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リアクション
11:第二次防衛ライン3 撤退
苦戦を強いられている第二次防衛ラインの部隊に騎兵隊がやってきた。
まず、葉月 ショウ(はづき・しょう)。重力に逆らうツンツンの銀髪と赤い瞳を持ち、目つきが悪いがカッコいい青年だ。
彼は第二次防衛ラインと最終防衛ラインの間で遊撃部隊としてブラックコートで気配を殺し隠形の術を使い姿を消して待機し、敵が通り過ぎたら背後から奇襲と言うことをやっていたのだが、二次防衛ラインが撤退を始めると聞いて駆けつけてきたのだ。
「手は足りてるか?」
指揮を取っている小次郎に尋ねる。
「たりない。まず重傷者にヒールなり何なりで回復させてくれるやつが欲しい」
「わかった。回復に回ろう」
そう言ってショウは怪我人の手当に回る。
「うう……おかあさん、おかあさん」
うわ言のように繰り返す重傷者に、ヒールをかける。
2回、3回。
そうするうちに意識をはっきりと取り戻し、天御柱の生徒らしき少年は気絶者を運ぶ作業に参加した。
そして、クリュティ・ハードロック(くりゅてぃ・はーどろっく)、クァイトス・サンダーボルト(くぁいとす・さんだーぼると)、閃崎 魅音(せんざき・みおん)の三人である。
彼らは閃崎 静麻のパートナーである。静麻自身は最終防衛ラインに参謀として残っているが、三人のパートナーを救援として最前線に派遣したのである。
クァイトスは相手が密集している地点に<六連ミサイルポッド>を放つ。リーゼントの黒髪、緑色の瞳、厳しそうで強そうな男性型機晶姫である。
クァイトスが放ったミサイルはダメージを与えるには至らなかったが密集地帯での爆発は敵の動揺を誘い隙を大きくする。
「今だ! 制圧射撃!」
2機のイコンと機関銃陣地からの機関銃の射撃、敵から鹵獲した機晶ロケットランチャーと魔道銃の射撃で魔法使いと機晶姫を足止めする。
小型飛空挺ヴォルケーノと合体しているクァイトスは、気絶者を一人受け入れると後方へと飛び去っていった。
クリュティはロングの銀髪と緑色の瞳、知的な美形の機晶姫である。
<庇護者>で防御力をあげた彼女はその装甲の厚さを活かして盾として展開すると、離れた場所にいる負傷者にヒールを飛ばす。
敵の攻撃は<女王のカイトシールド>で防ぎ、第二次防衛ラインの撤退を支援する。
「戦部 小次郎、早急に撤退すべきですな」
「分かっている。重傷者の回復を急げ! 気絶したものの運搬が最優先だ! そこ、防御が薄い。塞げ!」
矢継ぎ早に出される小次郎の指示によって撤退の処理は速やかに進んでいく。
魅音は<ヒール>、<リカバリ>、<ナーシング>で味方に適切な処置を施して回復させると、後方へと走らせた。
魅音への攻撃はすべてクリュティが盾となって防いでくれているので、彼女は恐れず、怯まず最前線で回復役を引受けることができた。
「みんな、頑張ってね。急いで逃げて。大丈夫だよ、ボクたちが守るから」
彼女のその言葉に励まされたものがどれだけ板だろうか。
動けるようになったものは戦闘に参加せず素直に後退する。自らの防御力では又同じ目に会うのが落ちだと分かっているからだ。
次に湊川 亮一(みなとがわ・りょういち)とそのパートナーたちである。黒のショートヘアに同じ色の瞳、知的で精悍な印象の教導団の戦士である亮一はパートナーのアルバート・ハウゼン(あるばーと・はうぜん)とソフィア・グロリア(そふぃあ・ぐろりあ)に盾を持たせて前衛に立たせ、自分は中衛として機関銃を発射する。
アルバートはリーゼントの銀髪に青い瞳、首が太く真面目そうなシャンバラ人の少年である。たいしてソフィアは青のロングヘアに緑色の瞳、大人びていて髪が綺麗な少女型の機晶姫である。
<ディフェンスシフト>で防御力を強化したアルバートは盾を掲げて敵の攻撃を防ぎながら接敵すると<バスタードソード>で敵の銃器を弾き飛ばす。
「本陣に強襲とはなかなかやりますが、好き勝手させる訳にはいきません」
アルバートは叫ぶと剣を縦横に振るい続けた。
「そうね。こんなところにまで侵入されるのもも問題よね。でも、突破されるわけにもいかないしなんとかしましょう」
