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【十二の星の華】「夢見る虚像」(第3回/全3回)

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【十二の星の華】「夢見る虚像」(第3回/全3回)
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第2章 想いは踊る

 空京市外の中心地。

 空飛ぶ箒で稼いだ位置エネルギーはすべて運動エネルギーに代え、神代 明日香(かみしろ・あすか)ティセラ・リーブラ(てぃせら・りーぶら)に向かって高周波ブレードを叩きつけた。
 大振りな刃の重さを感じさせない動きで、ティセラは剣戟を受け止める。
「答えるですよぅ、ティセラさん」
 ギリギリと、刃元を押し込み、明日香はティセラの耳元で口を開いた。
 小さな声で。
「ティセラさんの目的は、いち早く国をまとめて外敵に対抗する事、そうですねぇ」
 ティセラはビックディッパーで明日香を軽くいなした。
「答えて欲しいのですっ」
 必死で態勢を立て直して、明日香は再び距離を詰める。
 ティセラは小さく微笑みを浮かべた。
「そうですわね。こうでもしないと、その重要性に気がつかれない者が多すぎるようですから」
「たとえ、犠牲を強いても、ですかぁ?」
「無血で国が作れるなど……ムシのいい話です。何も考えずにアムリアナ女王を盲信している者など、排除されるべきですわ」
「ティセラさんにとって、ミルザムさんでは、力不足なのですかぁ?」
 明日香の質問をうけて、ティセラの表情に不機嫌なものが混ざった。
「あなただって本当はわかっているのではありませんか? ミルザムなど担がれているだけのお人形――力不足以前の問題、ですわ」

 カッ――と、刃が離れた。
 明日香の顔には決意のようなものが浮かんでいる。

「――答えていただき、感謝なのです」

 明日香はそのままバックステップを踏むと、後は一散に逃げ出していった。

 その代わりに姿を現したのは万願・ミュラホーク(まんがん・みゅらほーく)
「俺様は踊りに来たのではない。話をしにきた」
「ずいぶん。奥手なのですわね」
 ビックディッパーは展開させたままで、ティセラは、僅かに興味を引かれたような表情を作った。
「もとより俺様は蒼学に所属しているであるが、ミルザムにつく気もない」
「なかなか賢い判断だと評価いたしますわ」
「俺様が欲しいのは、今、主任を務めるパン屋『猫華』の安全。ティセラ殿への協力をお約束しよう――主に、食料等の物資補給になるとは思うが。代わりに……『猫華』の客、従業員、それから……俺様のパートナーのクラウンへの不干渉……これを認めてもらいたいのだが」
「……」
 ティセラは沈黙を、ミュラホークの顔に注いでいる。
「ただ力を使わぬだけで物資が手に入るのだ。そちらのメリットはなかなかであろう? どうであるか?」
「それは話ではありません――交渉、ですわ」
「むっ?」
 何かを含んだようなティセラの笑みに、ミュラホークはハッとして銃を構える。
「わたくしが『認める』のですね?」
「むっ?」
 一瞬その意味を掴みかねたミュラホークだったが、すぐにそれが立場を明らかにするための質問と悟って首を縦に振る。
「構わぬ。大切な人達の安全に代えられるなら」
「ならば認めますわ」
「御協力感謝するである」
「ただし」
「な、なんであるか?」
「不干渉というなら当然それは相互の不干渉。あなたも、今後一切わたくしや、他の十二星華に手を出さないことが条件。おわかりですわね?」

