空京

校長室

選択の絆 第三回

リアクション公開中!

選択の絆 第三回
選択の絆 第三回 選択の絆 第三回 選択の絆 第三回

リアクション


山に眠るもの・光条世界について・創世と滅びのサイクルと、これから


 慣れない匂いと寒々とした光景。
 空港からフィローズが手配していたバスに乗り込み、長い時間揺られ辿り着いた山岳地帯の貧しい村だ。
 遠景にある山間には白い霊峰が覗き、契約者や調査員たちのテントが村の近くに張られている。
 フィローズがこの村の近くを拠点に選んだことには作為的なものを感じるが、現状、その事を勘ぐるよりは、まんまと乗せられてみた方が良いのだろう……と彼女は考えていた。

 薄く乾いた空気を唇の隙間で吸って、彼女は村を眺める目を細めた。
「逃げるどころか割とどーでもいい……感じだった気がするけど、私はやっぱり知らなければいけないと思った。
 ウゲン・カイラス(うげん・かいらす)ドージェ・カイラス(どーじぇ・かいらす)……二人の義兄と義妹のことを」
「……楽しい?」
 静かに言った牛皮消 アルコリア(いけま・あるこりあ)の横で、と夏來 香菜(なつき かな)がなんとなくゲンナリとした様子で問いかけてくる。
 アルコリアは、ふっと息を落としてから微笑んだ。
「はい、わりと」
「本当にあなたが妹だったら、誰もが納得なんでしょうね」
 短い嘆息の後、香菜はそう独白のように言って、村の中へと進んでいった。
 そんな背中をケトリと見送って。
(たんぱくな様子を貫いてると思ってましたけど。最初は本当に自覚が無かったとはいえ、その後は自信皆無でプレッシャー?)
 といったところで、アルコリアは「まあいっか」と彼女の背から村へと視線を移した。
 彼女が確かめにきたのは、そんなことではなく―――
『開放は成された。それだけだ』
 かつて、中国との戦いについて問うたアルコリアらにそう告げたドージェ・カイラスの拳が、この地に何をもたらしたのか、ということだった。


「カイラス家に詳しい人が居て助かったねぇ」
 ヘル・ラージャ(へる・らーじゃ)の言葉に、早川 呼雪(はやかわ・こゆき)は頷き、香菜の方を改めて見やった。
「本当に、一緒に来るか?」
「……うん」
「そうか」
 この村の長である老人は、香菜のことを覚えていた。
 赤子の頃、中国人に売られていったカイラス家の子。
 そして、呼雪はその家の場所を長に案内してもらうことにしたのだった。
「カイラス家は特別な家だった……だが、ドージェもウゲンも去り、護り手は無くなった。やがて、賊によってその一切も持ち去られた。もっとも、ロクに何も残っていなかったが」
 村から少し離れた場所に、山肌に出来た崖に寄り添うように、その家はあった。
 風雨で半壊した屋根と壁の向こうに、壁の地肌が覗いている。
「何か、思い出せる?」
 同行していた鬼院 尋人(きいん・ひろと)の言葉に、香菜は彼を少し見やってから、じっと崩れた家の様子を眺めた。
 そして。
「歌を……少しだけ」
 香菜がそのおぼろげなメロディを口にする。
「この地で歌われる子守唄じゃな」
 そう言った長は契約者たちの後方で、瓦礫に腰かけていた。
「ウゲンもドージェも、妹の誕生を喜び、そして妹を愛していた。だが、こんな村とあの時勢だ。妹が売られた時、彼らは仕方の無いことだと考えただろう」
「……本当に私は、ここで産まれたの?」
 香菜の問いかけに、長がわずかに頭を垂らした。
「すまなかった。だが、豊かな国で幸せに育ってくれて良かった」

