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決戦 天沼矛!

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09:第二次防衛ライン2 苦戦



 第二次防衛ラインは苦戦していた。
 敵の攻撃に回復が追いつかないのである。
 魔道銃の魔力を攻撃力として放出するシステムは凄まじく、魔法に対する抵抗力の低いものが次々と倒れていく。
 そんな中、第二次防衛ラインに頼もしい援軍が現れた。
 富永 佐那(とみなが・さな)北条 勇人(ほうじょう・ゆうと)操るイコン2機である。
 佐那は薄茶色のシャギーに茶色の瞳を持ち、美形で顔立ちが端正な元コスプレイヤーだ。現役を引退した今では彼女の写真はオークションで高値で取引されているとかいないとか。
 パートナーの今川 義元(いまがわ・よしもと)は黒髪を後ろで束ね同じ色の瞳を持つ、顔立ちが端正で育ちがよさそうな武将の英霊だ。
「桶狭間を思い出すような敵ながら鮮やかな奇襲だの。だがこの義元、過ちは繰り返しはせぬ。元祖海道一の弓取りの本領、見せてくれよう」
 そんな二人の乗るコームラントは不具合があって出撃に手間取っていたため、第一次防衛戦に今から出ても間に合わないだろうということで格納庫からイコン用の通路を通ってやってきたのだ。
「すみません、アレクセイさん。私一人が足を引っ張ってしまって」
 パイロットスーツの上から至急整備用のつなぎを着て点検する。
「いいってことよ。おまえさんの責任じゃないわい」
 佐那にアレクセイは優しくそう言う。そして不具合が直って第二次防衛ラインに駆けつけたのだ。
 一方の北条 勇人(ほうじょう・ゆうと)はイーグリット搭乗。
 戦場を勘違いしたらしく天沼矛内部をうろついていたのを、佐那からの通信を受けやってきたのだった。
 勇人は黒髪を後ろで束ね同じ色の瞳を持ち目つきがわるくて不良っぽい少年だ。
 パートナーの神崎 一瀬(かんざき・ひとせ)は乳白金のショートウェーブに青色の瞳、顔立ちが端正だがどこかかっこが悪いそんな少女だ。
 パラミタの窮状に心を痛めて強化手術を受けたという心優しい少女である。
「ユート、合流したよ。ここが戦場みたい。って……いっぱい人が死んでるよ、ユート」
「それが戦場だ。指揮官、指揮官はいないのか?」
「私だ」
 勇人の言葉に小次郎が名乗り出る。
「やっぱ戦争で頼りになんのは教導団か……俺達はどこに配置につけばいい?」
「イコン2機には機関銃陣地の隣で匍匐姿勢をとってもらいたい。正面装甲を減らしたほうが敵の弾も当たりにくいからな……」
「なるほど。では配置につきます」
 佐那が応えて配置につく。
「機関銃と頭部バルカン一斉射撃。射線上の味方は退避!」
 指令に答えて設置型機関銃と頭部バルカンが一斉に発射される。それは鏖殺寺院兵の死体の山を量産し、敵の戦線を一時後退させる。
「いまだぁ、攻撃!」
 リース・バーロット(りーす・ばーろっと)は敵の横合いから攻撃を仕掛ける。
 それで敵が混乱したところに、綾乃が<威圧>を効かせつつ、<紅の魔眼>で効力を上げた<冥府の瘴気><アボミネーション>で敵を震え上がらせつつゆっくり前進し、敵の戦意を奪う。
「退きなさい!」
 圧倒的な攻撃の次に来た恐怖の魔法は皮肉なことによく効いた。戦意を失い撤退していく敵たち。一部は窓から直接空に飛び出す機晶姫やヴァルキリーもいる。
