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決戦 天沼矛!

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決戦 天沼矛!

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03:第一次防衛ライン1 西


「こちら【チャーリー1】、予定の防衛地点に到着した、オーバー」
「了解、【チャーリー1】、そちらには随伴飛行歩兵が確認されている。警戒せよ」
「了解」
 【チャーリー小隊】小隊長天司 御空(あまつかさ・みそら)は黒のショートヘアと青い瞳を持ち、顔立ちが端正で優しそうな少年である。
 パートナーの白滝 奏音(しらたき・かのん)は白のロングウェーブに赤い瞳を持ち、髪が綺麗な美少女である。
 設楽 カノン(したら・かのん)に対して、「自分は白髪、赤眼、記憶の欠落と、とても日本へは帰れない副作用が出たのに、何で彼女は何事も無く幸せそうなのか」と言う根深い逆恨みをしている。
 そのカノンも西防衛に駆り出されていた。
(設楽カノン……亡き者にしてあげます)
 奏音は後ろ弾も辞さない覚悟で念じた。
「御空……敵機多数接近、臨戦態勢に移行して下さい」
「了解。こちら【ホークアイ】。あと1分で接敵する。随伴飛行歩兵に警戒せよ」
「こちら【コキュートス】了解」
 シフ・リンクスクロウ(しふ・りんくすくろう)が返答する。シフはロングの銀髪に青い瞳の髪が綺麗な美少女である。
 パートナーのミネシア・スィンセラフィ(みねしあ・すぃんせらふぃ)は金の長髪と赤い瞳を持つかわいい少女趣味の女の子だが夏祭りに行けなかった恨みを敵にぶつけようとしていた。
「こちら【アイビス】了解」
 星渡 智宏(ほしわたり・ともひろ)が返答する。智宏はショートの黒髪に青い目、知的な印象をあたえる青年だ。
「凛。随伴飛行歩兵がいたら連絡を」
「了解です。智宏さんは流れ弾に警戒をお願いします」
 時禰 凜(ときね・りん)は黒髪のポニーテールに黒い瞳、清潔ではかなげな少女だ。智宏は22歳のため天御柱には在籍せず、凛の方が在籍する格好を取っている一風変わったコンビである。
「こちら【ホワイト・ライトニング】了解」
 水城 綾(みずき・あや)が返答する。焦げ茶色のセミロングの髪に金色の瞳、幸運のお守りだからと言われて猫耳をつけたはかなげな美少女である。
「こんなに簡単に敵に進入されるとはね……管制は何をやってたんだ……まったく」
 そうぼやいたのはウォーレン・クルセイド(うぉーれん・くるせいど)。金髪のショートヘアに青色の瞳、美形で派手な守護天使の少年だ。
「鏖殺寺院のイコンを止められるのは、私達イコンのパイロットだけ……」
 綾はそうつぶやいてレーダーを見る。敵が一個小隊接近してきていた。
 そんな綾のイコンに取り付く影がある。牛皮消 アルコリア(いけま・あるこりあ)とそのパートナーナコト・オールドワン(なこと・おーるどわん)シーマ・スプレイグ(しーま・すぷれいぐ)ランゴバルト・レーム(らんごばると・れーむ)である。彼女たちは高レベルの戦士や術者のため、生身でのイコンの破壊ができると期待されていた。
 無論アルコリア自身はどこにも所属していないのだが、鉛筆を倒した結果【西】とでたため綾のイーグリットに取り付いているのである。
 一応ナコトの<空飛ぶ魔法>で全員空に浮いてはいるが、機動性ではイコンにかなわないためにイーグリットに張り付いている。綾の【ホワイト・ライトニング】は前衛機のため、彼女たちには随伴飛行歩兵の掃討も求められていた。
 ベルフラマントで姿と気配を隠し彼女たちはじっと待っていた。
「こちら【チャーリー1】エンゲージ」
 そしてついに接敵した。
 巨漢で強そうなドラゴニュートのランゴバルトが<情報撹乱>で敵イコンのレーダーを幻惑しているため、敵の統制は乱れていた。
 随伴飛行歩兵にナコトの<炎の聖霊>が飛んでその生命力の半分以上を奪う。
 さらに<ブリザード>で氷の嵐を呼び出し随伴飛行歩兵を一掃する。
「やはり紛い物の魔術師ですこと。この程度の術で落ちるだなんて」
 ヴァルキリー、機晶姫、魔術師ふくめてすべての随伴飛行歩兵を一人で打ち倒したナコトは、それが自らの魔力の高さ故の結果であることを忘れて、敵の弱さを嘲笑っていた。敵とて機晶ロケットランチャーや魔道銃を扱える以上一定の実力は持っているのだが、それに比べてもナコトのレベルは高すぎた。
「……無様ね。鏖殺寺院は何をやっているというの?」
 シュヴァルツ・フリーゲに張り付いて戦況を観察していたメニエス・レイン(めにえす・れいん)は味方が一方的にやられる様子を見て呆れ果てる。
 銀のショートウェーブの髪と赤い瞳を持つ、目つきが悪くてはかなげなメニエスは、銃弾とビームが飛び交う中、<地獄の天使>で羽を生やしてシュヴァルツ・フリーゲから離れると綾のイーグリットに接近した。
「ウォーレン、左舷に熱反応あり! 注意して」
「了解……ってこりゃメニエス・レインだ。やべえ、綾、全速前進!」
「わかった」
 綾はそう答えてアルコリア達に衝撃に注意するように無線で伝えてから急速に前進した。
 その衝撃でアルコリア達やメニエスは空中でバランスを失うが、そんな中でもメニエスは魔術の行使を忘れなかった。