ソフィアも盾で敵の攻撃を防ぎながアルバートと同様の戦法で戦い続ける。
そして茶色のロングウェーブの髪に青い瞳、優しそうでかわいい少女高嶋 梓(たかしま・あずさ)が<ヒール>と特技<撤退>で撤退戦を支援していく。
「戦線を縮小させてくださいませ! 守るべき範囲を狭めてくださいな!」
梓の言葉に従って戦線が後退・縮小されていく。イコンも戦場を放棄し、機関銃陣地も破棄される。
次第に後退し戦線は第三バリケードに移る。
機晶姫から機晶ロケットランチャーが発射される。
エヴァルト・マルトリッツ(えう゛ぁると・まるとりっつ)はそれを<後の先>と<ドラゴンアーツ>を使ってつかんで投げ返そうとする。
しかし弾丸を受けとめきれず命中して大怪我を追ってしまう。
「大丈夫ですか、お兄ちゃん!?」
ボサボサの銀髪に赤い瞳、目つきがわるくて大人びているエヴァルトのパートナーの黒の前髪ぱっつんロングで青い瞳、はかなげで地味なミュリエル・クロンティリス(みゅりえる・くろんてぃりす)が慌てて駆け寄り、<ヒール>をかける。
「くっ……すまない」
「嫌だよお兄ちゃん。お兄ちゃんが傷つくだなんて。無理はしないで」
「エヴァルト、無茶をする……」
知的で声がいいドラゴニュートのデーゲンハルト・スペイデル(でーげんはると・すぺいでる)がパートナーを心配しながらも密集する敵兵に向かって<ファイアストーム>を放つ。
だが彼の魔力ではなかなか敵にダメージを与えることができなかった。
仕方が無いので<アシッドミスト>で敵の武器を腐食させる。
アレクセイがリベットガンで敵の衣服の布地の部分を床や壁に打ち付けて身動きを取れないようにすると、ガタイが良い整備士たちを呼び集める。
「おめぇらやっちまえ! 整備士舐めてるこのガキを再教育してやれ!」
手に工具類を持ってフルボッコ! である。
「修理する箇所を増やすんじゃねぇ! この糞寺院共が!」
仕事のストレスが敵に向けられる。げに恐ろしきは気障の荒き整備士たちかな。
「ユート、佐那、敵が一部格納庫にやってきてるよ! 追い払わないと」
一瀬の言葉通り数人の敵が二人のイコンが入ろうとしている寸前のイコン格納庫に向かってきた。
「まずいですな佐那殿。取り敢えず方向転換と参りましょう」
義元がそう言ってイコンの向きを変える。
2機のイコンは腰を低く構えて床に照準を合わせると、やってくる敵兵に向けて頭部バルカンを放つ。
ミンチの出来上がりだ。だが生き残った敵が重症ながらもふらふらと佐那のコームラントの足元にやってくると奥歯を噛む。カチという擬音がふさわしいだろうか?
体に取り付けられたプラスチック爆弾が兵士の体を裂き佐那のコームラントの足の装甲にヒビを入れる。
「きゃああああああ!」
衝撃に佐那は悲鳴をあげる。
「自爆テロか……連中も手段を選ばねえな。あんた、取り敢えず足の装甲を修理してきな。っていっても、整備し連中はなぜか第二次防衛線に出払っちまってるけどよ」
「あ……はい。アレクセイさん大丈夫かな?」
「あのおやっさんなら大丈夫だろ。もともと一流の戦士だしな」
「そうですね。では格納庫に戻ります」
佐那は勇人との会話を切り上げると格納庫に入った。
まだ残っていた整備員がコームラントにとりついて修理を始める。佐那はイコンの電源を落とすとコクピットをあけて外に出た。
「私の迂闊でイコンに傷をつけてしまいました。ごめんなさい」
謝る佐那に整備員達は
「なに、それを修理することで俺たちの腕も上がるんだ、気にすんな」
と言って笑った。
佐那は救われた気がした。
「ほんに、気風の良い男どもよ」
義元もそう言って彼らを称える。
そんな中に蒼空学園生の朝野 未沙(あさの・みさ)が手伝いとして整備に参加していた。
いずれイコンが他の学園にも配備されることは決定済み、そして蒼空学園は最も天御柱学園と親密で最優先で配備される可能性が高いこと、未沙の身分がはっきりとしていて技術や空母襲撃の際も整備の手伝いをしたなどの実績もあって特別に許されていた。
「整備班長、これは〜?」
「ああ、そこに置いてくれ。ありがとうな、嬢ちゃん」
「いえいえ。好きでやっていることですから」
未沙はセミロングの赤い髪に青い目で、かわいくて美少女であり、整備班員の人気は高かった。