 あの後、一行は長の家に招かれていた。
「だいぶ前になるが“ウゲンの子”を名乗る少年がここへ来た。その割には幼い感じだったが、ウゲンにそっくりでな。顔立ちだけではなく、そこに纏う印象も」
 そう、長に告げられ、尋人は、直感的にそれが『ウゲン本人』であると悟った。
(見た目の年齢は変わってるもんなぁ)
「彼は、ここへ何を?」
「“形見だ”と言って、カイラス家に伝わる黒のリンガを持って……」
「待て。黒のリンガは、ウゲンを殺す際に用いられ、その後、ウゲンを信仰する教団が回収したんじゃ……?」
「黒のリンガはウゲンの体から引き抜かれた際、彼の体に僅かに残っておった。それを埋葬した際にドージェが取り出し、いつかここへ置いていったのだ」
「……黒のリンガがどういった経緯でカイラス家で護られていたのか、知らないか?」
 呼雪の問いかけに、長は香菜の方を見やってから告げた。
「遠い昔、彼らの祖先は、あの白き霊峰で光り輝く者から、それを授かったという」
(……光り輝く者――光条世界よりの監視者の片割れであり、消息を絶ったという『ビアー』?)
 思案した呼雪は、ふと、墓前の前にしゃがみ込んでいた香菜が立ち上がり、長を見据えているのに気付いた。
「香菜……」
「私の中にあった“ドージェ・カイラスの妹”としての力。それは、その光り輝く者に由来するものなの?」
「さあな、それは分からん。ただ……ドージェが幼い頃、ウゲンと妹の中に特別なものを感じると漏らしたことがあった」
「私は……何も覚えていないし、感じたこともない」
 項垂れた香菜の頭を呼雪は、一度だけ撫でた。
「胸を張れ。何かを失ってしまったのだとしても、お前にはまだ変化や成長する余地がある」
 上げられた香菜の目を見やり、呼雪は続けた。
「使命だとか“そうじゃなければいけないもの”だとかなんて考えず、ここで得たものを、感じるままに受け止めて欲しい」
「ま、大丈夫。香菜ちゃんには、日本の両親もいるでしょ? それに、可愛い『弟くん』や皆も」
 ヘルがにんまりと微笑みながら、香菜の額に自身の額をこつんっと打った。
「少なくとも、そういうのって変わらないもんだよ。これから何があってもね」
「うん……」
 香菜がふるふると後退して、顔を隠すように下を向く。
 と、そんな彼女の眼前に、すっとチョコレートが差し出された。
 香菜は、呀 雷號(が・らいごう)がくれたチョコをもそもそと食べると、またいつもの表情で顔を上げたのだった。
 
 
「地球か、まだ異国というイメージが抜けきらんな」
 シーマ・スプレイグ(しーま・すぷれいぐ)は、村の様子を眺めながら零した。
(ドージェは彼らのために中国と戦い、勝利した。だが、彼らはそれで救われたのだろうか?
 故郷を救えたかという問いに、ドージェは言った。「開放は成された」と)
 開放と救済は別の問題ということを言ったのだろうか。
 その疑問の答えは、この村の現状を見れば明らかだった。
 開放され、ここは大国の圧力から開放された。しかし、未だに貧困の中にあり、そのために売られる赤子もある。
 戦いの後、ここは結局何も変わらなかったようだった。
「それでは、何のためにドージェは戦い、傷つかなくてはならなかったのだろう?」
 あの戦いさえなければ、ウゲンが彼らの妻を中国へ渡すこともなく、ウゲンとドージェの諍いも無かったかもしれない。
 彼らは妻と共に、この村で貧しく辛いながらもそれなりに平穏な暮らしを送れたかもしれない。
「やっぱりなーんにも無い村ですね」
「アル?」
 牛皮消 アルコリア(いけま・あるこりあ)の声に、シーマは顔を上げた。
 アルコリアは何処かで貰ってきたらしいオヤツをもふもふ食べていた。
「ずっと貧しくて、開放の前から何も変わっていないそうです。若者もどんどんいなくなる、と」
「ふぅん。このままひっそりと消え去ってしまいそうな村だな」
「んー」
「どうした?」
 肯定とも否定とも取れないアルコリアの声に、シーマは小首を傾げた。
 頬をもぐもぐとさせながら、アルコリアが続ける。
「“開放は成された”。それはこの地の者、特に若者たちにとって重要な事実だった。そう、長は言っていました。
 だけど、村を出て行った何人が何かを叶えることが出来るかや、この村へ帰って来てくれるかは分かりませんし、それが救いをもたらすのかも分からない」
 アルコリアは口にほうばっていたものを飲み下し、指先をペロと舐めた。
「ただ、“それだけ”です」




