空京

校長室

終焉の絆 第二回

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終焉の絆 第二回
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【2】先手必勝!

 こうして全イコンが万全な状態で、機動要塞を待ち受けていた。
 そして今、開戦の時である。
 一番槍、聳え立つ機動要塞の前に立ち塞がったのは、
 ストーク拠点強襲攻撃改修型ニーベルンゲン
 二機のバックアップにはユーゲントが控えている。
「こちらストーク拠点強襲攻撃改修型に搭乗する相沢 洋(あいざわ・ひろし)から全機へ。
 これより機動要塞への攻撃を行う。異論は、ないだろうか?」
 洋の問いかけに、一機たりとも返事をしなかった。
 否、それが返事だった。
「感謝する。それでは全機の健闘を祈る。……洋孝っ!」
 怒鳴られるように名前を呼ばれた相沢 洋孝(あいざわ・ひろたか)は、瞬き一つせず射線軸の補正を行っている。
 彼の目には様々な情報が映っては消え、消えては映っていく。
「問題ない、か。頼もしくなったものだ。
 ……こちらストーク改修型だ。護衛は任せた」
『こちらニーベルンゲン。群れ寄ってくるイコンは任せてくれ』
『こちらユーゲント、両機への支援を行います』
 返答をしたギュンター・ビュッヘル(ぎゅんたー・びゅっへる)ゴットリープ・フリンガー(ごっとりーぷ・ふりんがー)には迷いの色はなかった。
 口火を切れば、あの機動要塞との戦闘は必至。
 それを覚悟してなお、三人は前に立ちはだかる。
『……何もしてこないのが気になるな』
「余裕をかましているのなら、ほえ面をかかせてやるさ」
「目標、機動要塞! 安全装置解除、砲身展開友軍機の機影なし! 発射準備よろしっ!」
「てぇー!!」
 禁忌兵器、ビッグバンブラストが射出される。
 目標は言わずもがな、機動要塞。
 巨大すぎる要塞を前に戦術ミサイルが放たれる。

 轟音。
 共に展開する盛大な爆発。
 ありえない量の煙が要塞の各所から立ち上る。
 普通ならば、これで詰みだが……。
「命中確認。続いて荷電粒子砲、ジェネレーターパワーマキシマム! 砲身電圧最大!」
「よし、各員は後退、無理はするな。……墜落する気配は毛ほどもないな。
 全機と連携を取りつつ時間を稼ぎ、勝利を掠め取るっ!」
 武器を荷電粒子砲に切り替え洋達が後退。
 それに無数のイコン機が追い縋る。
 口火は切られた。それはそれは派手な合図で。

「今回は最初からお出ましか」
「まあ、やることはかわらんけどな」
 サミュエル・ユンク(さみゅえる・ゆんく)がギュンターに返事をする。
 ギュンターが搭乗するニーベルンゲンにセラフィム機が急行してくる。
 出し惜しみはなしだ、と言わんばかりだ。
「オーライ、準備は万全だぜ」
「……一つ何度も戦ってわかったことがある」
 ニーベルンゲンは動かない。
 ギュンターが握る操縦桿は、まだ動かない。
 セラフィム機がビームサーベルを取り出し、ニーベルンゲンに突き出した。
 それを一吹かしのブーストでかわし、急浮上。セラフィム機もそれを追う。
「速いな……だが、それだけだ」
 ニーベルンゲンが停止し旋回、セラフィム機へ向き直り急降下する。停止直後にミサイルポッドを打ち出す。
 迫り来るミサイルを全て切り伏せたセラフィム機だが、
 最も注意すべきニーベルンゲンに背後へ回り込まれ、
 ニーベルンゲンの新式ビームサーベルに頭部を貫かれた。
「パイロットの腕が伴っていないのさ」
「お〜、言うねぇ」

「ニーベルンゲンが敵との交戦に入りましたね。
 各員、二機を支援してください!」
 ユーゲントに搭載された艦載用大型荷電粒子砲のチャージが進められていく。
 ゴットリープのパートナーである松井 麗夢(まつい・れむ)はイコンの修理にあたるため、
 ユーゲント内にある格納庫にて準備を進めていた。
「艦長! 発射準備完了、いつでもいけます!」
「わかりました。僚機へ、荷電粒子砲発射後のフォローをお願いします」 
 そう言いつつ、ゴットリープは敵を見定めていた。
「……今です! 放てぇー!」
 合図と共に、荷電粒子砲が発射される。
 敵イコンを巻き込みつつ、機動要塞の一部に着弾する。
 ソウルアベレイター達が持っていた万魔殿の様に、自動修復能力は備わっていないようだが、それでも尚健在。
「ダメージを蓄積させるしか、ないようですね……」
 ゴットリープが嘆息する。と、通信が入ってくる。
『こちらHMS・テメレーアである。一番槍は取られたが……
 これより我が部隊が奴等の動きを止めに入る!』
「了解です。微力ながら支援させていただきます。【H部隊】の皆さん」
 そう言ったゴットリープの目には、梯形陣に並ぶ艦隊の姿が映っていた。