佐那のイコンの足元に取り付き、整備員にあれこれ教わりながらイコン整備の知識を吸収していく。
「どうやらアサノファクトリーには人を雇う必要が出てきそうね〜」
整備に必要な人数の多さを鑑みての感想である。
「儲かるといいな」
「はい!」
未沙は佐那に色目を使いながらもイコン整備の手を休めることはなかった。
転換―戦場―
「よし、ここはルカルカに任せて小次郎は引いて」
「了解。全員後退。ルカルカに殿をまかせるぞ」
ルカルカは<オートガード>をかけるとパートナーたちと共に殿を引受ける。
「易々と前進を許すと思うなよ。俺たち教導団は戦争のプロだ」
ダリルがそう叫びながらブライトマシンガンを腰だめでバリバリと発射する。
ダリルの高い攻撃力の前には流石の機晶姫や魔法使い達もダメージを受けざるを得ない。
「守護竜の力を見よ」
カルキノスは魔道銃を二丁持って七面鳥撃ちする。
カルキノスの圧倒的な魔力を前提として放たれる魔道銃の威力に敵は大きなダメージを受ける。
「眠れ、愚かなものどもよ!」
淵はヒノプシスで敵を眠らせる。
だが、眠らなかったものが眠ったものを起こしているので時間稼ぎにしかならない。
それでも、他のメンバーたちが撤退するには十分だった。
そしてルカルカたちが撤退すると敵はバリケードを破壊して乗り越えブービートラップに引っかかる。
プラスチック爆弾の爆発だ。
これで敵の何割かが削がれた。
格納庫。そこに気配と姿を隠して潜むフォン・アーカム(ふぉん・あーかむ)の姿があった。
「整備マニュアルを盗むなら今か……」
アーカムは機会を見て動き出す。
だが
「ユート、サーモセンサーに人を感知したよ」
一瀬が叫ぶと勇人はカメラセンサーをそちらに向けた。
マニュアルを盗みだそうとしているアーカムの姿がそこにはあった。
「義元、賊だ!」
元武家の義元に火急を知らせる。
「ぬ! まてい!」
義元はランスを構えてアーカムに突撃する。
が、技量はアーカムの方が上だった。槍を凪いで義元の体を引き寄せると<柔道>で転ばせる。
「見つかっちまったか。三十六計逃げるに如かず、だな」
そう言い捨てるとアーカムは目的を果たせないまま逃げ出した。
勇人のイーグリットが追いかけようとするが姿を隠してサーモグラフィーの範囲に逃れられてしまう。
「ちっ!」
その後の追手はとくになかった。みな戦闘に忙しいようだ。
―天沼矛内 某所―
トライブ・ロックスター(とらいぶ・ろっくすたー)が通路を歩いていた教官らしき男をふんじばって捕まえ、物陰へと引きずり込む。
仮面をかぶっているのですがおは判らないが、その教官には鏖殺寺院のものだと感じられた。
「バロウズ・セインゲールマン(ばろうず・せいんげーるまん)、よーく見張ってろよ」
「はい」
銀髪を後ろで束ね金色の瞳を持ち、顔立ちが端正ではかなげな少年だ。だが、その正体は鏖殺寺院性の人造人間で夢なき殺人人形である。
バロウズはトライブの命令に従い、周囲を見張っている。その間にトライブは『聞き込み』を行っていた。
「設楽カノンを強化人間した経緯を教えろ。あと、何故、記憶を失っているのかもだ。それから、極東新大陸研究所についても教えてもらおうか?」
適切な暴力を奮って教官を傷めつける。すると彼は素直に教えてくれた。
「強化人間にした経緯は、適性があると判断されたことと、本人も事故で長期間意識不明状態であり、強化することで目覚める可能性があるということで両親の合意が得られていたからだ。記憶を失ったのは強化の影響だ。
それと極東新大陸研究所は何を聞こうとしているかよくわからないが、答えられるのはロシアがパラミタ開発に乗り出すための機関だということぐらいだ」
「そうかい、ありがとよ」
トライブはそう言うと首筋に手刀を叩き込んで教官を気絶させた。
「バロウズ、逃げるぞ」
「でも、殺さなくていいのですか?」
「敵の中に思ったよりレベルの高いのがいる。お前程度じゃ返り討ちに合うのが落ちだ」
「……了解」
そして二人は天沼矛から脱出した。その頃にはすべてのバリケードが突破されて敵も戦力の一割を失っていた。
場面は最終防衛線に移る。
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