「待ってくれ。まだ話がある!」
 ミュラホークとの会話を切り上げようとするティセラを引き留めたのは百々目鬼 迅(どどめき・じん)だった。
 少しだけ、鋭めに瞳を絞り、何かを見極めようとでもするような視線をティセラに向けている。
「俺にはお前のやり方がわからねえ」
 迅の言葉に、ティセラは片眉だけを上げて見せた。
「国には国民が必要だろ?」
「当たり前の話ですわね」
「だったらなんでお前は剣の花嫁を操ったり、罪のない人々を合成獣を使い殺害したりする? 国に必要な要素である『国民』って――言ってみりゃ仲間だろ? 俺にとっての昔の不良仲間みたいな。そいつらに嫌われたら……強いチーム――お前にとっちゃ国か。なんて、つくれねぇんじゃねーのか?」
 迅の言葉にティセラは薄い笑いを浮かべ、ゆっくり言い聞かすように口を動かした。
「今、このシャンバラはたったそれだけで揺さぶられる。脆弱だということですわ。弱ければ潰れる。強い国を作るためには、女王として本当に誰が相応しいのか。身をもってそれを感じていただくためには……犠牲が出たところで仕方がありませんわよね」
 ティセラの真意を見極めようとして向けていた鋭い視線は今やハッキリと敵意を込めて燃える。
「……おいおい。じゃあそれを示すために……将来の国民をあっさり捨て駒にしてくれたって訳かよ」
 迅は一気の動作で短刀を抜き放ち、ティセラに斬りかかった。
「なら今から、お前は俺の敵って訳だなっ!」

「そう。ではあなたは私の障害ですわね。道を空けていただけますかしら? 可愛い妹達に任せてもよろしいのですけれど、わたくしはさっさと胴部を探しに行かせて頂きたいですわ」 

「そうは――いかないわよっ!」
 まるで目の前の邪魔な物を掃除するかのように。
 無造作にビックディッパーを振りかぶったティセラに向かってアメリア・ストークス(あめりあ・すとーくす)は火術を展開。
「君はここで足止めされるのよ。女神像の胴部探しに行かれたんじゃ、たまらないものね」
 燃えさかる火炎を、しかしティセラは優雅な動きでかわしてみせる。
「こ、こりゃ! 火の扱いには気をつけて欲しいのですじゃっ!」
 火の勢いから、長い黒髪を守りながら伯道上人著 『金烏玉兎集』(はくどうしょうにんちょ・きんうぎょくとしゅう)が小さな悲鳴を上げた。
「わわわっ。ごめんねっ!」
 アメリアは攻撃を機関銃に切り替え、ティセラの足下を掃射。
「ふむ」
 やっと安心した様子の金烏玉兎集の準備を始めた。
「騒々しいダンスですのね」
「君を倒せるのなら、構わないさ」
 アメリアと金烏玉兎集の援護を受けながらライトブレードを叩きつけた高月 芳樹(たかつき・よしき)は、ティセラに向かって苦笑して見せた。
 ビックディッパーで芳樹の攻撃を受け止める。
 望んだものを斬ることのできる星剣で、ティセラは切り結ぶことを選択している。
 悔しいがその時点でティセラが面白がっているのは明らかだった。
 全身の力をフル動員。
 芳樹はライトブレードの柄を必死で押さえ込む。
 しかしティセラはそれを軽々とはね除け、同時に芳樹をはじき飛ばした。
 慣性に吹き飛ばされていく芳樹の目の端に、愕然とした様子のアメリアと金烏玉兎集の表情が流れる。
 さらに、追撃の気配だけが迫る。

「くぉのっ!」
 光条兵器と高周波ブレードを交叉。
 芳樹に迫った刃の真正面から割り込み。
 葉月 ショウ(はづき・しょう)はビックディッパーの一撃を気合の呼気を込めて受け止めた。見た目には重さなど感じさせないくせに、光の屑を散らすその刃は、確かな脅威を持ってショウの腕を沈み込ませる。

 スッ。

 刃が引かれたかと思うと再び高速の斬撃。
 キラキラした光の尾は傍目には美しかったのが、ショウにまさかそれを愛でる余裕などない。

 ズルッ。ズルッと。

 ほとんど重さなど感じないにもかかわらず攻撃を受け止める度にショウの足が後退させられる。
「あら。ステップのひとつもお付き合いいただけないのでは、野暮というものですわよ」
 次の一撃。
 ショウは受け止めるのを止めて、スウェーでの回避を選んでいた。