 霊峰。


『反応ありました。大尉の読み通りです』
「やはり発生は円状ではなく、球状、でしたわね」
 沙 鈴(しゃ・りん)は30名の部下に命じ、白い霊峰周囲から機晶エネルギーダウン発生の大元を探っていた。
 現在、機晶エネルギーダウン自体は起こっていないものの、大元から発せられると考えられる独自の波形(これが、今はポムクルさんたちが作り出した対機晶エネルギーダウン用のオルゴールに呼応して発生しているようだ)を検出できる簡単な検出器を用い、大本の位置の特定を行っている。
「――調査隊に連絡を」

「フィローズ・ヴィシャリー」
 叶 白竜(よう・ぱいろん)は、調査隊が調査を行う様を眺めていたその男に声を掛け、敬礼した。
「君は……叶少佐、だったか」
「この山に我々契約者や今回の調査隊が入山できるよう調整に尽力頂いたそうですね。そのために、少々無理を通してもいると」
「まあ、君たちが気にすることは無い。そういうのは、こちらの仕事だから」
 フィローズが笑んで目元の皺が深くなる。
 白竜は敬礼を下ろし。
「今まで、表舞台に出てこなかったあなたが、そうまでして機晶エネルギーダウンの原因究明と“夏來香菜の帰郷”を実現しようとしたのか、教えていただくことはできますか?」
「君の見解は?」
「この山に眠るものは、機晶エネルギーダウンと、カイラス兄弟に関係するものなのではないかと。
 幼い時に中国に売られた夏來香菜。彼女は日本で育ち、パラミタへと向かった。そして、今、故郷へ戻ってきました。……このタイミングで」
「なるほど、君は夏來香菜の人生が誰かによってコントロールされているという可能性を示唆したいのかな?」
「どうでしょうか? ただ、あなたなら夏來香菜が辿った運命の一端を知っているのでは?」
「幼い夏來香菜を日本の家族の元へと導いたのは、石原肥満氏だ」
「……彼は何か知っていた?」
「かもしれない。彼はパラミタが地球と繋がる前から、様々なことを知り、動いていたようだから。しかし、今となっては誰にもわからんことだ。その事を知った当時、私もさほど興味を抱かなかったしね。地球と繋がったばかりのシャンバラが野放図に踏み荒らされないよう、地球側からシャンバラへのアプローチが日本主導となるために必死だったんだ」
「それが今になって彼女をこの地へと導いたのは、何故でしょうか」
「君の言った通りだよ。機晶エネルギーダウンの原因位置がこの場所だった。ここに何かが眠っている。そして、それはカイラス家と繋がりを持っているはずだ。自分もそう思った」
「夏來香菜が失った力との関係が?」
「ここからは、先ほど得られた山にあるモノの調査結果を元に話そう」
 白竜はフィローズから渡された資料に目を通した。
「光条世界の使者を形造っている粒子と同じもの……?」
「ヴァイシャリーには、一応、捕虜のヴァリュキリアがいただろう? 彼女を構成するものはあらゆる技術を持ってしても現状、解明はできていない。だが、それと似た妙なものが、この山にはあるらしい。だが、捕虜のヴァリュキリアと違うのは――“カラッポ”だということだ」
「カラッポ?」
「的確かどうかはともかく、そう表現するしかないそうだ。つまり、この山の中には、巨大な光条世界の使者の『外枠』だけが埋まっており、中身は何処かに消えている。そういうことだ」
「機晶エネルギーダウンを起こすために中身が消失した?」
「いや、そうとも限らんように思うが……」
 そこへ、“怪物”の警戒をしていた世 羅儀(せい・らぎ)が戻ってきた。
 告げられる簡単な報告。
「なんとか調査の邪魔はさせない程度には怪物を抑えられたみたいだけど……結局、あいつらが何だったのかは分からないまんまだったな」
 フィローズが片目を細め、顎を撫でる。
「地球での唐突な出現という点から、アナザーに関連したものだろう。アナザー日本の黒い大樹が打ち倒されて以来、日本では出没しなくなったようだが未だ他国では出現が報告されている」
「ってことは、アナザーのここらへんも大変なことになってるかもしれないってことか」
 そう、羅儀が嘆息した、一方で。