「<天のいかづち>よ我が敵を貫け!」
 激しい稲妻が【ホワイト・ライトニング】を襲う。
「きゃああああああああああああ」
「うわああああああああああああ」
 稲妻が腕関節部に命中する。
「まずい、ビームサーベルの方の腕が使えなくなった」
 その一撃は腕関節部を破壊し【ホワイト・ライトニング】のビームサーベルの使用を不可能にする。
「クク……イコンも結構脆いのね……」
 空中で姿勢を制御しながらメニエスが笑う。
「好き勝手やってくれるわね、メニエス・レイン!」
 アルコリアが叫びながら近づいてくる。
「破っ!」
 そして<ドラゴンアーツ>で射程を伸ばした<抜刀術>でメニエスに斬りかかる。
「くっ……やってくれるわね」
 メニエスの顔が苦痛にゆがむ。
「まだまだ!」
 そのままアルコリアは疾風突きを繰り出す。
「痛いじゃないのよ!」
 とは言え圧倒的な攻撃力を誇るアルコリアの攻撃もメニエスの高い防御力の前には大幅にダメージを与えるというわけにも行かない。
 次いでシーマが<メモリプロジェクター>でアルコリアたちの映像を虚空に無数に映し出す。
「機動装備のボクの動き……捉えられるか?」
 <神速>で圧倒的な速度でメニエスの周りを飛翔し、撹乱する。
「くらえ!」
 そして忘却の槍でメニエスを貫く。
 が、それは肩にあたり多少のかすり傷を与えたに過ぎなかった。しかしメニエスのスキルは槍の効果によって封じられ、不利を悟ったメニエスは飛行して逃げてゆく。
 しかしシーマの速度には負けて逃げることがかなわない。だが、メニエスがシュメッターリングの1機に貼りつくとシーマは追いかけるのをやめ90度反転して退却する。
 ランゴバルトが<光術>を目眩ましに使って全員が一度姿を隠すと、中衛の智宏の【アイビス】に取り付いた。
 メニエスが張り付いたシュメッターリングがメニエスを守るように退却してゆく。
 【アイビス】がビームライフルを発射すると、それと同時に他のイーグリットからもビームが発射される。
 開放祭の演習で学んだ射撃技術が生かされて、シュメッターリングの頭部の一点にビームの線が命中する。
 圧倒的な破壊力の前にシュメッターリングの頭部が破壊され、それに誘爆し本体も爆発する。
 <メモリープロジェクタ>で映される映像が移動を開始する。それぞれの移動は前進しシュヴァルツ・フリーゲに向かっていた。
 シュヴァルツ・フリーゲが頭部バルカンを発射するがそれはすべて影像を透過して虚空の彼方に消えてゆく。
「行きましょう、ナコト」
 アルコリアが黒い長髪を風に揺らしながらパートナーに囁やく。
「イエス、マイロード・アルコリア様」
 ナコトがセミロングの黒髪を風に揺らしながら囁き返す。
「下さい、その鋼の魂を。私に食べさせて……ねぇ?」
 そしてアルコリアの<抜刀術>とナコトの<天のいかづち>がシュヴァルツ・フリーゲの頭部とマシンガンを破壊する。
 二人の力量を以てして初めて可能にする生身でのイコンへの対抗だった。
 そしてさらに<光術>が飛んで敵イコンのモニターを光で満たすと、モニタがその役割を果たし始めたときには映像も含めて完全に姿が消えていた。
 四人は御空のコームラントに取り付き、後方に下がっていた。
「あとはイコンに任せてもいいわね。実質的に5対2。しかも指揮官機は役立たず。取り巻きも頂きたいけど、巻き込まれるとさすがに危なそうだから」
 アルコリアの言葉にパートナーの三人は頷く。
 そして御空のコームラント【ホークアイ】からの支援射撃が飛ぶと、ロッテを組んでいたシュメッターリング2機は引き離され相互フォローのチャンスを失う。
 そしてそこにシフの【コキュートス】、智宏の【アイビス】、綾の【ホワイト・ライトニング】からのビームが飛び、その火線はコクピットブロックに集中し、カノンのビームマチェット(ナタ)がさらにコクピットブロックを攻撃するとシュメッターリングが爆発した。
(――ッ! 敵機急接近。左翼前方! 急いで!)
 奏音が<精神感応>で御空に指示する。
「っ、こっちか! ――って、うわあ!? ちょ、大丈夫ですかー!?」
 御空が撃ったのはカノンのイーグリットだった。
「何をするの!」
 カノンが叫ぶ。
 だが奏音は素知らぬ顔で
「レーダーの誤検知よ。ごめんなさい」
 と言ってのける。
「……覚えてなさい」
「いやよ」
 そうして二人の『カノン』は互いに敵意を飛ばし合いながら次の獲物に向かったのだった。
 今度は4機のイーグリットがシュメッターリングの上下左右にビームを放って釘付けにしたところで【ホークアイ】の大型ビームキャノンが直撃し、敵機を爆発させる。これでこの空域に残っている敵は武器と頭部をなくしたシュヴァルツ・フリーゲのみだった。
 シフが機体を操作してシュヴァルツ・フリーゲの後方に回ると、ミネシアがブースターの射出口を狙ってビームを打った。
「あっははははっ、綺麗な花火になってねー! 夏祭り行けなかったしさー!」
 無邪気な狂気がシュバルツ・フリーゲを爆散させる。
「御空、敵第二陣が5分後に接触。こちらが前進すれば約3分。どうしますか?」
「……少し休憩しよう。それに、わざわざ接近する必要もない。こちら【ホークアイ】。接敵まで5分ある。各自休憩せよ」
『了解!』
 こうして西の防衛組は敵の第二陣を待つことになったのであった。
 場面は南の防衛ラインに移る。