルポッドを解放する。
「ミサイル、フルロックオン。往け! アヴァランチ・バースト!」
 搭載しているミサイルを全弾発射し一気に敵の群れに大ダメージを与える。
「よし、唯斗、変形だ。可変戦闘機の真骨頂を見せてやれ!」
「了解!」
 【迅雷】は飛行形態から人形形態に変形し、エクスは20ミリレーザーバルカンを焼けつくまで発射する。
「撃ち抜け! ストレイト・ブラスター!」
 何百発ものレーザーが命中しゴーストイコンは大破する。
「よし、このままいくぞ、唯斗」
「おう!」
「本当にノリノリですね、マスター」
 魔鎧のプラチナム・アイゼンシルト(ぷらちなむ・あいぜんしると)は唯斗に装着されながらぼそっと呟く。
「うっせー」
「しくしく」
 嘘泣きである。
「兄さん……はりきってますね。私も何とか頑張ります」
 紫月 睡蓮(しづき・すいれん)がレプリカヴィータでゴーストイコンを攻撃する。ゴーストイコンの苦手な光輝属性に加えてサイコキネシスで威力を増しているため、それは確実にゴーストイコンにダメージを与えていた。


hr sturzt nieder, Millionen?
Ahnest du den Schopfer, Welt?
Such’ ihn uber’m Sternenzelt!
Uber Sternen mub er wohnen.

 第一陣と第二陣が背面展開に成功したころ、第三陣が到着した。
 オカリナの音が戦場に響いた。
「何者だ!」
 フレイの問に銀星 七緒(ぎんせい・ななお)は静かに答える。
「……通りすがりの……退魔師。こちらTACネーム【ケントゥリオン】。協力する」
「こちら【Moira】、了解」
「ナオ君、久しぶりのイコンでのお仕事ですけど、いけそう?」
 助手兼姉兼保護者のルクシィ・ブライトネス(るくしぃ・ぶらいとねす)の問に七緒は
「大丈夫だ……問題ない」
 と答える。
「いつもどおりに仕事をするまでだ……始めるぞ」
「はい」
 ルクシィは頷くと機体のコンソールをたたき始めた。
「各兵装ロック解除。脚部装甲展開、ブースター機動。セントブリンガーII出力最大。ナオ君、いいわよ」
「了解……ブースター全開! 【ケントゥリオン】突貫する!」
 【ケントゥリオン】は真っ直ぐに突撃すると、ゴーストイコンを串刺しにした。
 中枢部を破壊されたゴーストイコンは一撃で破壊される。


「よし、このまま挟撃だ」
 ドラムをたたきながら真一郎が号令をかける。

「泰輔さん、こっち写しといて」
「了解。レイチェル!」
「はい」
 ノア・サフィルス(のあ・さふぃるす)は泰輔にそう伝えるとカラーのスモークをイーグリット・アサルトから噴出し、アクロバット飛行でいろいろな記号を描く。
「なるほど、美味しい素材やな」
 加夜とノアの【アクア・スノー】のその行動でゴーストイコンは撹乱される。真一郎はその隙を見逃すほど甘くなかった。

「いまだ。全軍射撃。効力射!」

「こちら【イロドリGD】了解。」
 天貴 彩羽(あまむち・あやは)がそう言ってガトリングガンを連射する。
「各機、【イロドリGD】のサーバーに接続するでござる」
 スベシア・エリシクス(すべしあ・えりしくす)が機体と自分をコードで接続して有機コンピューターとなりながら情報網を構築し、敵と自軍の布陣などの情報を分析して表示、最適な位置へと味方を導く。

