空京

校長室

選択の絆 第三回

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選択の絆 第三回
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エピメテウス迎撃 1

「エピメテウスが猛ダッシュしてイーダフェルトへ前進! これじゃものの数分でイーダフェルトに辿りつく!」
「まさかこんなに大胆な行動に出るとは……各イコン部隊へ伝達、直に出撃しエピメテウスの迎撃実行! 倒せとは言わない、とにかく足を止めるんだ!!」
 突然のエピメテウスの動きにいち早く対応したのはハーポ・マルクスに乗っていたカル・カルカー(かる・かるかー)トマス・ファーニナル(とます・ふぁーになる)の二人。
 彼らドラグーン部隊は、H部隊の攻撃の後にエピメテウスを攻撃する予定だった。だからこそ即応することができた。
「私たちはどうしましょう。近づいて、攻撃に参戦しますか?」
 ハーポ・マルクスの操舵をしていたジョン・オーク(じょん・おーく)がトマスに尋ねると、トマスは少し考えた後、首を横に振った。
「……ここで待機。ただ本艦の護衛についてる僚機イコンは一時的にエピメテウスの攻撃を実行する」
「だ、そうですよ。カル」
「わかった。僚機イコンにはその旨を伝えておく。……にしてもでかいな。近くなればなるほどわかるでかさだ」
 カルの言う通り。数キロに及ぶ、という言葉は比喩ではない。文字通りだった。
「敵戦艦やイコン戦力はかなり削ってる今、エピメテウスへ目標を変更する部隊も多いはず。だからこそ、私たちでここをどうにか凌ぎましょう」
 トマスのパートナーであるミカエラ・ウォーレンシュタット(みかえら・うぉーれんしゅたっと)が的確に状況を判断し、トマスにそう伝える。
「後は、あの六人に任せて、僕たちはこの状況を分析し、他部隊へ援護要請する」
「わかった」
 そういい終えたトマスにカルが言葉を返し、すぐに通信準備を始めた。

『憎い! 憎いぞおおおおおおお! アトラスも、アトラスの娘も、アトラスが守った大地もそして! 俺様の邪魔をする貴様らが憎い!』
 咆哮にも似た叫び声を上げながらエピメテウスが全速力でイーダフェルトへと向う。
 そしてついに、イーダフェルトを両手で掴んだ。
『このまま底へと引きずり込み、奴の娘を千切り捨ててくれるわ』
「そうはいかへんのが世界の掟や。あと性根の腐った奴が負けるんもな!」
「そうだよ! そんなこと言うキミだけが落ちればいい!」
「許せないネ! 卑劣なことしか言わないユー、許せないネ!」
 大久保 泰輔(おおくぼ・たいすけ)讃岐院 顕仁(さぬきいん・あきひと)乗るバンデリジェーロ
 高崎 朋美(たかさき・ともみ)ウルスラーディ・シマック(うるすらーでぃ・しまっく)が乗るウィンダム
 ロレンツォ・バルトーリ(ろれんつぉ・ばるとーり)アリアンナ・コッソット(ありあんな・こっそっと)が乗るソプラノ・リリコ
 この三機がイーダフェルトを掴み無防備となったエピメテウスの前に現れた。
 しかし三機のイコンには目もくれずイーダフェルトを引きずり込もうとするエピメテウス。
『たった三機で何ができる!』
「邪魔くらいできるわ阿呆! 散開や!」
 泰輔の言葉の後、泰輔は左手へ、朋美は右手へ、ロレンツォは頭部へと移動する。
「エピメテウスの硬さは最初に見たとおりじゃ。だから、小さな事からコツコツと。千里の道も一歩から」
「ああ、せやからチクチクつついたる。落ちるなら、テメェ一人で落ちろっちゅう話や、他人様を巻き込むなや!」
 そう言って新式ダブルビームサーベルを使用し、エピメテウスの左手首を集中攻撃するバンデリジェーロ。
 更に右手を担当する朋美はすぐに覚醒を発動させ、最初から全力でエピメテウスの右手を攻撃していた。
「悪いけど、やらせはしないよ!」
「ヤツにとっちゃ人間もイコンも虫けらみたいなものだろう。なら、その虫けらの意地を見せてやろうぜ」
 新式ビームサーベルを駆使して、流れるような動作で次々とエピメテウスの右手を攻撃していくウィンダム。
 両機に従事している僚機イコンからも絶え間なく支援攻撃が行われ、エピメテウスも耐えがたくなってきている。
 更に頭部ではロレンツォ操るソプラノ・リリコが執拗に攻撃を続けていた。
「八つ当たりで世界壊すよくないアル! そんなこと考えるドタマがきっと悪い! だから愛の鞭と、これ代わりのお茶碗あげるネ!」
「意味がわからないわよ、ロレンツォ。まあでも、こいつの頭が悪いのはきっと当たりね。思い切り叩いてたら治るかもしれないから、どんどん叩きましょう」
「アイアイサー!」
 一対の長大な角、氷獣双角刀を持って踊るようにエピメテウスの瞼を攻撃する。
 いくら皮膚や肉が硬いエピメテウスでも、これを放っておけばいつか貫通する。右目が機能していない今ロレンツォを無視することはできない。しかし、
『くそがぁ! たとえ両目を失おうとも、イーダフェルトだけは底へと引きずり込んでくれる!』
 正常な判断能力すら失ったのか、エピメテウスは断固としてイーダフェルトから手を離さそうとはしない。
「ええい、往生際の悪いやっちゃな!」
「離しなさい! 離しなさいってば!」
 バンデリジェーロとウィンダムも必死に攻撃を重ねていくが、エピメテウスの手を切断するまでには至らない。
 このままではイーダフェルトが本当に底へと引き込まれてしまう。