 だが敵は洗脳を受けた本物のテロリスト。魔法効果が切れると逃げた敵が天沼矛に突入して自爆する。
「……なんて、こと」
 綾乃は呆然と呟く。
「くっ……」
 伏せっていた魔法使いが手だけ伸ばして魔道銃を発射する。
「危ない!」
 誰かが発した警告も間に合わず、綾乃は直撃を受ける。
「くっうううううう……いったいなあ。誰も傷つくことなく戦いを収めるなんて所詮無理だったの?」
 しかし彼女の問に答えるものはいない。彼女のパートナーの本初、こたつは魔道銃の攻撃を受けて気絶していた。
 天御柱の衛生兵の手を借りて最終防衛線に運ばれていく。
「圧倒的威力よのう。イコンに乗っておらなんだら、わたくし等も危ないところでしたな、佐那殿」
「……だれよ。誰よこんな兵器開発したの。味方がたくさんやられちゃった。敵もたくさん殺しちゃった……守りたいだけなのに」
「それが戦よ、佐那殿」
 二人の会話はそれで終わった。
 機関銃の銃座を守る生徒がやられて攻撃の手が緩んだのだ。
「今だ、砲撃!」
 敵にも指揮をするものがいるのだろう。その掛け声で機晶ロケットランチャーが集中的に飛んできた。
 それでさらに機関銃陣地は破壊される。
「小次郎!」
 小次郎が負傷した。そこにパートナーのアンジェラ・クリューガー(あんじぇら・くりゅーがー)がやってきて小次郎を介抱する。
「くっそう、よくも小次郎を! <クロスファイア>!」
 茶髪のロングヘアに黒の瞳、美声で胸が大きいアンジェラが<機晶ロケットランチャー>を用いて<クロスファイア>で敵全体を攻撃する。
 ヴァルキリーには効かない。機晶姫と魔法使いには小ダメージ、イコンパイロットには大ダメージを与えた。イコンパイロットは気絶して戦闘能力を失う。
「<命のうねり>よ!」
 焦茶色のたてがみ金色の瞳を持ち毛並みがよく精悍なドラゴニュートカルキノス・シュトロエンデ(かるきのす・しゅとろえんで)の<命のうねり>が味方全体に飛ぶ。
 カルキノス程の位階と魔力になれば重症のものとてすぐに全回復する。戦線は立て直される。
 だが、一部の敵兵の突破を許してしまった。
「穴を塞げ。これ以上の突破を許すな!」
 回復した小次郎が指示を飛ばす。
 陽太が<音波銃>を用いて連射するがヴァルキリーには効かない。したがって無傷のヴァルキリーが戦線突破を試みる。
 ロングの金髪に青い瞳で胸が大きい美少女ローザマリア・クライツァール(ろーざまりあ・くらいつぁーる)の<則天去私>が一時の目眩ましにはなるが、やはりヴァルキリーの敵兵士に有効打を与えることはできない。
 洗脳されたもの特有の無表情な、だが着実な歩みはローザマリアに恐怖を与える。
 金髪をシニヨンにし青い瞳を持つ胸が大きい美少女グロリアーナ・ライザ・ブーリン・テューダー(ぐろりあーならいざ・ぶーりんてゅーだー)がその身を蝕む妄執で幻覚を見せるが一度の詠唱で一人が相手では手数が足りない。すぐに戦線を突破される。
「うゅ……ライザに<アリスキッス>なのー」
 金髪のツインテール緑の瞳で童顔で胸が大きいエリシュカ・ルツィア・ニーナ・ハシェコヴァ(えりしゅかるつぃあ・にーなはしぇこう゛ぁ)がグロリアーナに<アリスキッス>をかけてSPを回復させる。
 青のロングウェーブに同じ色の瞳、顔立ちが端正な美少女のネージュ・グラソン・クリスタリア(ねーじゅぐらそん・くりすたりあ)は<恐れの歌>で敵の攻撃を止めようと試みるが彼女の階位では敵の精神的な抵抗力を上回ることはできなかった。ただ歌声がむなしく響くのみである。