 沙鈴は調査結果を元に、考察を続けていた。
「かつて、山に潜んだ光条世界の使者の身体。それを機晶エネルギーダウンを起こすための装置として使った、と考えて良さそうですわ」
「だとしたら、エルキナは何故、自らそれをなさなかったのかが気になるわ」
 綺羅 瑠璃(きら・るー)の疑問はもっともだった。
「ん……」
 考えてみる。
 伝え聞いた話では、いつか彼女は融合した契約者の魂を見分けたらしい。
 であれば、光条世界の者は魂そのものに対し、何かしらの特性を持っていることが考えられる。
「機晶石は純然たる魂の化石のようなもの……」
 それは、エルキナが言った言葉だ。ならば、少なくとも魂の化石と称される機晶石に、エルキナ(光条世界の使者)が何らかの働き掛けを行うこと自体は可能だと考えて良いだろう。
「彼女は、自身の身体を用いて機晶エネルギーダウンを起こすことは出来る。しかし、何らかの意図を持ってか――エルキナは、この山に残っていた“巨大な光条世界の使者の身体”を用いた……」
 山には時折り、ポムクルさん達が作った対機晶エネルギーダウン用のオルゴールが鳴っていた。




 パラミタ大陸――ヴァイシャリー。


「地球での調査の結果、あの白い山にあったのは“光条世界の使者の『身体』”だったと分かったよ。おそらく、かつてニルヴァーナで姿を消した『ビアー』なんじゃないかって」
「人が神々の事情に首を突っ込み過ぎると痛い目に合うものじゃないかしら」
 黒崎 天音(くろさき・あまね)の言葉に、光条世界の使者であるエルキナは肩をすくめた。
「身体の中身――ビアーはマレーナ・サエフなのかな?」
「彼女は違うわ。ゲルバッキーだかニビルだかいう研究者が作った人形である以上のことはない。確かに特別製ではあるけれど」
 ラズィーヤに会うつもりでヴァイシャリーを訪れた天音とブルーズ・アッシュワース(ぶるーず・あっしゅわーす)だったが、街中でエルキナを見かけ――元々彼女にアプローチするつもりでもあったため、そのまま声をかけたのだった。
 そして、エルキナが行きつけだというカフェに居る。
 店内には大きな暖炉と薪ストーブの自然の温かみがあった。
「普通にウィンドウショッピングしているとは思わなかったよ。それに、こんなに簡単に話をさせてくれるとも」
「星辰結界が展開されるまでは暇だもの。それに、まあ、サービスといったところかしら」
 エルキナが、テーブルの端で相撲を取っていた柔らかポムクルさんとゆるスターのスピカを、ぱちんと指で弾く。
 コロコロと転がって行ったそれらを軽く見やりながら。
「光条世界がアルティメットクイーンに直接、女王の力を与えないのは何故かな?」
「出来ないからよ」
「あっさりと言うね。世界の理を定める程の力を持った世界にも、思い通りにならない力が在るんだ」
「そうでなければ私たちが存在している意味はないわ。この世界は、今の創造主が絶対ではない面もある。だからこそ、正しくないことも起きてしまう」
「一つ、我からも訊いて良いか?」
 どうぞ、とエルキナが視線を向ける。
「滅びと創世のサイクルを監視する事に、どんな意味があるというのだ?」
 その問いかけに、エルキナが答えるまでにはわずかに間があった。
「『完全な終焉』を避けるため。――少なくとも、“創造主”はそういう存在だわ」
 エルキナが席を立つ。
「そろそろ行かなくちゃ」
 言って、彼女はキチンと勘定を済ませて店を出て行ったのだった。




