空京

校長室

選択の絆 第三回

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選択の絆 第三回
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リアクション


イーダフェルト呼応

『つ、次から次へと……!? それになんだこの耳障りな音は!』
「こんな素敵な歌声たちが耳障りだなんて言わせはしません!」
「そうだ! こんな魂が篭った歌、そうそう聴けるもんじゃないぜ!」
 特殊装置『ソウル・シンフォニー』を取り付けたイコンに乗った白石 忍(しろいし・しのぶ)リョージュ・ムテン(りょーじゅ・むてん)が、イーダフェルト上空にいた。
『歌がどうしたそれがなんだふざけるなああああああああああ!!』
 エピメテウスの咆哮。瘴気が震撼し、ビリビリとする感覚さえあった。
「歌だからこそ伝わる思いも、力もあります! だから!」
「俺たちの歌を聴けえええ!」

――ここは私が生まれた場所  夢と愛の揺りかご――
――そしてあなたと出会えた場所 私たちの故郷――

 忍の歌声が、マイクを通して静かに響き渡る。

――無くさないであの思い 幸せな日々――
――ここは私たちが帰る場所 未来を紡ぐ大地――

『やめろ……やめろおおお!!』
 エピメテウスが喚こうとも、歌は止まない。
 と、急に曲調が変わる。バラードから一点、熱い熱いロックに。


――舞い上がれ! 思いは重力も越えて――
――お前の力はまだまだこんなもんじゃないぜ――

 リョージュの熱い声が、防衛に当たっている全部隊員の心を更に突き動かす。
 
――今抱きしめる腕の力を信じて――

 負けてなるものかと、イーダフェルトを守るのだ、と。

――どんな未来が待っていても 守りたいものがある――

 忍の歌声が戻ってくる。全てを癒さんとする、曲と共に。
 
――生命を 生命を 生命を 信じて――

 イーダフェルト内のライブ会場、それだけではない。この戦場に参加している者も、映像通して声援を送る者全てが、自然と口ずさんでいた。
 同じ歌詞を、同じ歌を、共に。
 そして、イーダフェルトはそれに呼応するかのように、起動する。
「……ついに起動したか。イーダフェルトの、星辰結界が」
 鋭峰や戦闘に参加していた者たち、そしてエピメテウスの前でイーダフェルトは結界を展開した。
「歌が、皆の心を繋ぎ合わせてくれた。だから星辰結界が発動した……なんて、少し言いすぎでしょうか?」
「いいや、オレは信じるぜ。ここにいる人たちが気持ちを一つにしたから、結界が発動したんだって、そのキーが歌だったってな!」
『ぐ、ううう……馬鹿な、こんな馬鹿なことがあるかあああああ!!!!』
 結界に守られたイーダフェルトを見てもなお、悪あがきを続けるエピメテウス。だがそうはいかない。
「先ほどのようにはいかない! 集中攻撃で撤退させる!」
「もうお呼びじゃないんだよ!」
 トマスとカルが尽力した結果、イーダフェルトの周りに味方艦隊や鋼鉄の獅子の部隊、新星の部隊が集結しエピメテウスに攻撃を仕掛ける。
 それに側面からは支援要請に応じたH部隊からの砲撃も行われ、エピメテウスに次々と攻撃が注がれる。
『おおお、おおお……! この恨みは、必ず、必ず晴らすからなぁ!!』
 全部隊による集中砲火により多大なダメージを負ったエピメテウスが遂に撤退。これによりイーダフェルト付近に敵はいなくなった。
『皆、よく頑張ってくれた。しかしエピメテウスがいなくとも、敵戦艦の増援は予想される。
 万魔殿へ突入した者たちが帰ってくるまでイーダフェルトの防衛を続けてくれ。以上だ』
 鋭峰から送られた賛辞の言葉と警戒命令。その言葉に重みを感じ、防衛部隊は慢心せず防衛を続行するのだった。
 こうして舞台は万魔殿へと移る。
 果たして敵の本拠地でネフェルティティたちや契約者たちを待ち受けるものとは、そして戦いを止めるヒントは、得られるのだろうか――――。