空京

校長室

終焉の絆 第二回

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終焉の絆 第二回
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【2】巨大イコン『グラヒトリ』 1 

 テメレーア撃墜の報に、味方イコン部隊は激震する。
 H部隊という艦隊を率いる旗艦が撃墜されたのだ。無理もない。
「……ふん、勘のいい連中だ」
 戦いの渦のその中心に巨大なイコンが姿を表した。
 エレクトロンボルトが搭乗する、グラヒトリ。
 以前よりも大きく、普通のイコンの数倍以上の全長になっている。
 金色、の部分も今では薄く、不恰好な出で立ちだ。

 グラヒトリの出現を見るや否や、アカシャ・アカシュが飛び出した。
 搭乗者はグラルダ・アマティー(ぐらるだ・あまてぃー)シィシャ・グリムへイル(しぃしゃ・ぐりむへいる)
 あまりにも強引な攻めに、しかして敵イコンは何もしてこない。
 アカシャ・アカシュの接近を咎め様ともせず、浮遊していた。
「余裕、か。上等だっ!」
 好都合と言わんばかりにブーストを全開にして、グラヒトリへと直進する。

 ザンッ

 容易く、いとも容易く切りつけた。
 グラヒトリは――――。
『その程度で先走るなどと、三下以下だな』
 損傷すらしていない。残骸イコンの分厚い壁が、グラヒトリ本体への攻撃を妨げていた。
「……以前のアタシなら、アンタ達の親玉に賛同してたかも知れない。いいえ、今もそうよ」
『ほう、面白い。ならば共に来るがよい。
 アルティメットクイーン様が築かれる素晴らしき、選ばれた民だけの……』
「だからって、全ての可能性を試しもせずに、眼を瞑るんじゃないッ!
 選民思想が繋ぎ留める世界なんてたかが知れてる! 小さいのよ! 器が!」
 アカシャ・アカシュのカナンの聖剣がもう一度突き刺さる。
『……所詮、その程度か。貴様も口だけの理想主義者に過ぎんのだな!』
「安心なさい。世界産みとやらに難儀するようなら、アタシがコイツ等の敵になってやる!」
 もう一振り、残骸の隙間から覗くグラヒトリ本体へ差し込もうとするグラルダ。
 だが、グラヒトリがそれを払いのけ、アカシャ・アカシュを弾き飛ばした。
「……馬鹿ですか、貴方達は。
 世界に意思があるならば、ショックで滅びかねません」
 それまで無言を貫いていたシィシャが無表情のままそう言った。

 グラヒトリが動いたことによって場の流れは急転する。
 それまで沈黙を守っていたイコン部隊が行動を開始。
 そのうちの数機がアカシ・アカシュを囲む。
「退きなさい!」
 突如として現れたアルマイン・スカウター
 高すぎるステルス性能を前に、為す術もなく敵イコンが倒される。
「そこの方、大した覚悟でした。ですが無理は禁物です」
『余計なお世話だ』
「それと……世界産みに賛成なのは自分も同じです。
 ですから、自分はあなたが敵にならないように、世界を救いたいと思いますよ」
 グラルダの覚悟を聞いていたザカコ・グーメル(ざかこ・ぐーめる)の言葉に、強盗 ヘル(ごうとう・へる)が言葉を続ける。
「とりあえずよぉ、今は目の前の性悪を倒しちまおうぜ。
 世界を産むとかは、その後だ。だろう、ボルト野郎」
『この間の黒いのか。少しは懲りたらどうだ、それが賢明な判断だぞ?』
 依然、エレクトロンボルトは余裕だ。この間、手痛い目にあったはずなのに。
 余程今のグラヒトリには自信があるのだろう。
「懲りないから、ここにいるんですよ!」
 ザカコが叫び、アルマイン・スカウターが大岩を投げ、その後ろにピタリと張り付く。
 芸のない、と言わんばかりにグラヒトリがブレードでもって大岩を真っ二つにする。
 だが大岩の先にアルマイン・スカウターの姿はない。
「動きが緩慢ですね、弱くなりました?」
 グラヒトリの真下からエンハンストカタールを刺し込む。
『避ける気すら起きない、ということだ痴れ者』
 グラヒトリは一切ダメージを受けた気配はない。
 それを察したザカコはすぐさま離脱。

 ブオンッ!!

 グラヒトリがぶっきらぼうに回転する。
 それだけでも十分な威力が予感させた。