 微笑みを浮かべかけたティセラは、しかしそのまま勢いよく体を反転。
 
「……背中に眼でもついているんですか?」

 口調は変わらないが、常ならぬ鋭い視線をその瞳に宿し、九条 風天(くじょう・ふうてん)は小さく呟いた。
「人間離れしたお話ですが、なかなか魅力的かもしれませんわね」
 微笑みながらティセラがビックディッパーを薙ぐ。
 たった今、二刀の構えから風天が投擲した高周波ブレードが、弧を描いてはじき飛ばされていくのが見えた。
「ご安心を。軽々と命を奪う所業など、とっくに『人間離れ』」
 カンバス・ウォーカーをあっさり両断したであろう光の刀身を、風天は禍々しい物を見るように一度にらみ据え、
「その腕、頂戴します」
 ビックディッパーを横薙ぎ、伸びきったままのティセラの腕に向かって花散里を振り抜いた。

 ずぶり。

 風天の手に、刃が肉に食い込む感触が伝わる。

「――あら、残念。ハズレですわね」

 ハッとして顔を上げる風天。
 その目に、白刃を肩に食い込ませた剣の花嫁の姿が飛び込んできた。
 その背後で、ティセラが薄い笑いを浮かべていた。

「傷害罪も追加だなっ」
 凛とした声を響かせ、現れたマイト・レストレイド(まいと・れすとれいど)びしりとティセラに指を突きつけてみせる。
「『天秤座』のティセラ。洗脳行為による窃盗及び強盗行為の教唆、学生に対する名誉毀損罪、並びに破壊行為……そしてカンバス・ウォーカーへの殺害の現行犯によりお前を……逮捕する」
 その瞳に情熱の炎をたぎらせ、マイトは取り押さえるための手をティセラの腕へ、襟へと伸ばす。

 ブアンっ!

「のあっ!」
 高速のビックディッパーから放たれたソニックブームがマイトの足を止めた。
 さらにそれを合図に。
 先ほどから護衛をするようにティセラの周りに集っていた五人の剣の花嫁達が、一斉にマイトを迎撃する姿勢をとった。
「よし……公務執行妨害も盛大に上乗せだ……ロウっ!」
「わうっ!」
 マイトの鋭い声ロウ・ブラックハウンド(ろう・ぶらっくはうんど)は気合いのこもった鳴き声で返答。
 即座に「情報攪乱」を発動させる。
「き、効いてないぞ、ロウっ!?」
 一向に勢いの衰えない剣の花嫁の動きに、マイトは焦りの混じった声を上げた。
「わうっ」
 なだめるようにそれに応えて、ロウは今度はメモリープロジェクターでマイトの姿を投影。今度は効果があったようで、何人かが映像に斬りかかり、剣の花嫁の動きに乱れが生じた。
「犬を嗤うというなら……その犬の意地を見せてやるさ……『法の番犬』の意地……ってやつを、な」
 その隙に一瞬で距離を詰め、マイトはティセラにつかみかかる。
「チークタイムには、まだ早いですわよ」
 半円を描いたビックディッパーにマイトの足は急停止。

「二人がかりも無粋ですわよね」
「ぬぅ……」

 背後からの奇襲にまさかの反撃。
 この一瞬のために機会を伺っていた近藤 勇(こんどう・いさみ)は、ビックディッパーを綾刀にてかろうじて受け止め、額に汗を浮かべて呻いた。
「元は付くが『幕府の番犬』の意地、見せてくれようと思ったが……」
 グッと一瞬だけビックディッパーを押し返して身体を引き、近藤は何とかティセラと距離をとる。
「すまぬ、マイト。カンバス・ウォーカーの魂に報いたいところだったのだが……まさかの実力。不覚だ」