 笹井 昇(ささい・のぼる)の【プレッジハート】とミレリアのイーグリットがアサルトライフルを撃ちながら敵軍の中を縦横無尽に動き回る。
「ぬるい、ぬるいわよぅ。もっとあたしを興奮させてぇ」
「ミレリア様、落ち着いてください」
 昇とデビットはミレリアの機動についていけず悲鳴をあげる。
「なんて操縦テクニックだ。ついていくのもやっとだ!」
「負けるな昇。遅れをとるわけにはいかねえんだよ」
「わかってる。だが、しかし……寺院のエースがこれ程とは」
 ミレリアのパイロットランクをあえて数値で表すなら25前後。カノンは28前後、強化人間たちは23前後。カミロはこれ以上。この戦闘に参加している中では可憐と彩羽レオなどが天御柱学院でイコン操縦のアドバンテージがあることからミレリアと互角である。もちろん単騎で戦闘することは少ないためこの指標は決定的なものとはならないが、ミレリアの機動についていくのはなかなかに困難なことと言えた。

 須藤 雷華(すとう・らいか)のアルマイン・マギウス【トールマック】はマジックカノンで後方から火力支援を行う。
「いっけえええええええええええ!」
「第一射着弾確認。雷華、射角修正下20度、右15度」
 北久慈 啓(きたくじ・けい)はテクノコンピュータで雷華と通信する。
 第二射、第三射と次々と発射しながらそのたびに射角の修正を行う。

 笹奈 紅鵡(ささな・こうむ)は一人乗りでヒット&アウェイ戦法をとろうとする。しかし一人乗りで出力が30%しかでないため機動力が足りずゴーストイコンから攻撃を受けダメージを受けてしまう。

「今のオレには歌姫サマの加護がついてるからな。いつもの倍は強いぜ」
 大助がそう叫びながら魔拳ブラックブランドでゴーストイコンの腹部を貫く。
 パートナーのグリムはS@MPの準備のため会場にいるので魔鎧で、黒いコートの四谷 七乃(しや・ななの)とともに単騎で戦場にいる。
 大助はアルコリアが言ったとおりパラミタでは数えるほどしかいない力量の持ち主である。その彼にとって、ゴーストイコンなど全く敵にならなかった。
「マスター、早く終わらせてグリムさんのところへ行きましょう!」
「おう! これは……魔拳の家門が光ってる……アイツの気持ちが、魔拳を通して伝わってくる!? わかってるグリム。俺は負けない!」
「マスター、絶対暗黒領域発動します」
 七乃は変形しより洗練された形状となり暗黒のオーラを纏う。
「よっしゃ、グリム、俺はすぐに帰るぞ!!」
 
「おお、パートナーの思いでパワーアップか。これも美味しい素材や」
 泰輔がそう言って喜ぶ。

「ガネットの試運転としてはちょうどいいね。ごにゃ〜ぽっ☆ 【turbulent air】いくよ!」
 鳴神 裁(なるかみ・さい)はそう言うと突撃をかけ蛇腹の剣を振るう。
「ボクは風、あなたたちに風(ボク)を捉えられる?」
「うーん。この新しいおもちゃいつものおもちゃより機動性悪いね。もー、ドール、ちゃんとチューンナップしたの?」
 アリス・セカンドカラー(ありす・せかんどからー)がそう言うと裁の普段着兼パイロットスーツの魔鎧ドール・ゴールド(どーる・ごーるど)
「ああ、アリスさん、うちに無駄に増えてるイコンのせいで予算がなくて、最低限のチェーンナップしか出来なかったのですよ?」
 と答える。
「ギ、ギク……そ、そっか……予算がないなら仕方が無いね」
 なにかアリスには思い当たるフシがあるようである。
「そちらの退魔師さん、よかったら協力しない?」
 栽は七緒に通信をする。
「了解。接近戦同士、相性はいいだろう。こちらが突撃するからそちらは援護してくれ」
「わかったよー」
 七緒と栽は協力してゴーストイコンを撃破していく。そのころミレリアはなにか思いついたようだった。

