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学生たちの休日4

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学生たちの休日4
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    ★    ★    ★
 
「ふむ、石田散薬入りの風呂なら薬効があると思ったが、はたして、誰で試すべきか……」
 白く濁った五右衛門風呂を前にして、土方 歳三(ひじかた・としぞう)は悩んでいた。ぶつぶつと、怪しげな泡が風呂の底から立ち上ってくる。
 すぐ近くの寝風呂では、葛葉 明(くずのは・めい)が傷ついた身体を癒やしていた。その全身には、小さな拳の形の痣が無数についている。
「さすがに、小ババ百烈拳はきつかったわ。まだ全身が痛いよね」
 軽く上半身を起こすと、葛葉明は痛む手足をゆっくりとマッサージしていった。
「待つのデース!」
「きゃあ、やだー!!」
 葛葉明がゆっくりと温泉療養していると、アーサー・レイス(あーさー・れいす)に追われてリン・ダージがこちらにむかって走ってきた。
「今日こそ、カレー風呂に浸かってもらって、そのままカレーを好きになってもらいマース」
「嫌に決まってるでしょ。なんで、遅いペコたちを捜しに来たら、こいつに出会うのよお!」
 もう半べそでリン・ダージが逃げ回る。
「こら、そこ。お風呂で騒がない」
 入浴中に他人に迷惑をかけるのは、葛葉明としては重大なルール違反だ。
「ちゃんと、激甘、甘、中辛、辛口、激辛の五種類のカレー風呂を用意してありマース。口から摂取しないのでしたら、我輩、激甘も許容しマース」
「激甘でも、カレーはいやー!」
「もう、うるさい!」
 怒った葛葉明が、すっと足を通路にのばす。
 リン・ダージはさっとそれを飛び越えたが、アーサー・レイスはあっけなくそれに引っかかって転んだ。なんとかしようと身を捻ったために、もんどり打って寝風呂の葛葉明の上に倒れ込んできた。
「えーい、飛んでっちゃえ!」
 今がチャンスと、リン・ダージがランドリーでお湯ごとアーサー・レイスを吹っ飛ばした。運悪く、葛葉明までも一緒に吹っ飛ばされていく。
「うーん、誰にしたものか……」
「あ〜れ〜」
 まだ悩んでいる土方歳三の前の五右衛門風呂に、アーサー・レイスと葛葉明がドボンと落ちてきた。
「おお、ちょうどいいところに実験動物が……」
「うぎゃあ、しみるー!」
 小ババ百烈拳の傷跡に石田散薬がしみて、葛葉明が悲鳴をあげた。アーサー・レイスを踏み台にして、五右衛門風呂から脱出しようとする。
「そうはさせまセーン」
 逃がすかと、アーサー・レイスが葛葉明の足を引っぱってお湯の中に引きずり込んだ。死なば諸共らしい。
 バシャバシャと飛び散ったお湯が、土方歳三を頭からぐっしょり濡らす。
「お前らあ、このまま煮込んでくれるわ!」
 土方歳三は二人の頭をつかむと、お湯の中にぐいぐいとつけ込んだ。
 