「ほら、皇彼方っ! ボーっとしてない」
 十六夜 泡(いざよい・うたかた)の叱咤で、皇 彼方(はなぶさ・かなた)はハッと意識を引き締め、剣の花嫁からの一撃をはじき返した。
「動きが鈍いんじゃないの? ずいぶん余裕ね」
「迷惑はかけてないだろっ」
 彼方はばつの悪そうな表情を浮かべる。
「そんなにテティスさんが心配なのかしら?」
「……」
「まったく、意外と面倒な性格」
 泡の呆れたような声。
 そう言う間にも、手と足は休めず、泡はガントレットと雷術に包まれたその拳を、剣の花嫁に向かって振るう。
 一発二発。
 雷術の影響なのか。泡の拳を受けた剣の花嫁の動きが、少しずつではあるが鈍っていくようだった。
「女王像の破片探しならテティスさんの方が適役――十二星華ならもしかして破片から何か反応を得ることが出来るかもしれないから――納得してティセラの足止めに来たんじゃなかったの?」 
「……カンバス・ウォーカーが斬られるのを目の前で見た。あの光景が、どうにも頭から消えない。情けない話だけどな」
 彼方はどこか精細をかいた動きで、それでも剣を振るいながら黙り込んだ。
「とは言え、そうふわふわしてていいわけじゃないよね」
 ランスの援護と共に青葉 旭(あおば・あきら)が、会話に参加する。
「キミは今回、ずいぶん色々考えてる。クイーン・ヴァンガードのこと、テティスのこと、ティセラのこと、カンバス・ウォーカーのこと。何が起こってる? どうすればいい? そして、どうすればよかった?」
「……」 
「ま、必要なことだと思うよ。でも、今どうすればいいか分からないのなら、とりあえず動くべきじゃない? 幸い今目の前にはやるべきことが転がってるしね」
 剣の花嫁達の向こう。
 旭はティセラがいる方向を睨んだ。
「テティスと役割を決めたんでしょ? だったら専念しなよ。テティスのことを気にして剣の花嫁が押さえられないなんて、ティセラを足止めできないなんて、時間を浪費するなんて、は最低の行為だと思わない?」
 本意だけのまるで飾らない鋭い言葉に、しかし彼方は、剣を握る手にグッと力をこめた。
 その時。
「わーダメダメっ! 邪魔だよ、この剣の花嫁たちったら邪魔っ! どうにかしてよ、旭ちゃん。ティセラにぜーんぜん近づけないっ!」
 光学迷彩をといて山野 にゃん子(やまの・にゃんこ)が姿を現した。
「ああ、足ひっかけてあの鼻っ柱、ポキンっておってやろうと思ったのになぁ」
「しかたないか……じゃあやっぱりここの剣の花嫁たちを全員黙らせて……」
 悔しそうなにゃん子に、旭は思案顔の呟きを返す。
「待って」
 それを、泡が遮った。
「リィム」
「はあい」
 その声に応え、泡の胸ポケットから小さな魔女リィム フェスタス(りぃむ・ふぇすたす)がもぞもぞと顔を出した。
「聞こえてたわよね」
「はあい」
「にゃん子さんと一緒に、剣の花嫁を止めてくれる?」
 リィムはにっこりと頷いた。
「では……私、氷術とあとはアシッドミストで花嫁さん達の動きを鈍らせます」
「傷つけるのは、最小限よ?」
「わかってますよぅ」
 泡を見上げ、リィムはぷうと頬を膨らませて見せた。
「そうしたらにゃん子さんが、正気に戻して回る。これで、他の皆さんはティセラさんに近づけますよね」
 リィムの言葉に一同が頷き、
「ま、相手がティセラじゃないのは残念だけどね。一個貸しだよ、旭ちゃん」
 そう言って、にゃん子の姿が光学迷彩の中に消えた。
「その存在をかけて守ったカンバスウォーカーの意志を尊重するためにも、ティセラを止めるわっ!」
 泡は、勢いよくその両拳を打ち鳴らした。