 天御柱学院、校長室。


 ミルト・グリューブルム(みると・ぐりゅーぶるむ)は、
 ペルラ・クローネ(ぺるら・くろーね)と共にコリマ・ユカギール(こりま・ゆかぎーる)の元を訪れていた。
 
 目的は、【創世と滅びのサイクル】についての考えをまとめること。
 
「えーと……。
 パラミタがあるナラカ世界には、たくさんの浮遊大陸があって、
 滅びたり産まれたりっていうサイクルを繰り返してた……これが“世界の理”?」
 
(おそらく、『幾つもの浮遊大陸が産まれ、そして、その全てが滅び、一つの周期が終わる――そして、また新たな再生と滅亡の周期が始まる』というサイクルなのだろうな)
 
「マヤ神話などの循環する世界の考え方に似てますわね」

「そして、数万年前。ニルヴァーナ大陸とパラミタ大陸もまた滅びの運命を辿ろうとしていた。
 だけど、古代ニルヴァーナ人は滅びを逃れる方法を得る。

 つまり、大陸がナラカに沈まないように支える力“原初の力”を延命する方法」

(その原初の力の源であるシャクティ因子と、強大な力を持つパラミタの巨人族の親子イアペトスとアトラスを用い、二つの大陸は延命することを可能とした)
 
「でも……古代ニルヴァーナ文明自体はその後、光条世界への道を開こうとして滅亡。
 その後、機晶技術が発達したニルヴァーナ文明となっていく。
 
 一方、滅びの運命を退けた二つの大陸は、世界の理を歪め続ける存在となってしまっていた。
 そして、その歪みは“滅びを望むもの”を生み出すことになった。
 
 結果、ニルヴァーナ文明は“滅びを望むもの”によって操られたインテグラルに滅亡させられる、と。
 それをざっくりと年表にするとこんな感じ!」
 
 ●ずっとずっと昔
 世界は、
 『幾つもの浮遊大陸が産まれ、やがて、その全てがナラカに沈んで滅び、一つの周期が終わる――そして、また新たな再生と滅亡の周期が始まる』
 というサイクルを繰り返す正常な状態にあった。
 
 ●数万年前
 古代ニルヴァーナ文明によって、
 ニルヴァーナ大陸とパラミタ大陸はナラカに沈む運命から逃れる。
 
 その後、古代ニルヴァーナ文明自体は滅亡する。
 
 ●約1万年前
 ニルヴァーナとパラミタが生き延びていたため、
 世界には歪みが生じた結果の一つとして、“滅びを望むもの”が産まれていた。
 
 一方、機晶技術が発達した新ニルヴァーナ文明は
 ニルヴァーナ大陸を支える巨人イアペトスの異変を機に、
 パラミタ大陸を支えるアトラスを獲得しようとする。
 
 結果、戦争勃発。
 そして、パラミタとの戦争中、“滅びを望むもの”に超強い兵器インテグラルを操られてニルヴァーナ文明は滅亡。
 
 その間にパラミタとニルヴァーナを繋ぐ回廊(ワープ装置)は封じられ、
 “滅びを望むもの”はニルヴァーナ大陸とパラミタ大陸の両方を沈めるために諸々画策し始める。
 
 ●現代
 ニルヴァーナ大陸に潜んでいた“滅びを望むもの”はリファニー・ウィンポリアの中に入り込んで行方不明に。
 パラミタ大陸はドージェがアトラスの代わりを務めることに。
 
 でも、世界の歪みは絶賛進行中みたい。
 
 
「こう並べてみると……さっさと滅ぶべき、って言われてるみたい。
 光条世界がすぐに滅びを与えないのは……僕らを弄んでるからかな」
 
(おそらく、一つは、パラミタが地球世界と繋がっているからだろうな。
 これは光条世界にとってはイレギュラーなことのようだ。
 故に、正常な滅びを望む光条世界は、比較的強硬な手段を用いることが出来ないのではないかと考えられる)

 コリマの言葉に、ミルトとペルラは顔を見合わせた。

「僕らの繋がりが、この世界が保たれている理由……」

(それも、いつまでそうであるのかは分からないがな)

 見えないはずのコリマの目は、何処か遥か遠いところを難しそうに見つめているようだった。