「S@MP、演奏しなさい。あたしも歌うわよ!」
「了解! なにを歌う?」
「楽譜を転送するわ! リリア!」
「はい、ミレリア様」

 リリアは楽譜をS@MPの機体に転送すると、外部スピーカーを起動した。
 真一郎がリズムを刻むと、和希がギターを弾く。
 ルカルカが楽譜を見ながら、歌詞を見ながらキーボードを弾きハーモニー部を重ねる。


熱い想いが込み上げる さあ、いこうあの戦場へ
負けるわけにはいかない 光を超えて あの戦場へ
 
 
「よっしゃ、ミレリアを背後からズドーンというのは冗談として、敵を挟撃するチャンスは逃しちゃいけないわね。早苗、ミサイルポッド全弾発射!」
「了解です」
 杏は機体を制御し、【イロドリGD】の情報網に従って最適な位置に動くと、早苗にミサイル発射を指示した。
 ミサイルは複雑な軌跡を描きながらゴーストイコンに命中すると大爆発を引き起こす。
「たーまやーっとね」

「いっけええウサちゃん!」
 めいはパートナーの八薙 かりん(やなぎ・かりん)とともに高機動白兵戦使用に改造したキラーラビットでウサ耳ブレードだけを頼りにそのモデルとなったうさぎのように軽快に敵を切り倒していく。

標的は決まった 必殺の一撃を叩き込め
魂を込めて、今その一撃を


 秋人は弾幕援護で弾幕を張ると、蘇芳 蕾(すおう・つぼみ)に指示を出した。
「このまま接近。近距離で大型ビームキャノンを叩き込む」
「了解……全ては秋人様のために……」
 秋人のコームラント【トリスタン】はゴーストイコンに接近すると、最低射程距離(これ以上近づくとビームの効果を発揮せずダメージを与えられない)まで接近し大型ビームキャノンを発射する。
「ファイア!」
 シャープシューターで狙いすましたその一撃はゴーストイコンを破壊する。


一人でも独りじゃない 誰かが君の背中を守ってる
仲間がいるよ 手と手を合わせて
故郷と自由を守り抜こう 僕らの国を守ろう

「よし、だいたい片付いてきたな。アニス、一気にカタをつける。グレネード、ミサイルポッド全弾発射」
 和輝がパートナーにそう告げると、アニス・パラス(あにす・ぱらす)
「了解! でっかい花火を打ち上げよう! あれ? 爆撃???」
 と言った。和輝がくすりと笑う。
「カメラ、派手なのいくぞ!」
 泰輔に通信を入れるとカメラが和輝の【グレイゴースト】に向かう。
「いっけえええええええええええええ!」
 グレネードとミサイルポッドが空中から全弾発射され地上のゴーストイコンを一気に薙ぎ倒す。
 それがきっかけとなってゴーストイコンは駆逐された。

 ミレリアの歌が終わる。

「勝利のポーズ! ぶい!!」
 めいがイコンの外に出てカメラ目線でピースサイン。バニーガール風のパイロットスーツをおしげもなく披露する。
 かりんも一緒に出てくるがこちらは少し恥ずかしそうだ。
「美味しい素材いただきます」
 レイチェルがまたもボソリとつぶやく。
 ノアが再びスモークを炊いてアクロバット飛行をする。
 真一郎のドラムが激しく鳴り響きそれを演出する。
 七緒がオカリナを吹きながら颯爽と退場する。
 

「ふう、久しぶりに思い切り歌えたわん」
 ミレリアが大きく息をつく。
「良かったですね、ミレリア様」
「さて、監視役の聡さんとやら〜、ゴーストイコンも全滅しましたし、そろそろ帰らない?」
「そうだな……って、いつ気付いてた?」
「最初からですわん」
「ちっ……油断ならねえ」
「聡さんは分かりやすいですからね……」
 サクラが容赦のない一言を入れる。
「しくしく……」
 聡は黄昏た。
 そして、戦闘が終了し生徒たちは帰還する。