 レイラも必死に抵抗するが、彼女では魔法使いにすら傷をつけることができない。そのため、グロリアの仕掛けたブービートラップに誘導し、敵の目の前で手榴弾を爆発させる。
 さすがのヴァルキリーもこれには大ダメージを受けるがそう何度も同じ手に引っかかるほど無能なわけがない。3人ほどのヴァルキリーに重傷負わせたのみで、あとは戦線を突破していくのに任せた。
 それでもと機晶姫に<轟雷閃>で電気系統を故障せさて動きを止めるが、そう何度も放つわけにはいかない。
「くっ! いっけえええええええええええええええ……」
 ショートカットの銀髪の、黒い瞳を持つはかなげで弱そうな少年榛原 勇(はいばら・ゆう)は<サイコキネシス>で敵の持つ武器を奪おうとしていた。
 以前にも敵の撃ってきた銃の弾道を逸らしたことがある。それに比べれば難しいことではない。
 戦線を突破していない敵の武器が宙に浮いて機関銃陣地に集まり落下する。それを取り戻そうと走る敵に向かって味方からの攻撃が飛び、ダメージを与える。
「美奈がかっこよく戦ったら、お兄ちゃんは絶対「すごいね」って言ってくれてずーっと美奈のそばにいてくれるの♪ だから美奈は戦うの!
 あたしの<スプレーショット>でみーんな蜂の巣にしてあげる! 飛んでこようが突撃してこようが関係ないわ! 打って打って打ちまくるだけ!
 だってすごい戦いをみせたらお兄ちゃん褒めてくれるもん♪ どんなに厳しい状況でも美奈はゆーかんに戦うの! すごいでしょ? そうよね、そうよね、そうでしょ?」
 一気にまくし立てるように叫びながら<スプレーショット>を連射するのは勇の妹で乳白金のセミロングに黒い瞳、髪が綺麗でかわいい榛原 美奈(はいばら・みな)である。
 だが彼女の力量では敵を貫くことができず、逆に敵の攻撃で重症を追ってしまう。
「美奈!」
「ミナ!」
 勇と常にねずみの姿の獣人フエン・ワトア(ふえん・わとあ)が駆け寄る。
 勇がすぐに<ヒール>で回復させるが美奈は恐怖で動くことができず二人で美奈を安全な場所まで運ぶ。
「人の所のエレベーターにテロかまそうたぁ良い度胸だ! 限定空間での戦闘はこいつの本領……ぶっ倒してやる!」
 パワードスーツをまとった月谷 要(つきたに・かなめ)は<光術>をスタングレネード替わりに使って敵の動きを止めるとそのままパワードスーツでなぎ払い敵の行動を阻止する。
 まだ要の力量では敵に傷をつけることができない。だがそれでもパワードスーツの機動力と腕力を持って敵の行動を妨げることには成功した。
 乳白金のロングウェーブに赤い瞳、胸が大きい美少女霧島 悠美香(きりしま・ゆみか)はサイコキネシスと奈落の鉄鎖で敵の行動を阻むが、それ以上行動が続かない。やがてSPが切れて何もできなくなるまで、彼女は足止めを続けた。だが、そのおかげで貴重な時間を稼ぐことができたのである。
 焦茶色の髪を後ろでまとめた茶色の瞳の地味でごく普通な少年杵島 一哉(きしま・かずや)や一哉の育ての親とでも言うべき美少女魔道書空白の書 『リアン』(くうはくのしょ・りあん)は<氷術>をつかって敵の足場を封じることに専念していた。そのおかげで敵の行動は阻害され、貴重な時間を稼げたのである。
 そんな中にも機晶ロケットランチャーや魔道銃による攻撃が飛ぶ。
 そう言う攻撃があるとロングの銀髪に青い瞳、知的で顔立ちが端正なアリヤ・ユースト(ありや・ゆーすと)の<ヒール>が飛んで傷付いた味方を回復した。
そうして第二次防衛線は苦戦し一部突破されながらも大多数の敵の侵入を阻みなお健在であった。