「そこですっ! その大振りな剣なら懐は死角なはずっ! 踏み込んでくださいっ」
 ティセラへの距離を詰めた泡に向かってウィング・ヴォルフリート(うぃんぐ・う゛ぉるふりーと)の声が届いた。
 ダムッと、さらに一歩。
 泡が接触距離までティセラに詰め寄る。
 慌てる様子もなく、ティセラはビックディッパーをくるりと回転させると、柄部分にも展開している刃で柄打ちを放った。
 拳ごと、泡の姿がはじき飛ばされる。
「……クロスレンジまで、対応ですか」
 一瞬の驚愕の後、ウィングは悔しそうな呻き声をもらした。
「ウィングくんっ!」
 警告が滲む神封剣 『アーガステイン』(しんほうけん・あーがすていん)の声に振り返れば、周囲に、いつの間にか剣の花嫁たちの気配が生じていた。
「私が捌きますっ! キミは予定通りティセラへっ」
 ウイングは周囲にいた剣の花嫁達にその身を蝕む妄執を展開。
 即座に、剣の花嫁の光条兵器は矛先を変える。
「封印、されてくださいっ!」
 禁じられた言葉による神の封印。
 アーガステインは、ティセラに向かって禁じられた言葉を放ったが目に見えてティセラが変化を見せた様子はなかった。
「不発……ですか」
「キミの方はね」
 口許を歪めたウィングの言葉にアーガステインは今一度ティセラを見た。

「アムリアナ女王……こんなところまでノコノコと……。まったく、目障りこの上ありませんわね」

 幻影として、その憎悪の対象でも現れたのか。

 ティセラは周囲の人影に怒りの視線を向け、ぎりぎりとビックディッパーの柄をにぎりしめている。今なら目の前に立ちふさがるものならどんなものでも、切り捨てて見せそうな雰囲気があった。

「……どうにも、裏目ですね」
 ウイングは短くため息をついた。

「む……だから進言したのだがな。剣の花嫁は邪魔になるので手元に置かない事、と」
 ウィングのその身を蝕む妄執で同士討ちをはじめた剣の花嫁達の様子を眺め、シャノン・マレフィキウム(しゃのん・まれふぃきうむ)は僅かに眉間に皺を寄せた。
「でも、関係ないんじゃないですか」
 襲いかかってきた剣の花嫁を毒塗りの忍刀で昏倒させたマッシュ・ザ・ペトリファイアー(まっしゅ・ざぺとりふぁいあー)の言葉に、シャノンは特に表情も変えず頷いてみせる。
「まあな。ティセラには常勝の維持が必要だ。彼女のプライドさえ、守れたならそれでいい――」

 そのままシャノンはファイアストームを発動。
 紅蓮に燃える舌が剣の花嫁に、ティセラに刃を向ける者たちに襲いかかった。

「――邪魔になれば、ティセラの護衛とはいえただの障害だ。近隣住民ごとまとめて排除するまでだ」
「っひゃっひゃっひゃ……俺はその方がいいですねぇ」
 今にも舌なめずりをせんばかりの勢いで、マッシュは喉の奥でサディスティックな笑い声を上げた。
「あー我慢できませんっ! 俺、ティセラに群がってる連中、えぐってきますっ」
 身体が上げる渇望の声に耐えられなくなったのか、マッシュがぎらぎらとした目を前方に向けた。
「油断はするなよ。まだ、君を襲う剣の花嫁が残っているかもしれない」
 シャノンの声に、マッシュは先ほど自分が昏倒させた剣の花嫁をチラッと見やり、ニヤリと笑った。
「こうなれば関係ないですよ。とりあえず立ちふさがった奴全部、眠らせてやればいいんですからね」
 隠行の術で、マッシュは姿をかき消した。
「では、背中を押してやるとするか――盛大にな」
 シャノンは再びファイアストームを展開させた。