    ★    ★    ★
 
「疲れた」
 優雅に薔薇風呂に浸かりながら、日堂 真宵(にちどう・まよい)はぐったりとしていた。
 つい先ほど、アーサー・レイスにカレー風呂に突っ込まれて、まだ全身がカレー臭い。せっかくのイルミンスール魔法学校の公式水着もちょっと黄色くなってしまっている。
「カレー色に染められて疲れた。格好つけて悪っぽく登場してもカレー、何か仕掛けてもカレー、カレー、カレー……!!」
 今まで、なぜかいつもカレーに始まり、カレーに終わってしまう。
「土方さんが、斜めながらも斜め上で少し頼れて助かるかもとか思ったけれど、結局、いつも薬漬けだし。どう考えても目指す道とは斜め後ろ方向に逆進行してくれるし……」
 ストッパーがストッパーにならなくてどうすると、日堂真宵はこみあげてくる怒りのぶつけどころを探した。
「疲れた」
 口を突いてでてくるのは溜め息ばかりである。
「ゴチメイについてっても、結局カレーカレーカレーに落ち着くし。変な覚えられ方してるし。もうまるで、わたくしカレーの添え物扱いじゃない。ラッキョウ? 福神漬け? チャツネ?」
 顔を半分お湯につけて、日堂真宵はぶくぶくと文句を水に溶かしてみた。ああ、薔薇の香りが気持ちいい。
「大ババ様は大ババ様で、最終的に全部丸投げして逃げるし。おかげで、わたくしが何か率先して暴れたみたいな印象だし。まるでイルミンで一番胸で悩んでるみたいじゃないの! 購買だって、壊したくって壊したんじゃないし……」
 うっかりとそのまま沈みかけて、日堂真宵は半身を起こした。
「疲れた……」
 口を開けば、出てくるのはその言葉だけである。
「わーん、日堂真宵〜!!」
 突然、泣きながらベリート・エロヒム・ザ・テスタメントがすっぽんぽんで駆けてきた。
「ど、どうしたの?」
 風呂で裸は普通だが、一応ここは水着着用OKの大浴場である。そういえば、お風呂お風呂とはしゃいでいたベリート・エロヒム・ザ・テスタメントがさっさと中に入ってしまったので、そのことを伝えなかったような気もするが……。
「日堂真宵、その水着をテスタメントにおよこしなさい!」
 そう叫ぶなり、ベリート・エロヒム・ザ・テスタメントは日堂真宵の肩のストラップを左右に広げて一気に水着を下に引きおろした。なにせ、引っかかるところが少ないので、すとーんと水着が脱げる。
「な、な、な、何を……!!」
 唖然とする日堂真宵をひっくり返して水着を奪うと、ベリート・エロヒム・ザ・テスタメントはいそいそとそれを着ていった。
「いたたたた、いきなり何をするのよ!」
 すっぽんぽんにされた日堂真宵が、ベリート・エロヒム・ザ・テスタメントを怒鳴りつける。
「そんなこと言っても……、うっ、胸がきつい……。それに、カレー臭い……」
 ちょっと苦しそうに、ベリート・エロヒム・ザ・テスタメントが言った。
「こ・ろ・す……」
 怒りにみちみちた日堂真宵は、ゆらりとベリート・エロヒム・ザ・テスタメントに近づいていった。
 
    ★    ★    ★
 
「これは愛だ。小ババ様の愛なのだ。この痛みに耐えてこそ、小ババ様の愛に応えられるというもの」
 アーサー・レイスの作った激辛カレー風呂に激痛をこらえて浸かりながら、トライブ・ロックスターは言った。
「いたたたた、痣にしみるんだよ。くそー、今度は、打倒小ババ様じゃん」
 甘口カレー風呂に浸かったメイコ・雷動が、ほっぺたに残った小さな拳の後をさすりながら決意を新たにする。
「なんだか、気持ち悪いよー」
 激甘カレー風呂につけられたノア・セイブレムが、なんとも言えない顔で叫んだ。
「しかたないだろ。風邪によく効くってアーサーが言ったんだから。だいたい、はめを外しすぎて、アルディミアクについてきて風呂で風邪をぶり返したノアが悪い」
 つきあいで辛口カレー風呂に浸かりながら、レン・オズワルドが言った。
「ぶー。アーちゃんどこ行ったのかなあ」
 ノア・セイブレムがふくれる。
 そのころ、出汁を取られたザンスカールの森の精 ざんすか(ざんすかーるのもりのせい・ざんすか)は、中辛カレー風呂にぷっかりと浮いていた。
 

担当マスターより

▼担当マスター

篠崎砂美

▼マスターコメント

 相変わらずカオスでした。
 今回は、結構書きがいのあるパートが多くて、以外と苦労してます。
 人数も多かったし、さすがに長くなりすぎるので、カットした部分などもありますが。
 残念だったのは、全体の転換期にかかってしまったので、処理したくてもしきれない部分が多々あったことですか。アクションも難しかったと思います。まあ、それはまた後日きっちりとということで。
 NPCも過去最大人数が出ていて、大変でした。まあ、名前だけとか出オチが多いですけれど。
 相変わらず、ちまちまと伏線張ったり、過去の伏線を消化したりしています。
 というか、変なところで、変な因縁が多数発生してますねえ。まあ、生かす生かさないは、皆様の指先一つと言うことで。

P.S.キャラ名ミス訂正。口調修正。一部加筆修正。