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黒毛猪の極上カレー

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黒毛猪の極上カレー

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第五章 実食! そして――

 黒毛猪を使った料理が続々と完成し始めた今、川原は――大宴会と化していた。
「黒毛猪という命に感謝するとともに、みんなよくやってくれた! 乾杯だっ!」
「「「おぉおおおおお!」」」
 ジークフリートが乾杯の音頭を取ると共に【魔王軍】のメンバーは持ち込んだ日本酒などで大盛り上がりを繰り広げる。
 そこに、魯粛がボス猪の肉を使って作った豚料理なんかが加われば、最高の酒のツマミとなって盛り上がりは一層増して行く。
「美味い!! この黒毛猪のトンポーロー、最高!!」
「香澄ぃ! 今日はぐでんぐでんになるまで、飲むぞぉおお! 潰れるなよ!?」
「いいけど、朱点の方こそ潰れるのはなしよ?」
「実に楽しいですね! やはり、魔王軍に入ってよかった!」
 まだまだ宴は続く――

「さ、綴ちゃん。みんなのカレーが完成したみたいだよ?」
 大和田が言うように、川原に用意されたテーブルの上には様々なカレーが並んでいた。
「う〜ん、どれも美味しそう……最初にどれから行けばいいのか、悩むわね。カツカレーも良いし、ヘルーシーカレーも捨てがたいし……う〜ん――」
 みんなの調理を見ていたせいもあって、綴は余計に悩む。
 だが、十分ほど悩んだところで――
「とりあえず、これから行かせてもらうわ!」
 綴は、一番手近にあったカレーから食べてみることにしたのだった。
「はむっ……」
 その記念すべき一口目は――
「ん? これは……ほうれん草――サグカレーね。サッパリしてて、良い感じだわ! うん、美味しい!」
 一気にテンションが最高潮になる綴。
 と、そこへ――
「フフフ。一口で具材を当てるなんて……なかなかの通ね!」
「えっと、美味しいですか? ありがとうございます」
 何故か自慢げな小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)と、パートナー兼カレーの調理人であるベアトリーチェ・アイブリンガー(べあとりーちぇ・あいぶりんがー)がやって来た。
「スパイスは、大和田が用意したスパイス?」
「はい、そのとおりです」
「黒毛猪の肉はしっかりとスパイスで味付けされてるけど、脂身が落としてあるのね?」
「はい。サッパリした味に合わせてみました。スゴイ……良くわかりますね?」
「ふふんっ、どれだけカレーを食べてきたと思ってるの?」
 カレーについて絶対的自信を持つ綴。
 そんな彼女に興味を示したのか、美羽が目を輝かせた。
「なんか、綴ちゃんって面白そうだね。ねぇ、一緒にカレー食べて良い? 私も、カレー大好きなの!」
 天真爛漫な笑顔を見せる美羽。
 すると綴は――
「べ、別にいいわよ!」
 普段、あまり現れないカレー仲間の登場に何故か照れるのだった。

 その後も、カレーの実食はどんどん進んだ。
 本郷涼介とクレア・ワイズマンが作ったカレーとポテトサラダは――
「ん? カレーとポテトサラダ……美味しい!! 猪肉はしっかり臭みが消してあるし、味付けは基本的な欧風カレーだけど……なにかしら? 隠し味に醤油と味噌?」
「綴ちゃん! ポテトサラダもホクホクしてて凄く美味しいよ!」
 奇をてらわず、しっかりとした味が好評を博した。
 そして、ローザマリア・クライツァールたちの作ったカレーは――
「えーっと、これは『カリー大和田海軍風、改めBB−69カレー改』? 変な名前……でも、味は最高ね! 私好みの味出し、ココアを使ってまろやかさを出してるのが好き!」
「ご飯も最高! いいお米だっ!」
 菊による味のリサーチと「是なるは、わたくしの夫、景勝様の領国より取り寄せし越後米に御座います」というのが功を成したようだ。
 次の、エース・ラグランツ達が作った茸カレーはというと――
「綴ちゃん。この茸カレー最高だよ! 秋! って感じが――どうしたの、顔赤いよ?」
「ななななな、なんでもないわよ! うん、美味しい! 美味しいわ!」
 美味しいかったらしいのだが、何故か綴は終始照れていた。
 ――と、ココで綴は少し休憩に入ることにした。
「ふぅ、ちょっと休憩! 舌がカレーに慣れてきたわ」
 綴はカレーに慣れた下を、真名美・西園寺が作ったヨーグルトデザートで癒す。
「う〜ん、最高ねっ♪」
 辛さ成分を乳酸菌が包み込んでいく感覚を楽しむ綴。
 そこへ――
「あなたが、来栖綴ね?」
「少し、お時間よろしいデスカー? ついて来てクダサーイ!」
 いきなり現れた日堂 真宵(にちどう・まよい)とパートナーのアーサー・レイス(あーさー・れいす)は、これまたいきなり綴を強引に川原へ連れ出した。
「ちょ、ちょっと! 何よコレ!?」
「ハッハッハー!! よくぞ聞いてくれマシター!」
 綴が川原で目にした物は――どう見てもお湯で満たさせれたドラム缶。しかも、カレースパイスやハーブ等が大量に浮いている。
「これは、カレー好きの為に我輩が編み出したカレー風呂デース。内外からカレーを摂取してこそ、カレーの真の旨味も判ると言うものデース! ささ、黒毛猪カレーを美味しくいただく為にもお入り下サーイ」
 ニコッと笑みを浮かべるアーサー。
 すると、綴は意外な事に――
「カレー風呂……イイじゃない! 舌だけじゃなくて、身体で味わってあげるわ!」
 カレー風呂に浸かることを宣言した。
 この瞬間――アーサーは内心でニヤリと口を歪めた。
『フフフフッ、引っかかりましたネ? 実はコレは健康のためでも何でもアリマセーン。これは、上質なカレーを食べ続けた霊魂に、極上のカレースパイスとなってもらうための装置デース。魂の出汁、これ以上の隠し味は無いはずデース!』
 不気味な笑みを浮かべるアーサー。
 だがこの時――彼は、結局霊魂である綴からは何の出汁もでなかったということを、まだ知らない。