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リアクション
「さぁさぁ! 次のカレー、じゃんじゃん来なさい!」
カレー風呂に浸かりつつ、次の料理を待つ綴。
するとそこへ――
「あの、綴さん」
「ん? 何よ?」
大洞剛太郎と大洞藤右衛門の二人がやって来た。
「綴さん、もしよろしければ……そのカレー風呂というモノを、味見させてもらってよろしいでしょうか? 実は我々、カレーの食べ比べ中なのであります!」
「一応、それもカレーと名のついてるものじゃからのぉ」
正直、ただの味のついたお湯だとしか思えない綴だが――まぁ、好きにすればいいと思い、飲ませてみた。
すると――
「む……薄いカレー味のお湯、といった感じでありますな」
「たしかに、そうじゃのぉ」
やはり、感想は同じだったようだ。
と、ここで――
「な、何だったら……わ、わたくしも食べてさし上げても宜しいのよ?」
何故か日堂真宵までやって来た。
「ほら、早くなさいよ。お腹すいたわよ。いえ、お腹空いたから食べたいだなんてはしたない事は無いわよ。せ、折角だからちゃんと出来てるか味を見てさし上げるって言ってるだけよ! べ、べべべ、別に料理ができない訳じゃ無いんだから!」
言い訳がましく墓穴を掘っていく真宵。
綴は、これ以上墓穴を掘らせるのも可愛そうなので、カレー風呂を飲ませてみた。
「ホラッ、別に薄いカレー味のお湯よ?」
すると――
「……たしかに、そうですわね」
やはり同じ意見となった。
だが、更に――
「あれ!? 来栖ちゃんがお風呂に入ってるって聞いたから走ってきたのに……ぬ、脱いでないじゃん!?」
息を切らしながら現れたのは、手作りカツカレーを持った弥涼総司だった。
「こんな大勢の前で、脱ぐわけないでしょ! 幽霊だから、服を脱ぐ必要はないのよっ!」
「そ、そんな……」
ガクリとうな垂れる覗き部部長。
「でも、カレーはなかなか美味しいわよ。具はオーソドックスだけど、カツと合わせるためにブイヨンをにも黒毛猪の肉を使ってるのは、良い選択だと思うわっ」
「な、なんか……リアクション薄いね?」
「カレーに対しては真面目なのっ!」
そして、ここで更に――
「やっほー、特性来栖ちゃんカレーができたよーっと!」
ルカルカ・ルー達までやってきた。
気づけば――いつの間にか、カレー風呂に入る綴を中心に、カレーサークルができていた。
「あぁ、なんか……こんなに楽しくカレーが食べれたのって、久しぶりかも♪」
満面の笑みでカレーを堪能する綴。
その笑顔は、周りの生徒達も一緒だった。
「ふぅ……最っ高の一日だったわ!」
全てのカレーを食べ終え、綴は満足していた。
そして、周りの生徒達も同様に笑顔だ。
だが、それと同時に――
「綴ちゃん、今日は本当に楽しかったよ♪」
「今日一日で、カレーが大好きになれました」
「また、こういう機会があればいいなぁ……」
生徒達、そして綴も、別れのときが近づいているのを感じていた。
そこへ――
「来栖ちゃん! 手作りカレーできました♪」
オルフェリア・クインレイナーが綴の目の前までやってきて、満面の笑みで白い器を差し出した。
だが……その中身はどう見ても――
『な、何なのコレ!? ほ……本当にカレーなの!?』
綴と周りにいた生徒達の目を疑うものだった。どう見ても……外宇宙の食べ物だ。
しかし――
「オルフェはあまりお料理が得意じゃないですが……今日、初めて誰かのために一生懸命お料理をしてみて、楽しかったです!」
満面の笑みと、絆創膏だらけの手……コレを見たら、さすがに食べないわけにはいかない。
そう思って綴は――
「い……いただきます!」
思い切って、オルフェリアのカレーを食べてみた。
すると――
「え? あ……え? あれ? お、美味しい……何これ!? 凄く美味しい!!」
衝撃的な美味しさだった。
「え? 何これ? ちょっと、みんなも食べてみて!!」
綴は、カレーのあまりの美味しさに、周りにいた生徒達へとすすめていく。
すると、生徒達も――
「あれ? 美味しい!」
「何これ!? こんな美味しいカレー、生まれて初めて!!」
「か、カレーの歴史を覆す味ですわ!」
大好評どころの騒ぎではなかった。
そして、この瞬間――
「うん……もう私、満足。これで、これで成仏できる」
綴は、持っていたスプーンを静かに置く。
「ちょ、ちょっと……綴ちゃん? か、身体が……」
徐々に――徐々に綴の身体は薄くなっていく。
「ちょっと待ってよ綴ちゃん!」
慌てて、綴の腕を掴もうとした小鳥遊美羽。
だが――その手は虚しくも綴の身体を通り抜け、空を掠める。
「こ、このカレー、確かにすごく美味しいけど……パラミタにはまだまだ美味しいカレーがあるはずだよ?きっと! 成仏するにはまだ早いよっ!」
必死に成仏する綴を説得する美羽。
しかし、綴の身体はだんだん見えなくなっていき――
「みんな。今日一日、本当に楽しくて……最高に美味しかった! ありがとうっ!」
とうとう、完全に消えてしまった。
別れを惜しむ間もなく、カレー好きだった少女は成仏していった。
生徒も、そして大和田も泣いていた。
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